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35.新たな

ジークが帰国しお互いに考える時間を持つ事になり、真剣に考えようとした矢先に新たな火種が…

“♪♪~♪”


「うぅ…ん」

スマホのアラームで目が覚めた。いつも通り6時半だ。

起き上がりカーテンと窓を開け部屋の空気を入れ替える。リビングに行き電気ケトルでお湯を沸かし、洗面所へ行き洗濯機をセットし顔を洗う。

朝の日課を何も考えずこなす。玄関を出てポストから新聞を取り、湧いたお湯でインスタントコーヒーを入れ新聞を読む。

今日は週末金曜日。一通り新聞に目を通した後は新聞に折り込まれたチラシをチェック。スーパー関係のチラシを見ながら明日の買い出し先を考える。

時計を見ると7時過ぎスマホで音楽を流しながら朝食の用意をし食卓に並べる。

私は朝はしっかり食べる派で8枚切り食パン2枚とカットサラダにハム、レンチンした温泉卵とヨーグルトだ。

時間をかけゆっくり食べているとメッセージが入る。

開くとジークさんからだ。


『おはようございます。朝一の飛行機がとれ今空港です。朝の準備で忙しいと思いますが、少し話す事は出来ますか?』


もうチケット取れたんだ。きっとファーストクラスかビジネスクラスだから空きがあるのだろう。いつも早めに起きて時間に余裕があるから…


『大丈夫ですよ』

“♪♪♪~”

「早っ!!」


メッセージを送ると同時に着信が入る。待ち構えていたの?


「おはようございます」

『朝から咲さんの声が聞けるのは幸せだ。忙しい時間にすみません』

「いえ。朝はゆとりをもって早めに起きるので大丈夫です」

『母は私以上に頑固者で説得にどのくらい時間がかかるか分かりません、その間電波でしか貴女に愛を送れないのが口惜しい。言い寄る男が多いと思いますが、貴女の心に他の男を入れないでいただきたい』

「そんな人いないと思いますけど?」

『古川氏が貴女に言い寄っているのは知っているんですよ!』

「ちゃんとお断りしてますよ私!」

『貴女は押しに弱いから心配なんです。賢斗氏が束縛した気持ちが良く分かります』

「…私の事はいいので、お母様と和解してきてくださいね」

『はい。必ず。貴女との障害になるも全てケリをつけてきますから…待っていてください』

「えっと…はい」


こうして短い会話をしてジークさんは祖国へ帰って行った。


出勤準備をしていつものバス停。何年も同じ時間に乗るので並ぶ顔ぶれはいつもと同じ。バスが遅れている時は話したりして並ぶ人は顔見知りだ。

そこに見た事のない男性がいる。白シャツにGパンを履いた男前イケメンさんだ。服装から会社勤めではなさそう。

気にもせず来たバスに乗り込み出社する。

今日は特に何も無くいつも通り勤務し定時に帰宅する。職場を出てEVで降りるとエントランスが騒がしい。何も考えずに出口に向かうと


「ハィ!エミ!」

「へ?」


きらきらの男前イケメンのランディさんが手を振りながら近づいて来る。


『うわぁ!会社に来ないでよ!』


後ずさりするとゴシップ大好きの三田さんが私の腕を引っ張り


「梶井さん知り合い?何あの男前イケメンモデル?ハリウッドスター?」

「違います。知り合いです」


目の前に来たランディさんがハグをして何か言っている。直ぐ後ろに控える倉本さんが通訳してくれ


『咲。昨日のお礼に夕食をご馳走させて欲しい。昨日は殆ど食べて無かっただろ?イタリアンは嫌じゃなぃ?』

「えっと…お気持ちだけで…」

『駄目だよ。さぁ行こう』


自然な流れで肩を抱かれ車に連行される私。後ろで三田さんが年甲斐もなくきゃぴきゃぴしているのが聞こえる。週明けには全社員が知るところとなり質問攻めは確定した。

横を歩くランディさんの表情は明るい。きっと悩みの種が無くなったからだろう。


「マジか…」


生まれて初めてリムジンに乗ります。こんなの走っている所も実物も初めて見たよ。

ランディさんがエスコートしてくれリムジンに乗り込む。緊張し固まる私を後目に楽しいそうに話しかけて来るランディさん。

時折炸裂する妙な日本語に和みながらお店に着いた。ランディさんの手を借りて降りると、ホテルではなくなんか年期のはいった西洋館。何か見た事あり必死に思い出していたら


『!!』


確か情報番組で紹介していた4つ星の有名イタリアンレストランだ。確か夜のコースが尋常じゃない金額だったはず…


「あの、私仕事帰りでドレスコードに満たないので、お気持ちだけで…」

『問題無いよ。オーナーは友人だから咲が夜着ねまきでも大丈夫』


“そんな事あるかぃ!”と心の中で高速でツッコミを入れているとランディさんは笑顔で私の肩を抱いて顔を寄せて徐に


「エミ ホト ココ ミテ!」


ランディさんはスマホを構えて自撮りしたのだ。色んな事がキャパオーバーで間抜けな顔のまま撮られてしまった。


「ランディさん!消して下さい!」

“ピローン”

『大丈夫。咲はどんな顔もキュートだよ』


いやいや…アラフィフのおばちゃんにいう言葉ではない!はぁ…ダメージはデカいけど週末で良かった。明日は1日家に籠り回復に努めよう。そんな事を考えていたらお店から背の高い男性が現れた。

『あ…見た事ある』そう出て来たのはこの店のオーナー兼シェフだ。TVで取材受けていた人だ。

オーナーはランディさんとハグをして話をしている。この隙に逃亡しようと少し後ずさりすると、後ろに控える倉本さんに支えられ笑顔で手を取られランディさんの元へ連れて行かれる。ランディさんがオーナーに紹介してくれ店内へ

個室に通されシャンパンで乾杯。前菜が給仕された時にランディさんのスマホが鳴る。

ランディさんはそのまま電話に出て話をしている。ここまで来たらこんな高級料理この先味わえないからしっかり食べてやると料理に手を付け食べだす。 


「ん?」

目の前にランディさんのスマホが…

「何ですか?」

「エミ ジーク ジェラシー」

「はぁ?」


ランディさんがそう言うとスマホをスピーカーにした。


『咲さん!ランディに意地悪されてませんか!』

「えっ?ジークさん?何で?」

「ホト ジーク アゲタ」


どうやらさっきの自撮り写真をジークに送った様だ。また勝手に私に接触するとジークさんが怒るので、メールで食事に来ている事を報告した様だ。


「ランディさんに食事をご馳走になっています」

『ランディか何かすれば殴って帰っていいですからね』

「エミ カワイイ イジワル シナイ」


また余計な事を言ったランディさんにジークさんが電話口でキレている、本当にこの兄弟は…


「ジークさんもう着きました?」

『はい。今実家に着き母の小言を貰っています』

「お疲れ様です。今日はゆっくり休んでくださいね」

『朝一に貴女の声を聞き1日の終わりにまた声が聞けて今日はいい日です』


この後電話口でデレられ汗をかくことになった。ランディさんは終始ご機嫌でお酒が進み饒舌で片や私は只管食べている。

コース料理のデザートが運ばれてきてランディさんが


『咲。色々ありがとう。私は明日帰国するよ。次に会える時はジークの恋人として会いたいよ』

「・・・」

『母は一筋縄ではいかない。恐らくジークはまだまだ帰らない。まだ時間はある。これからの事はゆっくり考えればいい』

「はい。ありがとうございます」


こうして食事が終わり帰る事になりご馳走いただいたお礼を述べる。すると家まで送ると言ってくれたけど、リムジンなんかで帰った日には近所中の噂になってしまうのでお店前で別れタクシーで帰宅した。


翌土日はのんびり久しぶりにお一人様を満喫しだらだら過ごした。


そして月曜の朝。

「はぁ…気が重い…」週末にゴシップ好きの三田さんにランディさんを目撃されているので、出社したら質問攻めは必至だ。足取り重く家を出てバス停に着いた。

先週見かけたあの男前イケメンが居た。

『あ…今日もいる』位にしか思って無かった。チラ見してるといつも会う中年女性が会釈してくれ会釈を返す。

するとその男前イケメン


「おはようございます」

「へっ?あっ!おはようございます」


私もまわりも人もびっくりしている。先週バス停で初めて会って話もした事も無いよ!

彼は続けて


「通勤はバスですか?」

「あっはい」

「僕は今月引越しして来たばかりでこの辺の事知らないんですよ」

「はぁ…そうでしたか」

「色々教えて下さい」


人懐っこい笑顔でそう言う男前イケメンにいつも澄まして並んでいる若いOLがチャンスとばかりに話しかけている。

『若い者同士仲良くね~』と会話から離脱しスマホで音楽を聴きだす

OLはチャンスとばかりにぐいぐいアピっていて男性は引き気味だ。私は関係ないから三田さん対策に頭を使う。

すると肩を叩かれ振り返るとその男前イケメンが何か言った。イヤホンを外して


「はぃ?」

「この辺で美味しいパン屋ありますか?」

「えっと…ひとつ前のバス停前の“ぱんろーど”が美味しいですよ」

「ありがとう。今日の帰りにでも行ってみます」


会釈してまたイヤホンを付けるとOLはまた話しかけていた。週明けだからかバスが遅れている。やっと来たらと思ったら混んでいて朝からぐったりしながら出社。

バスが遅れたせいで一番乗りではなく数名もう出社している。その中に朝一からギラギラした三田さんに来るなり詰め寄られる。


「梶井さん!あの金曜の外人イケメンは誰なの!私あれから気になって週末ゆっくりできなかったわよ!」


既に他の社員も知っているらしく皆の耳が私に向いている。三田さんの相棒の鈴木さんなんて金曜にランディさんを隠し撮りしていて皆に見せてまわっている始末。


「誤解の無いように言っておきますが知り合いです。うちの亡くなった夫が商社勤めだったのは知っているでしょ?その関係で夫が生前に仕事の会食の席でご挨拶し知り合いになったんです。数年ぶりに来日されお会いしたんですよ」

「お相手は年下?独身?」

「年下だし妻子持ちで奥様超美人で性格のいい人ですよ」


と嘘を吐く。ロマンスが無いと知ると途端にテンションが下がりだす皆(特に三田さん鈴木さん)に静観していたチーフが場を治めてくれ、この話はこれ以降出る事は無かった。

やっと平穏な日々が来る。これでジークさんとの事もゆっくり考えれるとこの時は思っていた。



ランディさんの件が治まり私の身の回りは静かになった。あれからジークさんから毎日メールが入り、余裕が有れば電話で話す時もある。愚痴は溢さないけど声の感じから難航しているのがわかる。


「私も真剣に考えないとなぁ…」


ぼんやり考えていたら愛華からメッセージ入る。土曜日にランチの誘いだ。気晴らしに行く事にし返事をする。


“ジークさんいないからいつものカフェでいい?”


1000円でプチデザートも付くお手軽ランチだ。さすが自腹なら節約家の愛華。

週末の予定を楽しみに日々頑張ろう。


さて明日は金曜日!朝一送る資料のチェックをしたいからバスは2本早いのに乗る。

あの男前イケメンはあれから毎日一緒。日に日にあのOLの服装と化粧が派手になっていて傍目から見ても狙ってるのがわかる。

確かに男前イケメンだか正直ジークさんやランディさん、それに日本人なら賢斗の方が私はかっこいいと思う。

でも彼は世間一般でいう所の男前イケメンだから、女性が気になるのも分かるわ。


「明日は早いバスに乗るから会わないなぁ…」


そんな事を思いながら就寝し翌朝金曜日を迎えた。いつもより早く起き準備をしてバス停へ。いつも顔を合わす人達は当然いない。

早いと空いているようだ。

あと5分ほどでバスが来る。スマホでメッセージをチェックしていたら…


「おはようございます」


びっくりして振り返ると例の男前イケメンが朝からキラキラして立っていた。


「おっおはようございます?」


何で貴方がいるの?


お読みいただき、ありがとうございます。

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