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17.ジークヴァルト 〜 前世7 〜

エミリアの元への行く方法がある事を知り、心を入れなおしたアルフレッドだが…

クロス枢機卿もとい法王がエミリアの元への行き方を知っていると言う。世捨て人だった俺はまず湯浴みをして体を清潔にし髭を剃り髪を切った。身なりを整えてしっかり夕食を食べて早く就寝する。

教えてくれる条件は俺が前の様に紳士になる事。明日朝から散歩から始め体を戻す。訓練所に入所した時の様に体力づくりから始めた。まだ肋骨のひびは治っていないから無理は出来ない。焦る気持ちを抑えて俺を取り戻す日々が始まった。


後で知った事だが俺に会いに来たクロス枢機卿は翌日に全員の賛同を得て法王になっていた。クロス法王は俺の世話役に神官見習いをつけてくれ、お陰で集中し復帰リハビリに取り組めている。

規則正しい生活を始め夜よく眠れる様になり、朝も早く目覚め体調はいい。俺が教会に保護されてから世話をしてくれているティークは涙ぐみ喜んだ。


「僕は詳しい話は聞かされていませんが、アルフレッド様が深く悲しまれて、日に日に弱りこと切れてしまうのではと心が痛かったんです。神に仕えると決め人々の為になろうと思ったのに、目の前の方を救うない自分が不甲斐なくて…」

「ティークは良くしてくれたよ。俺が生きるのを諦めていたのさ。そんな奴に法王の言葉すら届かなかったんだ」

「新しいクロス法王は立派なお方です。きっとアルフレッド様を導いて下さいます」

「あぁ…」


こうしてティークや他の神官見習い達と打ち解けていった。


やっとあの約束の日から10日経ち、昼からクロス法王がくる。

朝から身支度し訪問を待つ。まるで恋人を待つ様だ。部屋で待つと聖騎士と共にクロス法王が聖騎士とやってきた。法王になり聖騎士が増えている。


「法王おかれましては…」

「アルフレッド殿、堅苦しい挨拶は必要有りません。友だと思って気楽に話して下さい」

「しかし…」

「法王となりましたが私は何も変わりません。クロノスに仕え人の為になりたい。偉くなりたい訳では無いのです」


法王と言えば教会で一番偉い人で、国で言えば国王陛下だ。なのにこの人は法王になっても変わらない。前の法王とえらい違いだ。


「ならば法王様のお心に感謝して…っで俺は立ち直りましたか⁈」


俺をじっと見据えたクロス法王はくすっと笑い


「はい。合格です。この調子で体を大切にして下さい」

「よっし!では(エミリアの元へ)行く方法を!」

「深夜に使いを出しますから、私の執務室に来て下さい」

「今聞けるんじゃ無いのですか⁈」

「それを記した物は法王の執務室から持ち出せないのです。そして貴方は死んだ事になっているので、日中に教会に出入り出来ない。ですから人気のない深夜においでなさい」

「わっ分かりました」

「では、私は次の予定がありますから、ここで失礼します」

「はい。ありがとうございます」


法王様は俺の背中を軽く叩き帰っていった。

すぐ教えてもらえると思っていたから拍子抜けした。でも夜になれば…気を取り直し木刀を持ち素振りをしに部屋をでた。

ソワソワしながら夜まで過ごし迎えを待った。夜がふけ月が頭上に上がった頃に枢機卿が迎えに来た。彼について法王の執務室に向かう。

執務室には法王がいた。法王はデスクに座っていて何かを見ている。俺に気づくと挨拶もそこそこに手招きした。


「法王様?」


法王は立ち上がり俺を椅子に座る様に促す。デスクには分厚く古い本が開いてある。

『なっなんだこの本は⁉︎』

本を見つめる俺に


「この本は”時渡の儀式”の禁書で法王しか存在を知りません。初めて行われた儀式の報告に作法のルールそして…不正も」

「不正⁈」


そうケインの様に不正を働き騎士と偽った者が過去にいたそうだ。


「見て分かる様に禁書は法王しか読み事が出来ず、この部屋から持ち出す事は出来ない。ここで読み書き写したり等しないで下さい。日が昇るまでとし私がいる時で有れば閲覧可能にします」

「分かりました…ありがとうございます」

「外に聖騎士が居ます。何か有れば仰って下さい」

「はい」


こうして法王は退室し一人になり1ページ目を開き読み出す。


『マルラン王国建国後56年経った年の初めに時と愛の神クロノスがマルラン王国を救う為に、当時の法王と国王に啓示が下す。15歳の乙女と贄とし出現した”渡の扉”から異界へ乙女を渡らし、対価としてマルラン王国に幸を齎す。この儀式を”時渡の儀式”とし、選ばれた少女を”時渡の巫”、少女を護る青年を”時渡りの騎士”とした。

ここに儀式の成り立ちからの全てを残す

第2代法王 ジャクソン』


ページをめくると年表があり、最後を見ると今回の儀式も既に書かれている。年表は数十枚にもおよび、儀式はかなり昔から行われていたのが分かる。


『何だ⁈この印は?』

儀式が行われた年号に”★”が付いている。


疑問に思いながら第1回目の儀式の詳細を読む。

法王と国王に啓示が下りて直ぐに2人は国内の乙女バージンを集め、クロノスの指示通り教会内にある泉に順番に乙女たちに手を付ける様に命じ、平民の少女マチルダに巫女の痣が出現した。この乙女バージンの両親呼びクロノス神の御心を説明し乙女を贄とする事を伝えた。本人も家族も抗ったが、この時王国は飢饉にあい食糧不足で特に平民に十分な食料が行き渡っていなかった。国王は巫女を引き受ける代わりにこの家族に家と農地そして高額なお金と与えると約束した。そして高貴な巫女の選ばれたのは名誉だと言い半ば強引に納得させた。こうして本人も家族の為と決心し巫女は“渡りの扉”をくぐり異界へ渡って行った。


『初めての渡りは騎士がいなかったのか⁈』初めて知る事実だった。驚きながら次の頁を読み進む。


1回目の時渡りから122年経ち2回目の巫女が選ばれる。1回目の巫女から年初めに満15歳の少女を集め巫女の判定を行う事と国王が決め行われるようになっていた。二人目の巫女は男爵家の令嬢ロザンナ。すると貴族から貴族の令嬢は除外すべきだとすべての貴族から陳情が上がる。

しかし国王も法王もこれを跳ね除けこの男爵令嬢は巫女となった。そして国王はこう宣言する『マルラン王国の全ての少女が対象だ。勿論王女も例外なく儀式に参加し巫女に選ばれれば巫女として差し出す。これは敬愛するクロノス神の御心だ!』

王女も対象となっては貴族は口を噤むしかなかった。


『3回目からは問題無く巫女が選ばれ渡っている。ん?この年号の前にある“◎”は何の意味だ?』


9回目の儀式が行われた年号の前に“◎”が書かれていて、気になりこの時の記録を読む。

9回目の巫女は豪商の娘ケイトだ。無事選ばれ両親は王家御用達の証を貰う事と、王家との取引を褒賞として望んだ。そして慣例通り巫女が渡りの扉をくぐり儀式は無事終わった。

そして儀式終了後5日経ったある日。法王と国王が同じ日に同じ夢を見る。

9代目の巫女は異界に渡った先で心を病み自害した。クロノスは心を痛め法王と国王にこう告げる

「異界に転生した巫女の心を護る為に“時渡りの騎士”を選び巫女と一緒に渡らせるように」

と、こうして選ばれた巫女の事を深く愛する者が騎士に選ばれる事となったのだ。


『どうやら年号横の印は通例通りに儀式がなされなかった時に付けられている様だ。ならば次に一番近い儀式で印があるのが…』

年号を追って行くと新しい印が出てきた。今度の印は”★”だ。


『この印は確か…』

年表の最後の頁を開くと今回…すなわちエミリアと俺が選ばれた今年にも同じ印が付いている。


『…と言う事は!』

何か問題が起きてた言う事か⁈ここに手掛かりがありそうだ。年表を戻し”★”が付いている一番古い巫女の記録を読む事にした。


一番古いのは第13代で巫女は伯爵家でメイドをするルィーゼで騎士は伯爵嫡男サイモン。

この時の儀式は波乱に満ちていた様だ。何故ならこの頁だけ紙の劣化が酷い。恐らく歴代の法王が何度も読んだのだろう。


座り直し読み掛けた時、部屋の外から聖騎士が声をかけて来た。どうやら時間切れの様だ。何か掴めると思っていたのに肩透かしだ。本を閉じ返事をしたら


「本は閉じ右引き出しの一番下に入れて、部屋から出て下さい」

「分かったよ」


言われた通り引き出しに本を直し部屋の扉を開けた。そこには聖騎士が2名居て手紙を渡された。手紙は法王からだ。

聖騎士の後ろに神官が居て神官について小屋まで帰る事になった。

教会の裏から出たら空は白み始めている。夜が明ける。早朝の空気は澄んでいて深呼吸すると心の汚れが流れて行く様に感じた。


部屋に戻りランプを点けて法王の手紙を読む。内容は禁書は全て読むには数日要する。”また読む機会を与えるので連絡を待つ様に”と書かれていた。


「あぁぁ…やっと手掛かりになりそうな頁を見つけたのに暫くお預けだ…早く読みたい」


法王の手紙を机の引出しにしまいベッドに入り眠りについた。

結局法王は忙しく、次に呼ばれたのは6日後だった。

お読みいただきありがとうございます。

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