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異世界でニートは思ひに耽る  作者: かういん
8/9

6話

風の便り

 今、私はダリューノ大森林の入り口に来ている。


 入り口と言っても森の境に来ているだけなのだけど。


 今までの照り付けた日差しからは、一転涼しげな木陰がこの先にはある。森林独特のマイナスイオンともいうべき、癒しの空気。


「さっさとやることやって」


「わかってるよ」


 イタチもどきが、せかしてくる。


 鞄を地面に置き、中から長細い円柱形の小箱を取り出し、その箱を開き小さな棒のような魔導器を取り出す。

 

 右手で棒を持つと小さな光が私から棒に流れ込む。

 

 その棒を地面に垂直に突き立てて手を放す。


 すると、意思を持ってるかのように自立した棒が、一瞬光りパタリと倒れた。


「よし、これで一つ目は終わりっと」


「次、つぎっいこ」


 棒を小箱に丁寧に終い肩から下げた鞄に入れた。


 再び、私は歩きだす。


「しかしさぁ、何度見てもこんなんでいいのかって思うよな」


「何がだよ」


「魔法が使えないとは言え、魔導器を使って計測するだけって」


「まぁ、楽と言えば楽かな」


「なんで、転生者しかこれできないんだろうな」


「なんでって、魔導書のお前が一番よく知っているだろうが…」


「いや、俺の言っているのは、転生者が神の信託を受けてるから魔力に淀みがないとか、そういうシステム的な話じゃなく」


「なにが言いたいのか」


「ああ、ここの世界のモノだってチート使えばできるんじゃないかって話」


「そういうことか、魔導書が勝手に詮索していいのかな。禁足事項にあたらないのか」


「別に大丈夫だよ。筒抜けだし……」


「それを大丈夫と言えるのかはさておき、チートで作ったシステムをチートで破れるかって話なら破れるが正解だ。

 しかしな、このシステムはさっきも触れた神の信託が大きく影響している。

 つまりは、最初に神によって選別され、マーキングされている点にある。

 神をも凌駕できる者が現れれば別だが、そんなやつは早々出てこない。

 わかりやすく言えばマーキングされている=(イコール)個別認識票があるってことだ。

 個別認識をされるってことは、自由がない反面、システムを構築する上で非常に管理しやすく信用に繋がる」


「なるほどな。俺たちここのモノは、マネたりコピーし放題だけど。神の個別認識票は容易にパクったりできないってことか」


「そういうこと」


「まぁ知ってたけどな」


「じゃなんで聞いたんだよ……」


「その辺飛んでいる風の妖精が暇かと思ってさ」


「……。まぁそういうことにしといてやるよ」


 小川にかけられた小さな石橋の上を通りかかり、そよ風が楽し気に吹いている気がした。

 私は知っているあの勇者は、神のマーキングだけを信用しこんなシステムを構築していないことを。


 次の目的地では、その一端を垣間見ることになるであろうことも。

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