表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/181

第75話 フォレストボア討伐(4)


 食事が終わると、俺たちは、森の奥へ分け入った。

 小型の魔獣がちらほら姿を現す。

 それを全て無視して、パーティは進んでいった。


 陽が傾きかけた頃、先頭を歩く山賊トカレがそれを見つけた。


「グレン、ちょっと来てみろ」


 彼が指さす木は、俺の腰くらいの高さのところに傷があり、白い木肌が見えていた。


「いいか、フォレストボアは、ヤツラが牙でつける傷の位置で大きさが分かるんだ。

 こいつはまだ若いヤツだな」


 なるほど、冒険者として学ぶことがたくさんありそうだ。


「そういやあ、お前、フォレストボア倒したって言ってたが、どのくらいの大きさだったんだ」


「俺が倒したかどうか、はっきりしないんですが、俺の背より遥かに大きかったですよ」


「おいおい、そりゃ、成体だな。

 よく生きてたもんだ。

 フォレストボアの成体は、俺たちでも一対一で戦うとしんどいぞ。

 パーティなら、なんということはないがな」


 へえ、あのでっかい猪を楽勝で倒せるのか。さすが一流パーティだな。


「あっ、ここにも印があるよ!」


 弓師のラズナが、新しい傷を見つける。


「おい、こりゃあ、さっきのヤツとは違う個体だぜ」


 山賊トカレは、木につけられた傷から、そんなことまで分かるらしい。


「トカレ、こっちに来てくれ!」


 コウチャンの声に緊張が感じられる。

 彼は大木のずいぶん高い位置につけられた傷を見ていた。


「こりゃ、やばいぞ。

 このでかさだと、特殊個体だな。

 しかも、群れを率いてる」


 トカレの声にも、いつものからかうような口調が無かった。


「グルルルル」


 そんな音が聞こえてくる。


「近いぞ!

 戦闘準備!」


 コウチャンの、抑えているがハッキリした声でみんなが動く。

 あっというまに前衛後衛の隊形ができる。さすがだね。

 俺も慌てて、指定されたコウチャンの左後ろに立った。


「来たぞ!」


 前方で木の根元にしゃがみ、何かしていた山賊トカレが、そう叫びなら駆けてくる。

 木立の間から、フォレストボアが姿を現した。


 猪に似たその魔獣は、しかし、俺が予想していたよりはるかに小さかった。

 体高が一メートルそこそこだろう。

 あれなら、地球の猪と変わらない。

 何より、かつて目にしたフォレストボアの威圧感が無かった。

 見方によっては、ちょっとカワイイ感じだね。


 跳ねるように近づいてきた、フォレストボアは、なぜか突然その前足を折り、地面に突っ込んだ。

 トカレが何か仕掛けておいたのだろう。


 倒れたソイツに矢が飛んでいく。

 それは見事にフォレストボアの眉間を射抜いた。

 凄い!


「よっし!」


 背後から、気合いの入った弓師ラズナの声がする。

 今のは会心の一撃だったのだろう。


「次が来るぞ!」


 コウチャンの声と同時に、先ほどと同サイズのフォレストボアと、やや小さなもの、二匹が同時に現れた。

 小さい方のフォレストボアが、さっきと同じように地面に鼻先をぶつける。

 ぴいんと、ギターの弦が切れるような音がした。


 もう一匹のフォレストボアが、こちらに突進してくる。

 背後で詠唱の声がすると、光のようなものが、ソイツに飛んでいった。

 フォレストボアの前に、高さ二メートルほどある土の壁が現われる。

 

 ズシン


 こちらからは見えないが、フォレストボアが土壁にぶつかったのだろう。

 土壁が崩れ落ちると、そこに倒れていたヤツがよろよろ立ち上がるところだった。


「しっ!」


 あっという間に距離を詰めたコウチャンが、フォレストボアに剣を突き刺す。

 胸から入った剣は、心臓に達したのだろう。

 フォレストボアは、うずくまるように動かなくなった。


「三匹来るぞ!」


 山賊トカレが、大声で叫ぶ。

 どうやら、安心するには早そうだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ