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25.必死 ジークヴァルトside

咲に拒否されていた間の話。ジークヴァルト目線で話が進みます。

「あぁ…良かった…繋がった…」


咲さんと愛華さんを家に送り滞在するホテルに戻る。車のシートに深く座り脱力した。ここ数週間また彼女を失いかけて必死だった。安心したらいい歳して涙が出てきた…


1か月前にやっと前世を思い出してくれた夜に彼女を最寄りの駅まで送り別れた。別れ際に一抹の不安を感じたが、前世の二人の愛はそんなやわなものでは無いと自分に言い聞かせて家路に着いた。翌日、咲さんとの距離を詰めて行くために、昨日のお詫びメッセージを送る。今後の事を色々考えるとテンションが上がる。


しかし悲劇は直ぐやってきた。咲さんからメッセージが届き心躍りメッセージを読むと…


「何!」


メッセージの内容が別れをにおわす内容だった!慌ててSNSでメッセージを送れない…

一気に不安が押し寄せる。

慌てて電話をしたが…繋がらない!

『お客様のご都合によりお繋ぎ出来ません』無機質な機械音が流れ絶望する…

最後に貰った咲さんのメッセージを開き何度も読み返す。


『夕食ごちそうさまでした。お互い色々ありましたが、今後はお互い自分の人生を歩んでいきましょう』


やっぱりこれは別れのメッセージなのか⁈絶望しているとタチバナが今日の取引先との会食の時間を伝えに来た。仕事できる状態ではない私を見たタチバナは


「梶井様は携帯番号を変更はされていない様です。と言う事は完全にジーヴァルト様を拒否されて訳では無いのでは?恐れながら少し距離を置き梶井様に考えるお時間を与えられるべきだと…」

「急ぎ過ぎたのか…」

「しっかりなさって下さい。長年の想い人ではありませんか」


タチバナは私が父の仕事を手伝う事になってからずっと仕えてくれていて、私の前世の話も信じてくれ、エミリアを捜すのを手伝ってくれた唯一信頼できる人物だ。

両頬を叩き自分を鼓舞して仕事に向かう。


咲さんの存在を知った時から彼女の全てを調べ知っている。家や職場に行けば会えるが、また逃げられるだろう。最悪嫌われる可能性もある。


「ならばどうする…」


必死だった。もう彼女を失いたく無い!

色々考え…

『先日送った駅前なら咲さんが週末出かける時に利用するかもしれない』


ならば会える機会はあるはず。

こうして週末に多々野駅前の駐輪場で咲さんを待ち始めた。

やはり日本人でない私は目立つ様で色んな人から声をかけられる。警官の職務質問をはじめ大半は女性からのお誘いだ。

声をかけてくる中に美しい人もいたが全く心は動かない。朝から夜まで駅前に立ち咲さんを待つ内に私は有名になった様だ。『週末の王子』なんてあだ名が本人の耳に入ってくるくらいだ。

近い内に咲さんの耳にも入るだろう。

タチバナの調べでは通勤はバスを使いそれ以外の買い物などは、車で出かけ電車はあまり使わない様だ。

会社や家に行けば早いが嫌われたくないから、咲さんが電車を使ってくれるのを期待し駅前で待つ。今週末も咲さんは駅前に現れなかった。落胆し車に乗るとタチバナが


「ジークヴァルト様。今週金曜の井口商事の会長との会食ですが、リバーシティホテルの鉄板焼きのお店に変更いたしました」

「何故いつもの店をつかわないのだ?」

「どうやら梶井様がお勤めの会社がそのホテルで懇親会を催すらしく、お会いできるチャンスがあるかもしれません」

「本当か!」

「井口会長は無類の肉好きですので、鉄板焼きに変更しても差し支えないかと…」


タチバナの気遣いは一級品だ。いい部下を持ったと改めて思う。そして会える事を期待し週末を待った。


金曜ホテルに着くと確かに入口に咲さんが務める会社の名前が書かれた札が置かれていた。始まりの時間も調べこちらの会食時間も合わせた。ホテル入口で井口会長を待ちつつ咲さんを捜す。暫くすると女性の集団がやって来て2階の宴会場に向かっていく。


『おかしい…咲さんがいない…不参加か…』


すると若い女性が「梶井さんは中島さんのトラブル処理で遅れてくるって。貧乏くじ引いたね」


「っつ!」って事はいつ来るか分からない。私はいつも運が無い…落胆していたら井口会長が来てしまった。仕方なく井口会長を伴って店に移動する。

移動中タチバナが『私は入口が見えるところで梶井様がお見えになるのを確認しておりますので、会食を無事に終えて下さい』

『分かった』


タチバナが咲さんが来るのを確認してくれ安心して会食に向かう。

会食は2時間弱で終わりロビーで見送りに行く。先ほどタチバナから咲さんが遅れて着いた事を確認し心躍る。井口会長を見送った後、暫くロビーのソファーに座り咲さんが出てくるのを待つ。


スマホを見つめて咲さんのメッセージを何度も読む。”お互いの人生を歩む”と書いてあるが、私は咲さんと共に歩みたい。もう1人は嫌だ…


暫くすると吹き抜けの2階から女性の声が沢山聞こえてきた。どうやら懇親会が終わった様だ。ロビーに続く2階からのエスカレーターを注視する…が…


『いない…何故だ!』

唖然とする私の横を咲さんの同僚が話しながら帰っていく。


「梶井さん。顔色悪かったけど大丈夫かなぁ?」

「古川さんが電話してたよ。古川さん絶対梶井さん狙いだよね!古川さんを狙ってた中島さん怒ってたよ。”アラフィフおばさんのどがいいのよ”って」

「中島さんは気が強いからなぁ〜。梶井さんにキツく当たらないといいけど。だって梶井さんいい人だし悪くないじゃん」

「中島さんアラサーだから結婚を焦ってるんだよ」


「タチバナ。直ぐ咲さんの家へ」

「車は前に回してございます」


車に飛び乗り咲さんの家に向かう。無理やり飲まされたのだろうか⁈心配でならない…

体調も心配だが”古川”って誰だ!


「ジークヴァルト様。古川なる者が分かりました。梶井様の会社の業務提携する商社の担当の様です。為人は今調査中でございますので、お時間下さいませ」

「分かり次第教えてくれ」


やはりタチバナは仕事が早い。それより咲さんが心配だ。彼女はケイン亡き後、娘さんと暮らしていたが、今は娘さんが進学し今は1人暮らしだ。

少ししたら咲さん家の前に着いた。車内から家を窺うと灯がつき帰宅しているのが確認できる。心配で家に突入したい…が…今は拒否されている。


「ジークヴァルト様。あまり長居しますと梶井様に気付かれますし、近隣から警察に通報される可能性がございます。そろそろ…」

「あぁ…ホテルに戻ってくれ」


後ろ髪引かれながらホテルへ戻った。

それにしてもいつ咲さんは帰ったのだろ…入口はずっとタチバナが居たのに!


「もしかしたら…宴会場の横にエレベーターがあり、そこから地下のレストラン街からお出になったのかもしれません」

「なぜだ?」

「推測の域を出ませんが、例の古川氏に追いかけられるのを危惧し、エレベーターから地下に降りたのかもしれません」

「古川に言い寄られていたと言う事か⁈」


確かに正面玄関に向かっていたら、追いかけて来た古川に呼び止められるかもしれない。

それなら辻褄が合う。

古川を警戒する必要がありそうだ。咲さんの勤め先は社員は女性しか在籍しておらす安心していたが、取引先に刺客がいたとは…


「早く咲さんを捕まえないと」


また目前で大切な者を奪われる恐怖に襲われ背に冷たいものがつたう。

翌日から古川の情報を集め対策しようとしたら、私が動く前に古川は担当を外れた。

安心しつつも早く咲さんと会わなければと焦り出す。


そしてまた週末が来た。また朝から多々野駅前に立つ。

今日はあまり声をかけられない。安心しながら立っていると


「あれ?ジークさん?」


振り返ると咲さんの親友の愛華さんだ。驚いた顔をした愛華さんは駆け寄り


「こんにちは。咲と待ち合わせですか?」

「いえ…実は…」


愛華さんに事情を話すと


「はぁ⁈着信拒否されてるの!マジで!ジークさん…しくりましたね!私に任せて」

「あっはい?」


私の手を取り踏切に向かい歩き出す愛華さん。どこに行くんだ?


「今反対側のロータリーに咲がいます。待ち合わせしているから、私が仲介しましよ」

「ありがとうございます!愛華さんは救世主だ!」

「もっと敬って!」


ロータリーのベンチに愛しい人との後ろ姿が見えて来て泣きそうになる。愛華さんが声を掛け振り向いた咲さんは化粧気がなく自然で美しくまた惚れた。今度は間違わない。咲さん。私を拒まないで…

お読みいただき、ありがとうございます。

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