コロシタイ・デスゲーム
「バカマサキ」
それは大嫌いなあいつに私が心の中で勝手につけた名前だ。
本名は、唯野真咲。
私はずっとこいつを殺してやりたくて仕方なかった。
どうやって殺そうか何度も考えたが、あまり良い手がずっと思い付かなかった。
だから、決意した。デスゲームを開催する事にした。
きっかけはバカマサキだったけど、どうせ罪に手を染めるなら、二人殺そうが三人殺そうが大差ない。嫌いな奴を全員殺してしまおう。自分の恨みを買ったのが運の尽きだと思って欲しい。
自分と出会わなければ良かった?
そんなことは有り得ないよ。私の恨みを買ったから復讐するんだ。別に一緒の学校に通ってようが、一緒に働いてようが、恨んでない相手の方が沢山いる。
貴方はいつだって貴方を憎む人に殺されるリスクを負っていた。でも、私ほど実行力が無かった。それだけの話。
私は実行する。それだけの話。
1匹目の標的はやはりバカマサキにしよう。こいつは許さないと決めている。他はそうだなぁ。態度次第では許そうかな。どうせ私が誰かなんてわかんないだろうし。
バカマサキの殺し方の案はぽんぽんと浮かんだ。地獄めぐりになぞらえるのもよし、針のむしろにするのもよし、どっかの有名なデスゲームのえぐいやり口を真似るのもよし。でもそうだなぁ。やっぱ人にやったことの痛みを知って欲しいよなぁ。
ーーよし、殺しにはハブを使おうーー
毒蛇を上手に扱えるよう頑張らないといけない。でも殺すためなら頑張れる。復讐だけが私の生きる動機だった。
ハブを調教してる間、既に布石は打ってある。バカマサキ、お前の死を悼む者はいない。いたとして、すぐにお前の後を追うことになる。
キーンコーンカーンコーン。チャイムの音。この音が鳴ったということは、休み時間だ。
唯野真咲はいつも通り、同じバドミントンサークルの友達に声をかけにいった。
「七瀬ちゃんー、今日一緒にご飯食べ行かないー?」
唯野は普通に声をかけたつもりだったが、七瀬からは一向に返事が来ない。何度も七瀬ちゃん、と声を掛けると急に答えが返ってきた。
「近寄らないで……、話しかけないで……、なんでのうのうと私に近付けたの?サイコパスなの?」
七瀬は自分が声を掛けると、そう言った。
その後「もう二度と話しかけないで。」とだけ言って去っていった。
悪夢でも見たんだろうか。七瀬には何かあったのかもしれない。
そう思った後、他の友人に声をかけたが、七瀬の豹変もあってか、誰も取り合ってくれない。
というか、何を話しかけても答えないのだ。誰も居ないところに声をかける訳にもいかない。
既に「うわw唯野きっもww誰も返事してないのに声を掛けてるよ」など言われている。……別に自分は何もしていないのに。
仕方ないので高校までの友達に連絡をした。しかし忙しいのか全員既読スルー。あるいは未読無視。誰も返さない。
(さすがにおかしい……?)
そう思い始めたものの、どうすることも出来ない。誰かに嵌められたかな、なんて思ったものの、本気で恨まれるような心当たりが無かったのだ。
仕方ない。今日は一日やり過ごそう。そう思って一人行動でやり過ごした。
だが次の日になっても状況は変わらない。噂か何かが流布し、むしろ悪化ならしていた。訳が分からない。
「お前、只のケバくて腹黒のブスだと思ってたけど、ケバくて腹黒のブスの犯罪者だったんだな。」
いつも教室を賑わせてる男子が吐き捨てた。
(犯罪?やった覚えないけど……。)
「友達と思ってた唯野ちゃんに裏切られて可哀想な七瀬ちゃんの為に、唯野のコラ作ってきました!体はなんと〜AV女優!」
「AV女優に謝れよ井田ぁ……。犯罪者の顔つけられて可哀想に。」
犯罪者と言う言葉の連呼。何が何だか分からない。
何が何だか分からないまま、次の日もまた次の日もその次の日も過ぎていった。
そうして私は一人になった。一人で帰っていた。ある日、帰り道で見知らぬ女性に話しかけられた。
「貴方が噂の……犯罪者さん?貴方で最後なんです。」
声に聞き覚えがあるような気もしたが、やはり知らない顔だった。嫌な予感がしたが、逃げる間もなく身体に電撃が走る。
(うわ、何これ……。)
「それでは皆さん、本日のSHOWにご参加頂きありがとうございます。司会はわたくし、Rが務めます。」
「開会の記念式典と言ってはなんですが……、まず、主犯の唯野真咲さんにはハブ毒で死んで頂きましょう!」
「なお、この殺人に関しては、加担した人に加点するシステムとなっております。貴方達の罪は死刑に及んでいる訳ではありません。死ぬに相応しいと判断されてるのはこの唯野真咲だけなのです。なので是非、ご協力の程をお願い致します!」
目が覚めるとそんな声が聞こえてきた。両手両足には手錠をしてある。目の前も目隠ししてある。
(は……?今死ぬとか言った?え?)
混乱していると、目隠しのみが剥ぎ取られる。自分の体を見る。自分はそこに飾られていたのだ。
え、う、あ、は?
戸惑っていると、観衆からの笑い声が聞こえてきた。醜態じゃん、ギャハハ、と大騒ぎされている。
イラついて声を出そうとすると、蛇が噛み付いてきた。
え、何こいつ?いや、こいつハブだ。毒蛇だ。
よく見ると周りにうようよいる。
「では唯野真咲さん、そのまま蛇毒で醜く死ぬ様を観覧されるよう頑張ってください〜!」
そう言われた瞬間、顔が真っ青になった。