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第四章 ~『猫団とダンジョン探索』~


 アークライズ率いる【灰色の猫団】の団員たちは、ハンスから紹介された未探索ダンジョンを訪れていた。そのダンジョンは荒れた岩地に位置し、岩陰に隠れる洞窟こそダンジョンの入口だった。


「アーク様、この洞窟がこれから挑むダンジョンなんですね……強い魔物が出ないとよいのですが……」

「それについては金融魔導士の鑑定の力で調べてある。ダンジョンに出現する魔物の力はCランク相当だそうだ。主にゴーレム系の魔物が出現するから、名付けるなら【土人形のダンジョン】だな」

「Cランクですか……なら楽勝ですね」

「いいや、油断はできないさ。鑑定の力で調査できるのは出現する魔物の力や種別だけで、ダンジョンを統べるボスの実力や、道中のトラップの危険度なんかは推し量ることができないからな」


 ダンジョンランクで甘く見てしまい、油断が命を散らせた例は数えきれないほどある。【灰色の猫団】の団員たちは気を引き締めて、洞窟の中を進む。


 アークライズたちは土壁に挟まれた通路を進む。ダンジョンは階層構造になっており、ダンジョンボスは最下層に住んでいる。そのため下の階に進むための階段を見つける必要があった。


「アーク様、魔物の気配がします」

「だな」

「二人とも、どうして魔物がいることが分かるんですか?」


 マイアは魔物の気配どころか、通路を進んだ先に何かいることさえ気づいていなかった。


「私はエルフですから。空気の乱れなどから周囲の状況を把握することができます」

「俺は金融魔導士の銀行員だ。顧客の経営指南を行うために将来の危機に対する察知能力が求められる。そのための【危険予知】の魔法を使うことができるんだ」

「二人とも凄い力をお持ちですね……私なんかが役に立てるかどうか……」

「立てるさ。それを証明する機会はもうすぐ訪れる」


 アークライズの宣言通り、通路を進んだ先には人間より二回り大きい土人形が待ち構えていた。ゆったりとした動きで近づいてくる。


「アークくん、この魔物は……」

「低級ゴーレムだな。Cランク相当の魔物だからマイアでも十分倒しきれるはずだ」

「な、なら……」


 マイアは腰から剣を抜くと、仲間たちを守るように一歩前へ出る。白銀の剣に敵である低級ゴーレムの姿が映し出される。


「いきます!」


 マイアは低級ゴーレムに剣を振り下ろす。しかし岩のように固い外皮に阻まれ、剣は魔物へと届かない。


「アークくん、やはり私の実力では勝てません」

「諦めるのはまだ早い。マイアはまだ本気を出してないだろ?」

「十分、本気ですよ」

「いいや、まださ。その剣にはサラの魔法回路を組み込んであるんだろ?」

「あ、そうでした」


 マイアは剣に魔力を通し、魔法回路の効力を発動する。白銀の剣が魔力の膜に覆われて、切れ味を増していく。


「てやああああっ」


 マイアは叫びながら低級ゴーレムに剣を振り下ろす。固い外皮ごと剣が切り裂き、魔物は二つに分かれた。


「アークくん、やりましたよ!」

「よくやったな」


 マイアは低級ゴーレムを討伐した成果を噛みしめるように笑みを浮かべる。


「それにしても凄い喜びようだな。魔物を初めて討伐した訳でもないだろ」

「魔物を倒したのは初めてではないですが、Cランクの魔物を討伐したのは初めてなんです」

「あれ? 【灰色の猫団】はCランクの冒険団だろ?」

「それは魔道具の開発による貢献が認められて昇格したんです」


 冒険団の評価は社会に対してどれだけの貢献をしたかと、どれだけの実力を有しているかの二軸で決定する。【灰色の猫団】はDランクダンジョンを踏破できる実力と、魔道具開発での社会貢献度でCランクに昇格したのだ。


「ならこれを見るのも初めてか」


 アークライズは低級ゴーレムのなれの果てから翡翠色の宝石を拾い上げる。その宝石をサラとマイアは興味深げに見つめるのだった。



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