4話
闇の支配者
夕刻が近づくと、親たちはそそくさと出かけていく。
近くに住む兄弟夫婦の子、幼い孫を学院へ迎えに行くためである。
私が子供だった頃は、魔物などはおらず平和そのものだったが、最近は魔王の噂が出る程度に雲行きがあやしい。
魔物も時々発生したとの話も出るくらいだ。とはいえ、年に1度あるかないかの出来事。
それでも平和を百年近くも謳歌した人々は、不安を募らせる。
「また、無茶な召喚が繰り返されるのか。早々に当たりが出ればいいが…」
ぽつりと古びた城に取り残された私が独りつぶやく。
出来事と言えば、金ニートを紐解くにあたって、避けては通れない出来事がある。
超当たり召喚であるロスなんちゃら勇者降臨。
彼は、この現況である金ニート制ともいうべき体制を構築した張本人だ。先刻語ったように異世界市場経済は、目も当てられない無茶苦茶なものであった。
民たちは、市場の乱高下により疲弊した。召喚廃絶を謳う国家まで樹立されたくらいに……。
まぁそんなものは、建前ばかりでほとんどの国は守りもしないのだが、そのロス勇者は、外れ転生者・外れ転移者の存在にいち早く気づいた。
それまでの外れ転生者らの扱いと言えば、奇人罪人レベルだった。当然だろう、力もないのに口ばかりがうるさいのだから。
彼は、そうした無価値のものに目を付けた。
彼曰く理由はこうだ。
転生者というのは、五体満足長寿が基本的には保証されている。
一部には、半端で無理な召喚を強行して短命であるものもいるともいわれているが、通常はそんな下手な召喚はされない。
なぜなら、神が関与しているからである。転生させる者を短命で死なせていては、労力だけが無駄になるからである。
それと健康と金となんの関係がと疑問に感じる方もいるだろう。そこは、この超当たり勇者の頭脳である。
現代社会を思い返してほしい。
紙幣通貨とは、どのくらいのサイクルで刷られているかもしくは新調されているかである。
そう、コストの問題である。
時は金なり
ロスなんちゃら家が超当たり勇者なんて異世界でもエリート……。
と思われるかも知れないが、異世界にも現代文化持ち込めるなら当然の帰結。
こちとらニートはニートらしく明日から本気出す!
ということで、次回はやっと部屋から出ます…たぶん