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第三章 ~『アークライズの加入』~


 価値の高い魔道具の権利を残し、価値の低い権利だけをクラウディアに売却したと聞かされたマイアとサラはアークライズに頭を下げる。


「アークさん、私たちのためにありがとうございました」

「私からも感謝します」

「気にするな。俺が助けたくてしたことだからな」

「でも私の気が済みません」

「そうですよ。アークくんは私たちの恩人なんですから」

「ならリバ銀行は魔人にも優しい素晴らしい銀行だと広めてくれ」

「そんなことでいいんですか?」

「俺はそれだけで満足だ」

「分かりました。私の仲間たちにアークさんの経営する銀行が素晴らしいと宣伝しておきます」

「助かる」


 マイアとサラの二人が宣伝しても広めることのできる人数は限られている。しかし人は信頼する友人から口コミで与えられた情報は、チラシなどの宣伝により与えられた情報よりも深く信用する。確実な顧客になることが見込める宣伝は、リバ銀行にとって大きな助け舟となる。


「アークくん、もしよければこれからも私たちのお手伝いをしてくれませんか?」

「それは領主としてか? それとも銀行員としてか?」

「銀行員としてです。私はアークくんと一緒に仕事がしたいんです」

「なるほど……リバ銀行が【灰色の猫団】のメインバンクになれば可能だな。だが本当にいいのか? 資金力を得た【灰色の猫団】なら他の大手銀行も取引してくれると思うぞ」

「いいんです。私たちはアークくんを信じていますから」

「それは光栄だな。だがマイアたちは十分なお金を得ただろ。俺の出番があるかどうか……」

「いいえ、私たちにはまだまだお金が必要です。だからアークくんに助けて欲しいんです」

「それはつまり融資をして欲しいと?」

「いえ、お金を貸して欲しい訳じゃありません。アークくんにお願いしたいのは、残った魔道具権利の売却委託です」


 銀行の仕事の一つに、顧客の資産管理というものがある。これは土地や不動産などの資産の売却を仲介するというものだ。


 顧客としては信頼できる銀行に売り先を探してもらえるし、銀行としては仲介手数料で利益を得ることができる。互いにとってメリットのある商取引だった。


「売却したいというが、本当にいいのか? クラウディアに売った権利と違い、残っているのは金になる権利だけだぞ」

「本音を言うと売りたくはないです……でも目的を果たすためには大金が必要になります。そこでサラちゃんと相談して、売却を決意しました」

「苦渋の決断ってことか……目的を聞いてもいいか?」

「身の程知らずかもしれませんが、私たちはBランクダンジョンに挑戦したいのです」


 Bランクは中堅クラスの冒険団が攻略可能なダンジョンだ。【灰色の猫団】はCランクに位置しており、彼女らには荷が重い挑戦である。しかしアークライズはその願いを否定するようなことはしなかった。


「実力を超えるBランクダンジョンに挑むのは何か理由があるんだろ。聞かせてくれないか?」

「Bランクダンジョンは通過点に過ぎません。私たちが成し遂げたいのはAランクの冒険団になることなんです」

「Aランクとは大きく出たな」


 Aランクの冒険団は国内でも数えるほどしかいない精鋭たちである。Cランクの【灰色の猫団】では雲の上の存在だった。


「なぜAランクになりたいんだ?」

「私たちは海外ダンジョンへの挑戦権が欲しいのです」

「海外か……まさか帝国のダンジョンか?」

「はい。しかも帝国ダンジョンの中で最難関と評されている【天空のダンジョン】に挑みたいのです……そして行方不明になったサラちゃんのお兄さんを見つけ出したいのです……」

「行方不明になった家族を救い出すか……【天空のダンジョン】で行方不明になるくらいだ。サラの兄は高名な冒険者だったんだろうな」

「はい。サラちゃんの自慢のお兄さんでした」


 【天空のダンジョン】は【黄金の獅子団】でさえ攻略したことのない難攻不落の迷宮だ。いまの【灰色の猫団】では一階層を踏破することさえ叶わない。


「資金はどう使うつもりだ?」

「まずは仲間を増やします。それから装備やアイテムも揃えないと……」

「仲間か……その仲間は俺でもいいのか?」

「も、もちろん! でもいいんですか!? 私たち弱小冒険団ですよ」

「いいさ。それに冒険団を成長させるのは銀行員の務めだからな」

「やりましたよ、サラちゃん。アークくんが力を貸してくれるなら百人力です」

「やりましたね、マイアさん!」


 マイアとサラはアークライズの加入に喜び合う。彼はそんな彼女たちの様子を微笑まし気に見つめるのだった。



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