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3.花火

最後の約束でジークヴァルトと会う事に

土曜日11時50分、ビルトールホテルのエントランス。約束の時間より10分早く着いたがすでにジークヴァルトさんは来ている。

薄緑のシャツにブラックデニム。銀髪を後ろで纏めファッションショーに出てくるモデルさんみたいで、周りから注目を浴びている。きっと周りの人はこんなイケメンの待ち合わせ相手はどんな美女なのかと想像してるはずだ。


そんな注目されている中に入っていく勇気は私には持ちわあせていない。

電話してどこか目立たない場所に変更をお願いしょうとしたら、ジークさんが徐にスマホを触り出した。猛烈に嫌な予感がはしる!


“ピロ〜ンピロ〜ン”私の手元で鳴るスマホ。

一斉に視線が私に集まる。

『やめて!』心の叫び!


振り向いたジークさんは美しく微笑み足早に私の元に…まるでモーゼの十戒の様に人が道を空け一直線にこっちに歩いてくる。

近くの女性グループが私を見ながらコソコソ話している。分かってるよ!不釣り合いな事くらい。


「咲さん来てくれて嬉しい」

「こんにちは。ジークさん。お約束通り…はい!この通り手の怪我も治りました。これでもう…」

食い入る様に私の左手甲を見つめるジークさん。

「触れてもいいですか?」

「?えっ!あっはい」


ジークさんは両手で私の左手を包み込んだ。


『あれ!温かい。ジークさんは体温が高いんだなぁ………ながっ!』


長いとジークさんを見上げると今にも泣きそうな顔をしている。いや!こんなに注目を浴びた私が泣きたいんだけど!


「もぅいいですか⁈」

「あっはい。申し訳ない。不躾でしたね」

「では、いきましょうか」

「はぃ?どこに」


私の肩を抱き歩き出しホテルを出ると目の前に高級外車停まっている。車の前には白髪男性が…確かタチバナさん。ドアを開け乗せられ続いてジークさんも乗り込んだ。

「あの…どこに行くんですか?帰りたいんですが…」

「シネマランドに行きます」

「はぃ?」


唖然としている間に車が停車した。ジークさんが降りて手を引かれ降りると高級デパートだった。賢斗がスーツは拘りがあり必ずこのデパートで購入していて、昔はよく来ていたが、賢斗が亡くなってからはあまり足が向かなかった。


「何故デパート?」

「ランド内は歩きます。咲さんの履物では疲れるのでスニーカーに履き替えましょう」


ジークさんさそう言ってスポーツ用品売場に連れて行きスニーカーを選んでいる。流れる様なエスコートで「待って」って言う間もない。

ホテルで待ち合わせだから今日はキレイ目の濃紺のパンツに薄いラベンダー色のニットにローヒールを履いている。

確かにランドで1日遊ぶ服装ではない。椅子に座らされジークさんが選んだスニーカーが5足並んでいる。どれもスポーツメーカーの最新モデルで自分で買うランクの物ではない。接客している店員さんの名札が目に入るとフロアーマネージャーで偉いさんだ。


「咲さんはどれがいいですか?」

「えっと…黒かダークグレーのが」


私のスニーカー如きに真剣に選ぶジークさん。変わっている人だ。店員さんと相談しダークグレーに決めてこのまま履き替える事に。鞄から財布を出そうとしたら、それより先にジークさんがカードを出し精算した。


「今日はお詫びの日なのでお財布は出さないで下さいね」

「いえ、自分の物は自分で…」

ジークさんは聞こえないフリを決め込んだ。押し問答が面倒で

「ありがとうございます」

ジークさんは振り返りいい笑顔で答えた。


デパートを出てまた車に乗せられランドに向かいます。


「何故ランド何ですか?」

「愛華さんから咲さんがランドに行きたがっていると聞いたので」


いつの間に情報漏洩してたんだ愛華!油断も隙も無いヤツだ。確かに一度行ってみたかったけど。シネマランドは3年前にオープン。オーブン当初は娘の凛は高校生でもう親と行く歳ではなく夫の賢斗と行く予定にしていたのに、その前に賢斗が亡くなり行ってくれる人がおらずそのままだった。

先月私の好きな小説がアニメ化され、そのアトラクションが期間限定で始まり、愛華にランチおごるから一緒に行ってと打診していた。

ランド行けるのは確かに嬉しいけど、シークさん相手だと気を遣うから楽しめるか疑問だ。

小1時間走りランドが見えて来た。シンボルのバンベルの塔が見えて来た。


中央ゲートには沢山人がいて入場にも少し並びそうだ。車から降りて入場ゲートに並び入場すると入ってすぐポップコーンスタンドがあり、キャラメルのいい匂いが漂っている。凛が居たら間違いなくバケツ買いするんたけど、ジークさんにポップコーンは似合わないし私もあのポップなバケツはちょっと恥ずかしい。そのまま過ぎると思いきやジークさんは私の手を引きポップコーンスタンドに行きます、バケツサイズのキャラメルポップコーンを買ってくれた。なんとバケツはジークさんが持ってくれる。

美形は何を持っても絵になる。

そしてジークさんはパークガイドも見てないのに、私が行きたいアトラクションに直行する。

人気アニメだから2時間待ちだがジークさんがファーストパスを購入していて、優先列に並び待ち時間は20分程だ。列に並ぶと辺りがざわつき出した。並んでいたら前の女性グループがチラ見をしながら盛り上がっている。

その状況がしばらく続きやっと順番が来た。


ゴンドラ(4人乗)にのり、ハンドガンでアイテム採取と敵キャラを倒すアトラクション。

4台一斉にスタートし最高得点を取った人は勇者として非売品の景品が貰えるらしい。

スタートするとアニメに忠実な映像が映し出され、作品のキャラクターになった気分で楽しい。しかしこうゆうシューティングゲームは苦手で中々スコアが伸びない。


「きゃあー!!」他の参加者から悲鳴が上がる。敵のラスボスの魔王が現れた。


『ん?誰かに似ている』


それはジークさんだった。魔王は黒髪だが容姿がジークさんそのままだ。さっきの悲鳴は魔王推しの子達だろう。並んでいたら時の周囲の反応が今になって分かった。


あっという間に冒険は終わり結果発表。

勇者には選ばれたのはジークさん。他の参加者から拍手が起こり「魔王!」コールが起こり、アトラクションのキャストが唖然としている。

非売品の景品は作者書き下ろしのスピンオフ短編小説。景品を受け取ったジークさんはキャストから感想を聞かれて


「大切な人の為に頑張りました」


と私をみて微笑み周りからまた悲鳴が上がる。

ジークさんは小説を私に渡して

「この小説が好きだと愛華さんに聞いて、プレゼントしたくて頑張りました」

「あっ、ありがとうございます」


アトラクションを出るとさっき一緒だった他の参加者達はジークさんに写真を撮って欲しいと頼んできた。ジークさんは微笑み


「申し訳ありません。今日は大切な人と一緒ですのでお応えできません」


右手を左胸に当ててお辞儀をして断るとまた悲鳴が上がる。目立ち過ぎてこの場から去りたい…

少し後退りした私の腰に手を廻して微笑み、次のアトラクションに向かった。


この後、色んなアトラクションを周りカフェでお茶休憩をしていたら愛華からメールが入る。


「楽しんでいる?お土産はヌーピーの新作Tシャツでいいよ!ちなみに私の予言。ジークヴァルトさんとはこれで終わらないと思うよ」


「!」


何このメール!愛華の予言めいた事はよく当たるからやめてほしい!

難しい顔をした私にジークさんが心配そうに覗き込み思わず仰け反る!こんな美形近くで見ると目が潰れます!


「何か問題でもありましたか?」

「愛華がお土産の希望を送り付けてきたんです。図々しですよね」

「愛華さんは何をお望みですか?」

「彼女ヌーピー好きて新作のTシャツ買って来いって!お菓子1箱で充分です」


ジークさんさ立上がり私の手を引きカフェを出て向かいのショップに入った。入ってすぐに店員を捕まえて何か聞いている。店員さんは案内を始めある棚の前に来た。目の前にはヌーピーのグッツコーナーがあり、ジークさんがTシャツを全種類手に取っている。唖然とする中レジに向かうジークさんを慌てて止める。


「私が買いますし1枚で十分です」

「今日はお財布出さないと約束しましたよね⁈それに彼女には色々相談頂いたので、これは私からのお礼です」

「はぁ?相談?」


私の知らないところで愛華とジークさんが繋がっていた!愛華!

この後、色々ショップを周り色々買おうとするジークさんを止めてまわりぐったりする。


すると「ぴろ〜ん」スマホの着信音。この音私では無い。ジークさんはスマホを取り出し確認して、また私の手を引いてショップを出て何処かに向かう。いい加減振り回されるのに疲れた私は


「ジークさん。何処に向かうかくらい教え下さい。さっから振り回されて疲れて来ました」


ジークさんさ立ち止まり私を見て謝罪する。その表情は怒られた子供みたい。そんな顔されたら怒れないじゃん…


「申し訳ありません。楽し過ぎて暴走した様です。実は夜の花火がもう直ぐ始まるので移動しようと思いまして…」


そういえばさっきから周りの人達も同じ方向に向かっている。花火なんて何年見てないだろう…


「花火はお嫌でしたか?」

「いえ…」

「では行きましょう!」 


また私の手を引いて歩き出すジークさん。何か楽しそうなジークさんを見ていたらほっこりして来た。


ジークさんが連れて来たのは有料の特設スタンド。ジークさんはスマホに表示した予約チケットを見せて指定の席に座る。別にパーク内なら何処からでも見れるからお金使わなくてもいいのに…

ふと前の席の親子連れが目に入る。娘さんは小学校か中学生か⁈

凛が中学生最後の夏休みに旅行に行き、あの親子の様に並んで花火見たなぁ…思えばあれ以来花火は見ていない。


「どうかしましたか?」

「いえ…前の親子を見ていて昔を思い出していたんです」

「…か?」

「はい?」

「貴女の夫は優しかったですか?」

「はい。優しくいい夫でいい父親でした。少しやきもちやきで束縛する人でしたけどね…」

「でしょうね…」

「ん?主人を知っているんですか?」

「いっいえ!こんな素敵な奥さんがいたら誰でもそうなりますよ」

「お世辞ありがとうございます」

「信じて下さい!本心ですよ!」

「はい。そうしときます」


“ひゅーん どぉん”

花火が始まった。有料席だけあり頭上に花火が開き降り注いでいる様だ。ふと手の温もりを感じる手を見るとジークさんが私の手を握っている。

花火を見上げるジークさんの横顔はとても綺麗だ。恐らくこの場にいる誰よりも綺麗。

私が見ている事に気付いたジークさんがこっちを見る。慌てて花火を見上げた。


楽しい思い出でジークさんとの縁もこれで終わり…


花火が終わりパーク内のレストランで夕食をとり、朝待ちせしたホテルに戻った。愛華の呪いの予言とジークさんの好意に少し警戒心を持っていたのに拍子抜けしたが、面倒なやり取りをしなくて済むとほっとする。


「今日はありがとうございました。ジークさんなこれからのご活躍をお祈りしてます」

「貴女と会えてよかったです。またご縁がありましたら、またどこかで…」


ゔーん。住む世界が違うから会う事無いと思うけどなぁ…

するとジークさんは私が履いて来たヒールが入った紙袋と愛華のお土産が入った袋を渡してくれたので受け取った。ジークさんが握手を求めて来たので手を出すと引き寄せられ抱きしめられた。


「・・・」

「えっ?」


耳元で何か言われた。日本語ではない外国語で意味が分からない。


「では!」


案外あっさり別れて家路に着いた。

案外あっさりジークヴァルトと別れた咲。明日から日常が戻ってくる予定?


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