10.咲 〜 前世 3 〜
エリアス殿下の誕生パーティーに参加。波乱の予感が…
王城に着きアルフにエスコートされ会場に入場する列に並ぶ。会場入口では招待状を提示しなければ入場出来ない。
アルフと並んでいると視線を感じ前を向くとケイン様がこっちを見ている。寒気がしてアルフの腕にしがみつく。
ケイン様に気付いたアルフは私と場所を変わってくれ、ケイン様の視線から庇ってくれた。アルフは眉間に皺を寄せケイン様を見ている。
やっと会場に入るとすぐ親友のレジーナが来てくれた。目立ちたく無い私達はテラスに近い壁際に陣取り話をする。レジーナはパートナーの従兄弟のパトリックと来ていた。
少しすると第二王子のエリアス殿下が入場され、挨拶をするのに列ができる。
私もアレフのエスコートで、レジーナと共に列に並ぶ。皆んなと話していたら直ぐに順番が来た。緊張する〜!
アルフが先に殿下に挨拶し次に挨拶する。カーテシーをし
「リーバス侯爵家のエミリアと申します。エリアス殿下にお祝い申し上げます」
「ありがとう。貴女がアルフレッドの愛しい人ですね。アルフから聞いてはいたが、何と愛らしい方だ。アカデミーでは同級生になる。仲良くしてもらいたい」
「恐れ多い事でございます」
「殿下!エミリアは人見知りします。あまり距離を詰めないでいただきたい」
「いや!普通だろう!アルフは過保護だなぁ!私はエミリア嬢と仲良くなりたいだけだ」
すると殿下の後ろに控える文官が次が待っていると急かす。
次はレジーナの番だ。
列から離れレジーナが挨拶を終わるのを待つ。
『あれ?殿下もしかして…』
「流石俺のエミリアだ。そう殿下はレジーナ嬢に好意を抱いているんだ」
「知りませんでしたわ」
「まぁ!殿下に手助けは必要としていないから、見守ってあげて欲しい」
「分かりましたわ。ちなみにレジーナはお慕いする殿方は居ませんわ」
「それは殿下はもう知っているよ」
「まぁ!」
アルフと話している内に挨拶を終えたレジーナがやってきた。
「殿下に挨拶は流石に緊張したわ⁉︎アカデミーで同級生になるから、仲良くしてくれと言われたわ!恐れ多くて…」
「殿下はお優しいから大丈夫よ!」
殿下のご挨拶が終わるまでレジーナと楽しく話し楽しい時間を過ごした。
挨拶が終わると宮廷音楽団による演奏が始まり、エリアス殿下と従姉妹のカリーナ嬢がファーストダンスをする。
殿下はまだ(仮)婚約者を決めていない。マルラン王国は”時渡の巫女”と”時渡の騎士”の儀式がある為、その儀式が終わるまで婚約者を決めない者も多い。反対に仮で決めている者の方が少ない。
音楽が終わりかけるとアルフが手を差し出し
「エミリア俺と踊ってくれますか⁈」
「はい!喜んで!」
アルフの手を取るとアルフはフロアの中央に行く。
「アルフ!目立ちたく無いの!端がいいわ」
「いや!俺の婚約者が君だと言う事を知らしめたいんだ!だから目立つ所で踊る!」
こうしてフロアのど真ん中で踊り出した。
「エミリア…俺だけを見て…」
「うん。ずっと一緒に居てね!」
「あぁ…」
楽しく踊っていると視線を感じその先を見るとケイン様が見ている。何だろう…彼の視線は体に纏わり付く感じがして寒気がする。ケイン様は美丈夫で令嬢憧れの的だけど、私はあの美しい顔の裏に得体も知れない恐ろしさを感じている。
この直感は当たっていて私の運命を変える事になるとはこの時は思わなかった。
ダンスが終わり端のソファーで果実水を飲んでいると、アルフの家の者が呼びに来た。
どうやらおじ様がアルフと私を呼んでいるらしい。アルフが顔を曇らせおじ様の元へ急ぐ。
おじ様は誰かと話をしている。誰だろう⁈
「「えっ!」」
そこにはイグラス公爵様とケイン様がいた。
『何故⁈』
思わずアルフを見上げると顔が怖い…明らかに怒っている。アルフは私の手をぎゅっと握り前を見据えたまま
「エミリア!心配しないで貴女は誰にも渡さない!」
「信じているわアルフ…」
イグラス公爵様は微笑んでいるが、明らかにおじ様に威圧的だ。そしてねちっこいケイン様の視線に晒された私は背中に冷ややかな汗か吹き出す。アルフに続き公爵様にご挨拶すると、気持ち悪いくらい公爵様に褒められる。明らかに私の機嫌を取っている。私は自覚しているが容姿は平凡で美形では無い。そのお世辞すら気持ち悪い。
「急に呼び立てて済まないね。実はうちのケインがエミリア嬢を見染めてね。婚約を望んでいるんだ。しかし仮ではあるがアルフレッド殿と婚約中と聞き、お父上であるマデライン侯爵に相談したところ、侯爵は本人の意思を尊重したいと言われたのでね…意志の確認に来てもらった訳だ」
公爵様はアルフとの婚約を解消し、ケイン様との婚約を迫った。大公爵家の権力を振り翳している。
公爵様はおじ様に侯爵が取引したい隣国の手助けする事を解消の対価として提案した。そしてアルフには隣国の公爵令嬢イザベル嬢との縁組を薦めた。イザベル様は絶世の美女として有名で求婚者が絶えないそうだ。
「イザベル嬢と縁を持てばアルフレッド殿の将来は約束され兄上が継ぐ侯爵も安泰だ。子として家の為になるのが普通でしょう。親を思うなら分かるね」
「っつ!」
明らかに解消を迫る公爵。おじ様の顔色は悪い。アルフも圧力をかけられて返答に困っている。
意を決してアルフが発言しょうとしたら背後から誰か声を掛けてきた。
「本人の意思を尊重するのでは無かったのか⁈」
「「「「「エリアス殿下!」」」」」
そこにはエリアス殿下とマルクス様がいらっしゃった。殿下は片眉を上げて公爵様に話しかける
「私にはイグラス公爵がアルフレッドに権力でエミリア嬢と婚約を解消する様に迫っている様に見えたがなぁ⁉︎私の理解力が無いのか?」
「殿下発言許可を」
「許す。公明正大な回答以外は聞く耳はないぞ」
「私は双方に良き話をしたつもりで、強要したつもりはございません」
狼狽え強要していないと言う公爵に、悪い顔をした殿下は追い討ちをかける。
「アルフレッド、エミリア嬢私が証人になろう。素直な想いを告げるといい」
「殿下ありがとうございます。解消するつもりはございません」
「恐れながら私もでございます」
殿下は拍手をして
「ならば何も変わらずだ。よかった!ゆくゆく私は王弟になり騎士団を纏める事になる。イグラス公爵とは何かと付き合いう事になるのだ、確執は持ちたくない。分かるなイグラス公爵」
「勿論でございます」
「よく知っていると思うが、陛下と王妃様は愛を重んじ信仰するテクノスも愛と時の神だ。愛を疎かにする者に加護は無い。大公爵のイグラス公が忘れているとは思いたく無い。信頼は変わりないか⁈」
「我が公爵家は忠実なマルラン王家の家臣であり、テクノスを信仰しております!」
悪い顔で微笑んだエリアス殿下は冷ややかに公爵を見ている。冷や汗をかく公爵の横で鋭い視線を殿下に送るケイン様。大丈夫⁉︎不敬になりますよ!その視線を殿下は鼻で笑い
「ケイン殿。マルラン王国は素晴らしい女性が多い、其方に合う女性は沢山いる」
「…はい」
「アカデミーでは同級生になる。よい学生生活が出来る様にしてくれ。期待しているよ」
「…はい」
アルフレッドはやっと表情を緩めた。この後イグアス公爵様とケイン様と別れて殿下と共にレジーナ達の元に移動した。待っててくれたレジーナの顔を見たら涙が出てきた。慌てたレジーナが控室に連れて行ってくれる。
殿下が気を利かせてレジーナと2人にしてくれ、レジーナに全てを話した。
「よかったねエミリア。殿下が入ってくれたから、ケイン様との話はもう無いわ」
「何故?分からないじゃない!」
すると私より貴族情勢を知っているレジーナか教えてくれた。代々王弟殿下が騎士団を取り纏めて来た。イグラス公爵家は剣や甲冑、軍馬を育て王国納めている。つまりエリアス殿下に嫌われれば、将来他の貴族にその利権が移ってしまう事になる。息子の我儘で一族を没落させる訳に行かないとい事だ。だから殿下が出てきた途端公爵の態度が軟化したのだ。
殿下に感謝しアカデミーではレジーナとの仲を応援しよと思った。落ち着き侍女に化粧を直してもらい、アルフとエリアス殿下の元へ戻り無事に⁈殿下の誕生パーティーを終えた。
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