第81話 新装備?
プーキーから渡された黒い塊は、やけに軽かった。
彼女は先ほど持ってきた赤い箱の蓋を閉じると、その上をトントンと叩いた。
そこに置けってこと?
渡されたものを置くと、プーキーがその端を伸ばし始めた。
どうやらそれは、五センチほど幅がある包帯のような布の帯らしい。
ある程度伸ばしたとこで、銀色の魔法陣が現われた。
「カッケー!」
「そうだろう、そうだろう!
これは、私の最高傑作だ!」
いや、最高傑作って、いくつあるんだよ!
それに、その布、その辺の隙間に押し込んであったよね?
だけど……。
「うーん、この魔法陣、いい仕事してますねえ!」
「分かるかい!
そうだろう、君なら分かると思ったんだ!
これは、私の最高傑作(以下略)」
「ええと、これ、いくらです?」
「これなら、銀貨五……いや、十枚でいいよ」
銀貨十枚、十万円かあ。
幸い、先日、『剣と杖』と一緒に達成した、フォレストボア討伐の報酬で、金貨一枚をもらっている。
銀貨十枚は、払えない金額ではない。
だけど……。
「もうちょっと、負けてもらえませんか?
それにさっき、銀貨五枚って言いかけましたよね」
「くう、き、君は、私の『娘』を値切るのか?」
「いや、いつ包帯があなたの『娘』になったんです?」
「しくしく、すまない。
この人が、お前は銀貨五枚の価値しかないって言うんだよ」
プーキーは、いかにもわざとらしく、包帯に語りかける。
「いや、包帯と話さないでくださいよ!」
「我が子をたった銀貨五枚で売り渡すなど、母の私には到底――」
「分かりました!
分かりましたよ!
銀貨十枚払えばいいんでしょ!
はい、金貨一枚です。
お釣りください」
「おお、『娘』よ、お前を金貨一枚で買うという奇特な方が――」
「銀貨十枚!
びた一文、余計に払いませんからね!」
「ちっ、まあいいか(元はタダみたいなもんだし)」
今、聞こえてはならない声が聞こえましたけど?
「はい、これ、おつり。
毎度あり~」
なんか、今回も騙されてる気がする。
「ぴゅう!」
ピュウもそう思ってるみたい。
◇
ルシル校長から借りた家に戻ると、荷物をソファーに投げだし、さっそく買ってきた黒い包帯を布袋から出す。
テーブルの上に広げたそれは、銀で描かれた魔法陣が美しい。
何度か失敗したが、やっと右手にそれを巻き終える。
銀色の魔法陣が右手の甲に来るようするのが、大変だったのだ。
黒い包帯は、右肘の少し上まで覆っている。
「こりゃ、いい買い物だったな!」
そう漏らした途端、その包帯が一瞬赤く光り、そこから黒い煙のようなものが、ぶわりと溢れ出した。
「な、なにこれ!?」
少しすると、黒い煙はおさまったが、やはりモヤモヤした黒い何かが、右腕にまといついている。
振っても取れないそれは、手からじんわり湧きだしているように見える。
「これはこれで、ちょっとカッコイイな!」
そうだ!
これ着けた状態でスキルをチェックしたら、何か分かるかもしれない。




