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19.夫と娘

ジークヴァルトから前世の話を聞き、なんとも言えない気持ちになり、どうしていいか分からない咲。


“カンカンカンカン…”

踏切の音がする。ジークさんの後ろの窓に踏切の赤い光がチカチカしている。どうやら駅前に着いていたようだ。

ジークさんが真っ直ぐ見つめている。ジークさんの話は衝撃的だったけど、どう反応していいか分からない。只々困惑するばかりだ。


「話は分かりました。でも…」

「でも?」

「とりあえず帰ります」


するとジークさんは私の手を取りぎゅっと握りしめて見つめて…


「また会って欲しい」

「…ごめんなさい。今日は色々あり過ぎて混乱しています。暫くそっとして欲しい…」

「嫌です!」


手を引かれ抱き締められる。抗う気も起きずジークさんの腕の中。困っていたらカバンから着信音が鳴り響く。この音は…


「ジークさん放して!娘からなんです」


ジークさんは一瞬躊躇して腕が緩めたので、慌ててカバンからスマホを取り出した。やっぱり凛だ。


「はい」

『お母さん?今外なの⁈家に電話したら留守電だったから』

「うん。何かあった?」

『明日夕方帰るからご飯よろしく』

「あれ?今レポートで忙しいって言ってなかった?」

『それどころじゃーないよ!』

「何かあった?」

『パパ凄いの予知能力あったみたい。詳しくは明日話すわ今から風呂に入るから!じゃーね』

「ちょっと!」


キャンパスライフ楽しすぎて全く帰ってこなかった凛が帰ってくる。それに恐い事言ってた。『パパの予知能力』ってなんの事?

ふと前を向くとジークさんがまた手を伸ばして来た。思いっきり後退りして距離をとり


「帰ります」

「やっぱり家まで…」

「駐輪場に自転車を停めているので無理です」

「…」


すると扉が開きタチバナさんがいい笑顔で立っていた。


「ジークヴァルト様。梶井様がお困りでございす。紳士の振舞いを…」

「タチバナさんありがとう」


車を降りて送ってもらったお礼を述べて自転車を取り家に急いだ。

このままベッドに入って寝たいが洗濯物入れないと…化粧落とさないと…

重い体を引きずりながら最低限の事をしてベッドに入る。


ふと隣の枕が目に入る。賢斗が亡くなってからもベッドはクインサイズのままで枕もそのままだ。賢斗が寝ていた枕を抱いたら賢斗の香りがまだ残っている。

嫉妬深いけど優しくいい夫だった。ジークさんや稜くんの話が信じられない。


「賢斗の手紙を読んだら全て納得できるのかなぁ…」


気がつくと涙が出ていた。賢斗の枕を抱きしめ一頻り泣いて眠りについた。


目が覚めたら6時だった。何も考えたく無くて朝一から家中片付けだす。凛が帰って来るからシーツを洗い、お風呂に入るついでに風呂を洗った。遅めの朝食を食べていたら凛からメッセージが入る。


『予定より早く帰るから、お昼ご飯もよろしく』

「はあ〜買い物を先に行かないと、冷蔵庫空っぽだ」


家事をこなしているとあっという間に時間が過ぎてお昼前だ。凛からは新幹線降りたとメッセージが入る。昼食の準備を始めた。

凛の好きなボロネーゼができた頃に帰ってきた。一応急に帰って悪いと思った様で私の好きな芋羊羹を買って来た様だ。 


「急に帰って来て何かあった?」

「うん。でも先にご飯!朝食べてないもん」

「分かった…とりあえず…」

「手洗い!うがい!でしょう」


頷くと鼻歌まじりで洗面台に向かう凛の背中を見ながら大きくなったなぁ…と実感する。

私は155㎝と低い方だが、賢斗が178㎝あり賢斗に似て凛は背が高い。


リビングに戻って来た凛はボロネーゼを見て喜びすぐ食べ出す。

久しぶりの娘との食事で少しテンションは持ち直した。

食後のコーヒーを入れ凛と向き合うと、凛は徐にスマホを操作して私の前に差し出し、動画を再生した。


「これお母さんだよね⁈」

「ん?」


再生された動画を見てびっくり!ジークさんに求婚プロポーズされた時の動画が動画サイトにアップされている。顔はぼやかしてパッと見た感じ分からないが、知り合いなら気付くレベルだ!


「これは…」

「何気なく見ててびっくりしたよ。この人誰?」


凛に前世の話なんて出来ないし、何て言えばいいんだろう。必死に言い訳を考えていたら


「顔はしっかり見えないけど、凄い男前じゃん。モテるよねお母さん!パパもイケメンだったもんね」

「…怒ってるんじゃ無いの?」

「お母さんが幸せなら私はいいし、パパがお母さんに恋人が出来たら認めてあげてって言われてたから」

「パパが?」

「うん。私が高校に入ってすぐの頃に、『多分パパは長生き出来ないから、パパが先に死んでその後にお母さんに恋人が出来るから、認めてあげて欲しい』って言われてたの」


びっくりして凛の顔を見たら嘘を言っている様には見えない。呑気にコーヒーを飲みながら例の動画を見ている。


「パパは『お母さんを幸せにできる人が出て来て、お母さんは幸せになるから大丈夫。でも凛の父親はパパだけだからな』って言っていたの。その時は何言っているんだろうと思ってた。だからこの動画見てもびっくりしたけど案外すんなり受け入れれたよ」


賢斗ケインはアルフレッドが来るのを分かっていたの⁈沈黙する私に凛は


「っで誰なの?ちゃんと説明して」

「確か求婚プロポーズされたけど返事してないし、まだ知り合ったばかりで」

「でもOKしてんじゃん!」

「あの場を治めたくて、相手の言う通りにしたら、OKしたみたいになって…」

「相変わらずお母さんは押しに弱いなぁ!付き纏われているなら、私が断ってあげる!」

「大丈夫だから」

「大丈夫じゃないからパパに捕まったんでしょ!パパ言ってたよ。『お母さんが押しに弱く無かったら、パパは結婚出来なかった』って」

「!」


知らない間に賢斗は凛に色々話していた様だ。まだ色々受け留れていない私は凛に大丈夫だとだけ告げて半ばこの話を終わらせた。そして知り合いが動画を見て誤解しない様に凛に動画サイトに削除の依頼をかけてもらう事にした。あの時、面白がって撮影していた人がいたが、まさかサイトに投稿するとまでは思って無かった。


凛はジークさんが気になるらしく、しつこく聞いてくる。前世の話をは伏せ知り合ったきっかけを話すと目を輝かせてすぐジークさんの事を調べ、会社のHPの写真を見つけて『イケオジ!』と騒いでいた。


暫く騒いだ凛は聞きたかった事が終わったようで、今度は高校の友人に連絡し急遽夕方から飲みに行く事になった。せっかく夕飯作る材料買ってきたのに相変わらず自由人だ。

でも凛が出かけてくれる事になり、賢斗の手紙を読めそうだ。夜になり凛が外出したので、夕飯に食べる冷凍ピラフを温めながら賢斗の手紙と睨めっこしている。

“読む!”と決めた筈なのに中々開封できず、かれこれ30分は経っている。


“ぴっぴっぴ”レンジか止まった。手紙を横に置いて先にピラフを食べてから読む事にした。


「よし!読むぞ!」

覚悟を決め開封し手紙を取り出し読む…

お読みいただきありがとうございます。

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