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復讐鬼の恋物語  作者: 四守 蓮
忘恩の商人
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下克上の序章

今までで一番文字数少ないかもしれません……

 ワデシャを下し、セーゲルの兵士たちをティキに掌握してもらったシーヌは、ワデシャたちより半日遅れて、深夜にシトライアに入った。

 丁度ティキとセーゲル代表が謁見を始めた頃に、彼は城の壁を飛び越えた。


 そのままつかつかと冒険者組合支部に向けて歩を進める。今から、二週間前後。それが、彼が“黒鉄の天使”たちに使うつもりの、復讐の時間だ。

「失礼します。」

扉を開ける。シトライアの冒険者組合支部は、暗い雰囲気のする所だと聞いていた。

「おぉ!新人!」

簡単な自己紹介ののち、すぐさまシーヌは歓迎される。

 試験で合格して冒険者組合員になり、5年以上生きているのは珍しい。それがゆえに、古参や老齢の冒険者組合員は新人を歓迎する傾向があった。


 シーヌもそんな慣例、もとい、死ぬ前の同情に当てられて大歓迎されたのだ。

「ケイ=アルスタンとアグラン=ヴェノール、そてアグラン配下の四翼についての情報の資料はどこにある?」

その大歓迎もそこそこに、シーヌはさっさと本題に入った。そんな威勢のいい新人に、そこにいた四人が大声で笑い声をあげる。


 その笑いはさながら、子供の無茶を見て楽しむ大人のそれだ。シーヌはそんな反応を重々承知した上で言ったので、気にせず無表情で手を突き出した。

「冒険者組合試験で合格したからって、早々に力試しか?やめとけ、死ぬぞ。」

真面目な大人の顔をして、冒険者の男が言う。

「構いません。力試しではなく、あれらを殺すために僕はここに来ました。」

ここ、とはシトライアを指しているわけではないとは彼らもわかった。冒険者組合員だということが、とてもとても簡単に。


 男たちは少しだけ呻いた。今年の新人は、子供が多いということは聞いていたし、実際彼らの目の前に立っているのは16の子供である。

 そんな子供に、死ににいく情報を渡すということは、いくら外法の者でも躊躇するようなことだった。


「やめておけよ、青年。どっからどう見てもお前、俺にも勝てねぇ。それじゃゴーサインを出すような真似は出来ねぇよ。」

さっきまで歓迎の雰囲気を醸し出していた男たちが、今度は拒絶するかのようにシーヌに迫る。しかし、彼はそれを無視して話を進めた。

「冒険者組合員になった時点で、自己責任は付き従ってます。死んで当然の道を歩むと決めています。」

シーヌは今さら心配されても、と思う。ティキからの心配は、ようやく多少受け入れるようになってきたころなのだ。他人からの忠告を彼が素直に受け入れるわけがなかった。


「あなた方には確かに負けるかもしれません。ですが、ケイ=アルスタンには負けられない。」

言いきる。もうキャッツ=ネメシア=セーゲルはいない。シーヌはたまたま偶然蘇生できる何てことはあり得ない。


 だが、復讐は果たさなければならない。シーヌはそのために今日まで生きてきて、今日からも生きていくのだ。

 復讐をやめた人生など、シーヌには考えられない。そんな生き方は、もうシーヌがするには遅すぎる。

 その瞳をじっと眺めて、そこにいた四人の冒険者組合員のリーダー格っぽい男がため息を吐いた。


 呆れた。仕方がない。そんな感じのため息だと、他の男たちは感じた。

「いいぜ、貸してやる。ただし、シトライアにいる間は俺がお前に付く。それが条件だ。」

「僕につくのは構いませんけど、獲物を先に殺すのは無しです。僕の邪魔をしないでください。……あと、僕より妻を優先していただけますか?」

「待て、妻だと?」

「ちょっ、兄さん、受け入れるのか?」

リーダー格とその弟らしい弟が同時に声をあげる。リーダー格はシーヌの台詞に、弟はリーダー格の決断に、それぞれ驚いていた。


「……ええ、妻がいます。ティキ=アツーア=ブラウ。冒険者組合の一員です。」

男は、じっとシーヌを見つめた。

「ジェル。この男、限定最強だ。」

唐突に口を開いて言った言葉に、ジェルと呼ばれた弟が目を見開く。

「この歳で限定最強とは……いや、限定最強でよかったというべきか……」

シーヌにもかろうじて聞こえる程度の声音で言う。シーヌはどうでもいいかな、と無視を決め込んだ。

「1つだけ、言え。出身は、どこだ。」

「クロウ。『歯止めなき暴虐事件』の生き残りだ。」

シトライアに滞在中していた冒険者組合員、“雷鳴の大鷲”グレゴリー=ドストとシーヌ=ヒンメル=ブラウ。

 シトライアにおける、シーヌの復讐の物語は、これが始まりだったと後世では伝えられている。

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