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復讐鬼の恋物語  作者: 四守 蓮
恋慕の女帝
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残る将たちのその後

 リュット学園で、ティキと交流のあった3人娘。

 エル=ミリーナ・サチリア伯爵令嬢。ミラ=ククル・ケルシュトイル公女。そして、フェル=アデクト・デコルテ伯爵令嬢。

 その中でも、エルは非常に忙しい日々を過ごしている。そして、ミラは非常に激動の強い世界に入っている。


 しかし、フェルは、随分と退屈な日々を過ごしていた。


 ケムニス王国において、デコルテ伯爵家は現在、丞相の地位に就いている。相当強い権力を、その小さすぎる国の中で担っている。

 神山を巡る戦争を終え、ブランディカへとケムニスが攻め込んだ結果、領土はかなり広くなった。それ自体は、ケムニスにとって最高の結果を叩き出したと言えるだろう。

 結果として、貴族間のパワーバランスをとるためにも、デコルテ伯爵家は要職……新たな領地の代官、といった要職に、身内を就かせるわけにはいかなくなっていた。

「退屈ですわ?」

掌に水を呼び出し、それをうねうねと形を変えて弄びながら、フェルは自らの境遇に涙する。何をしていいかわからない、何もするようなことがない。


 ゴロゴロと自室のベッドで寝転がる。社交界に出ようにも、戦争で功績を挙げすぎたフェルは、少し動くだけで雁字搦めに拘束されかねない危険性を持っている。

 それをやったのがエルで、フェルは賢明にも、そうならないよう何も動かないように意識していた。

「そろそろいいでしょうか?」

新領地の統治は順調と聞く。重装兵から得た鉄は、ケムニスの不足しがちな武具事情を大きく変えた。

「私は……いえ、魔法はあまり教えるべきではないですね。」

魔法を使える兵士を、冒険者組合員は毛嫌いする。稀に、一万の軍全員に魔法を使えるよう教育した国が、2~3人の冒険者組合員に国ごと焼きつくされたという話すら聞くことがあるのだ。


 ティキと敵対したくはない。国がこれからという時に、国を滅ぼされたくもない。

 しかし、国への忠誠心が全くないのも、フェルの内心であった。

「ミラもエルも会えそうにないし……。」

山を挟んだ反対側にある国に、エルもミラも住んでいる。

「あ、そうだ。国を出よう。」

彼女は、国のためには戦えないし、働けない。そんな性格なのは、彼女が最もよくわかっている。


 しかし、彼女は友のためならば戦える。それは彼女の欠点であり、また美徳である。

「向こうと会えそうにないなら、私が会いに行けばいいんです!」

退屈を紛らわせるため、国を混乱させないため……ケムニスの英雄は、ケルシュトイル公国へ亡命することを、決めた。



 アレイ兄弟は既に別の国の臣下として分離した。彼らは、国王が望む通り、令嬢と恋愛契約を結ぶことが出来なかった。

 そもそもやる気がなかったのだから仕方がない。アレイ兄弟は、そもそも別の目的がある。


 ニアスの将、ブラス。クティックの将、アルゴス。この二人の目的は、アルゴスを王とする新たな国家を生み出すことだ。

「ご苦労だった、アルゴス=アレイ。」

「恐悦至極に存じます。」

会話は、王とアルゴスの間ではほとんどない。王はアルゴスを心の底から信頼しており、アルゴスは王を踏み台としてしか見ていない。

 双方の意識は完全にすれ違っていたが、すれ違っていない人物も実はいた。


「褒章を、遣わそう。」

「ハッ。」

「我が娘を、貴様に降嫁させる。我が国を、今後とも支えよ。」

「承知、いたしました。」

そうして、アルゴスと、国王の娘は対面し、アイコンタクトを取って……。


 玉座に血が舞った。国王の娘、アメリアが国王の首を切り裂いた。

「クティック王は崩御された!」

アルゴスは声を盛大にして叫ぶ。

「これより、王から娘を下賜された俺が、この国の王として君臨する!文句があるものは歯向かうがいい!!」

この国で、最も実績があり、最も力を持ち、王の血を身内に持つ男。弱肉強食という言葉が存在しないほど臆病なこの国の貴族たち。


 神獣たちはこの国から闘争心を奪った。この国を発展させたいと願っていたのは、存続させ、世界に覇を唱えられるようにしようとしていたのは、国王とアルゴスのみ。

 実にあっさり、実にあっさりと。

 クティックは、アルゴスの手に墜ちた。クティックはその直前に、アルゴス自身の手によってアストラストへの進軍も終えている。

「あとは、弟を待てばいい。」

アルゴスはそう呟くと、玉座に背を預けた。


 Twitter使うの面倒になってきたので、後書きで捕捉説明します。

 この話に関しては、「フェルがケルシュトイルへ行った」こと、「アレイ兄弟が自分達の国(アレクシャール双王国)を持った」ことさえわかっていればオッケーです。


 国についてですが、七ヶ国連合は同盟時点で、沖縄本島くらいの大きさだと思ってください。ちょっと大きいかな?対して三大国ですが、これは関東地方分の大きさです。とうてい大国とは言えませんが、日本の戦国時代ならそれだけ個人の勢力なら十分覇王でしたよね?そんな感じです。


 『神の住み給う山』はもっと狭いですが、七国よりはるかに大きいです。そうですね、長野県全域が一つの山、そんな感じです。


 ちなみに、山にも国境が引かれ(ほぼ)七等分されました。じつは占領しに行った領土よりそちらの方が広いですが、開発は困難ですからしばらく資源地扱いでしょう。


 たまにこうして蛇足が書けたら、と思います。次は本番、ケルシュトイル公国に入ります。

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