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言霊呪縛

作者: 大平 泰平


「お前って気さくで面白いやつだよな。」

子供の頃に言われた友人の言葉。人見知りしない、誰にも分け隔てなく接して、よく走りまわり、ボールを蹴ったり投げたりしていた。跳び箱9段も飛べたし、逆上がりも縄跳びのはやぶさも出来た。


「あなたは、育ちがいいから俺よりも僕って言った方が合っているわ。」

こうして育ちのいい自分の一人称は僕になった。


「君は真面目な生徒だ。だから、風紀委員をお願いしたい。」

教師の言葉で風紀委員に入った。校則はもちろん、社会のルールだって僕は破ったことはない。真面目であることが僕の取り柄となった。


「ユーモア溢れる思考の持ち主だね。君のような柔軟性のある人が担当で安心したよ。」

物事を円滑に進めるために、多少は規則を緩めてもいいかもしれない。規則に縛られては、上手くいくことも上手くいかなくなる。柔軟な考えを僕は持っているのだから。


「あなたといると楽よ。あなたは細かいことを気にしないから、変に気を張らないで自由でいられる。」

人には人の個性がある。広い心で受け止めてあげないと。それが好意のある子なら尚更だ。重要なことさえ大事にすればいいんだ。過程なんて二の次さ。


「俺はお前みたいに強くない!!頼むからもうほっといてくれよ…。」

そう言って泣いてしまった友人に僕は何て声をかければ良いのか分からなかった。頑張ろう、最終的に笑えれば全て解決だから。終わり良ければ全て良しだよ。その言葉で何故、拒絶されたのか分からない僕は、彼の言うとおり強い人間だからだろうか。


「この病気は、原因がはっきりと解明されていませんが、ストレスによるものだと考えられております。特に神経質な人、几帳面な人がなりやすいと言われていますね。最近、睡眠不足や疲労がたまっていたりしませんか?」

神経質で几帳面?……。そうだ。病気になるぐらいだから、そうに違いない。僕は神経質で几帳面なのだ。


「ストレス病ってやつか?要は、甘えってことか。辛くなったら病気だからって逃げることが出来るんだろ?良かったな。弱いお前のための言い訳ができて。」

僕が弱い?甘えている?真面目で育ちが良くて、気さくで柔軟な考えを持っていて、細かいことを気にせず、神経質で几帳面で………。強いから弱い人の心が分からないはずのこの僕が…?


頭がくらくらする。動機が速くなって息がしづらい。心が苦しくなる。


僕の…私の…俺の…我の……。

本当の自分てどんな人なのだろう。

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