表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/181

第76話 フォレストボア討伐(5)

 横並びに襲い掛かってきた、三匹のフォレストボアを前にしても、『剣と盾』の四人は落ち着いたものだった。


 中央のボアに魔術が命中し、そこから輪が広がる。

 フォレストボアの動きが急に遅くなった。

 左端のボアの頭を矢が射抜く。

 中央のヤツは、コウチャンが剣で袈裟懸けする。

 右端は、ヒモのようなものが前足に絡みつき、地面に突っ込んだ。


「油断するな!

 まだ終わってないぞ!」


 ぼうっと見ていた俺の意識が、コウチャンの声ではっきりする。

 フォレストボアとの戦いは、長い間続いた。


 ◇


「はあ、はあ、いってえ、何匹いたんだ、この群れはよ!」


 戦闘が終わり、地面に座りこんだ山賊トカレがぼやいている。

 フォレストボアは、倒れては現れを繰り返し、十回近く押しよせた。

 これも近くに座っている、魔術師メイリーン、弓師ラズナの二人は、青い顔をしている。

 倒れたボアにとどめを刺していたコウチャンが返ってくる。

 彼は立ちどまると、腰のポーチからポーションのビンを取り出し、それを口に咥えた。

 ずっと前衛でフォレストボアを凌いだ彼は、革鎧のあちこちに傷が残っていた。


 戦闘は四人任せで何もしなかった俺は、水で湿らせた布を配って回った。

 

「おっ、こりゃあいいな!

 お前、気が利くなあ!」


 山賊トカレが濡れた布で顔を拭きながら、そんなことを言う。

 気が利くなんて、生まれて初めて言われたんじゃないかな。

 

「キモチイー!」

「生き返るわねえ」


 日本のおしぼり文化は ラズナとメイリーンにも、気に入ってもらえたようだ。

 

「お前、冒険者より商売の方が向いてんじゃないか?」


 最後におしぼりを渡されたコウチャンが、白い歯を見せてそう言った。

 

「さあ、素材を回収したら、撤収するぞ」


「リーダー、もうちょっだけ待ってよ。

 もう、ヘトヘトなの」


 ランクが一つ低いせいか、後衛なのにラズナが一番へばっているようだ。


「グズグズはできんぞ。

 もう日が暮れる。

 暗くなる前に、森を抜けなきゃならんからな」


「ええー……げっ!」


 ラズナの不満は、途中から驚きに、いや、絶望に変わった。

 その訳は――。


「また、来たぞ!

 ……なんだ、ありゃ!」


 山賊トカレの声と共に、夕方の気配が漂い始めた森の中から、巨大な体躯が姿を現す。

 それは、テラコスからクレタンへ行く途中、ミリネと俺が襲われたのと同じくらい大きなフォレストボアだった。


「なっ、なんなのあれはっ!」


 ラズナは、声が恐怖でひきつっている。

 

「特殊個体ね」


 杖を手に立ち上がったメイリーンは、落ち着いている。


「くそう、一匹じゃねえのか!」


 トカレが、うめくように言う。

 巨大なフォレストボアは、三頭もいた。


「こりゃ、撤退だな」


 コウチャンは、冷静な声でそう言った。


「あのう、いいですか?」

 

 俺はある提案をすることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ