表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/181

第97話 地下通路


「ぐぐっ、くっ、臭い!」

「ぴ、ぴぴぃ!」


 かなりな距離、地下通路を歩いた俺たちは、下水道だと思われる空間に出た。

 

「早くしなさいよ!

 臭いくらい、我慢できないの!」


 ミリネはそう言うが、玉ねぎが腐ったような臭いは、鼻をつまんでも消えなかった。

 三メートルほどある通路の中央を、得体の知れないモノが浮かんだ水が流れている。

 ただ、出口が近いのか、悪臭が薄まってきたように感じられた。

 ミリネが持つ灯りの魔道具に照らされた通路の向こうに、開口部が見えた。


「やった!

 外に出られる!」


 通路の端まで足早に進んだが、そこはドーム状の空間となっていた。

 ミリネが灯りの魔道具を高く掲げるが、広すぎて向こう端まで照らしきれない。

 その中央には池のようなものがあり、周囲から下水が流れ込んでいるようだった。

 俺たちが出てきた下水道以外にも、いくつか開口部が見える。

 池の周囲にある通路を回り込む。

 ミリネは手にした地図を見ながら進んでいた。


 ポチャン


 水音がする。

 

 ポチャン

 ポチャン


 どうやら、池の中に何かいるらしい。

 

 ポチャン

 ポチャン

 ポチャン


「この通路よ!」


 ある開口部の前でミリネがそう言った時、池の中央あたりの水面がぐぐっと膨れあがった。


 バシャーッ


 波が通路を洗い、膝の辺りまで濡れてしまった。

 ミリネの手にした魔道具が池の方へ向けられる。

 照らしだされたのは、巨大な何かだった。

 光沢のあるその表面が波うっている。


「もしかして、スライム!?」


 ミリネはそう言ったが、スライムにしては、いくらなんでもでっか過ぎるだろ。

 高さが学校の体育館くらいあるぞ。


 そして、その巨大な何かはブルブル震えたかと思うと、少しずつ動きだした。

 まっ直ぐこちらへ向かってくる。


「グレン!

 早くこの通路に入って!」


 ミリネが下水道の一つに駆けこむ。

 俺もすぐ後を追った。

 二人とも駆け足でしばらく進み、やっと一息つく。

 

「ここまでくれば、もう大丈夫だろう」


 俺もミリネも膝に手をつき、息を整える。


「ぴぴぃっ!」


 何かを警戒するように、ピュウが鳴き声を立てた。


 キュキュキュッ


 背後からそんな音が聞こえてきて、思わず振りかえる。

 ミリネが突きだした魔道具に照らされたのは、光沢がある壁面だった。

 それが、ゆっくりこちらに近づいてくる。


「スライム?

 入ってきたの!?」


「ミリネ!

 逃げるよ!」


 ミリネの手を取り、走りだす。

 しかし、運は俺たちを見捨てたようだ。


「行きどまり!?」


 ミリネが悲鳴のような声を上げる。

 彼女が掲げた灯りの魔道具によって、ここが下から上に伸びる円筒形の空間だと分かる。

 つまり、逃げ道は上しかない。

 しかし、壁はつるりとしており、手が掛けられるような出っぱりは見つからなかった。


 スライムは、すぐそこまで来ている。 

 一か八か、やってみるしかない。


「ミリネ!

 俺の後ろに!」


 ミリネの息遣いが背後に回ると、俺は迫りくる「壁」へ手を伸ばす。


「ぶっ飛べ!」


 言った瞬間、自分が左手を右腕に添えていたと気づいた。

 思わず、中二病的ポーズを取ってしまったのだ。

 これって、まずいよね?




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ