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第三章 ~『灰色の猫団』~


 アークライズはクラウディアから脅されているという話を詳しく聞くためにマイアの所属する【灰色の猫団】の拠点へと向かう。


 【灰色の猫団】の拠点はリバ銀行からそう遠くない位置に存在した。大通りから外れた建物は、煉瓦造りによって観光地らしい景観が保たれていた。


「ようこそ、私たち【灰色の猫団】のアジトへ」


 マイアが扉を開いて、アークライズを招き入れる。狭い空間に椅子や机などの最低限の家具が並べられている。


「そこにいるのはもしかして……」

「アークさん!」

「やっぱりサラか」


 金髪のメイド服を着た少女、サラがそこにはいた。二人が知り合いだと知り、マイアは驚きの表情を浮かべる。


「お二人は知り合いなのですか?」

「俺はサラの雇い主だ」

「もしかしてメルシアナ家の……」

「御曹司だ」

「……これは驚きました。まさかアークくんみたいな人が、貴族の子息だったなんて」

「みたいなってどういう意味だよ」

「それはその……アークくんの口調から気品を感じなかったので……」


 マイアは誤魔化すようにヘラヘラと笑う。アークライズは怒っても仕方ないと、ふぅと息を吐く。


「マイアさんはどうしてアークさんと一緒にいるんですか?」

「実は……また【黄金の獅子団】に襲われたの。そこをアークくんに助けられたの」

「そうだったんですね……アークさん、本当にありがとうございます。家族のいない私にとってマイアさんは、姉のような存在なんです。だから、何かあったら、私……」

「本当、サラちゃんは良い娘だねぇ」


 マイアがサラをギュッと抱きしめる。抱き着かれたサラも満更ではないのか、嬉しそうに頬を赤らめていた。


「アークくん、聞いてください。サラちゃんは天才魔法使いなんですよ」

「や、やめてよ」

「ううん。やめない。サラちゃんがいないと、【灰色の猫団】は成立してないもの。もっと自慢しないとね」

「マイアさん……」

「だから私、サラちゃんのためにも頑張って、【灰色の猫団】を運営してみせるから。そして辞めたメンバーたちを全員引き戻してみせるの」


 マイアは必ず成し遂げて見せると拳を握りこむ。その様子をサラは微笑まし気に見つめていた。


「なぁ、一つ聞いていいか?」

「アークくんは恩人だもん。なんでも聞いてよ」

「他のメンバーが逃げたのは何か理由があるのか?」

「……私の実力不足が原因かな」

「マイアさんのせいじゃないよ! 他のメンバーが去ったのは【黄金の獅子団】の嫌がらせが原因だよ」

「嫌がらせか……どんなことをされたんだ?」

「【灰色の猫団】の悪い噂を流されたり、強面の人たちに脅されたりですね……アークさんと初めて出会った武器屋を覚えていますか?」

「ああ。もちろんだ」

「あの店も昔は私たちに良くしてくれたんです。それが【黄金の獅子団】の妨害で変わってしまったんです」

「聞けば聞くほどに【黄金の獅子団】は酷い組織のようだな……だが不思議だ。エルリアやリゼロッタがいれば、止めそうなのだがな……」

「水の勇者様と風の勇者様なら、【黄金の獅子団】を去られたそうですよ。いまは炎の勇者クラウディアさんを絶対的な頂点とした冒険団です」

「あの二人が追放されたのか……信じがたいことだな」


 クラウディアは魔人嫌いだが、人間の実力者は優遇する。二人は人間であり、どちらも勇者になれるほどの実力者だ。追放されるとは到底思えなかった。


「いえ、追放ではなく、自分から辞めたそうですよ」

「そうなのか……なら今はクラウディア一人なのか?」

「いいえ。クラウディアさん以外にも大勢います……ただそのほとんどが冒険団を追放された問題児ばかりで……人間性に問題があっても、実力さえあれば、来るもの拒まずとの方針だそうです」

「クラウディアも必死なのかもな……それにあいつは嫌がらせを躊躇わない……自分の利益のためなら平気で人を傷つけられる奴だからな」


 クラウディアは罪のないアークライズを追放して、時間停滞空間に閉じ込めるような女である。彼女なら自分が当主になるためにどんな汚い手段を使ったとしても不思議ではない。


「アークさんはクラウディアさんと知り合いなんですか?」

「姉だ」

「あ、姉!? でも冷静に考えれば、同じメルシアナ家ですもんね」

「だが姉だとしても安心していい。俺は奴が嫌いだからな……ただもし俺のことを信頼できないなら遠慮なく言ってくれ」


 アークライズはマイアとサラの二人に視線を配ると、彼女たちは迷いなく首を横に振る。


「アークくんが私を傷つけたいなら、助ける必要なんてなかったもの。だから私は信じる」

「私もマイアさんと同じ気持ちです。アークさんは信じられる人です」

「お前たちは良い奴だな」


 アークライズは初めて会った【灰色の猫団】をなぜだか応援したい気持ちになっていた。二人のために戦うと彼は心に決めるのだった。



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