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第48話 合流

 第三層に降りた『疾風の虎』『絆』の二班は、この層の半ばまで進み、やっと『黄金の鐘』に追いついた。

 

「ルーク、その話ってホントなの?」


 小柄だが俊敏そうな、赤い革鎧を着た少女は、ルークの話が信じられないようだった。 


「バルッサ、グレンは実際にその相手と戦ってるんだ!

 早く作戦を立てないと、ヤツがやって来るよ!」


「あんたもリッチモンドも、あたいらが先行してるのが気に食わなくて、ペテンに掛けようとしてんだろう?」


「いくら実技試験だからって、こんな嘘をつくはずないだろう!」


 珍しく、ルークが苛立っている。


「ここでじっとしていることで、あんたがパーティメンバーを危険にさらしてるって分からないのか?!」


 見かねたリッチモンドが口を出す。


「リッチー、あんたルークの戯言たわごとを信じるの?」


「ああ、嘘にしてはあまりにも手がこんでる。

 そいつに襲われたらしいおっさんたちも、この目で見たしな」


「……うーん、分かったわ。

 でも、もし嘘だったら後で許さないからね!」


「第四層の『別荘《安全部屋》』でミーティングしよう」


「分かったよ、ルーク。

 第三層のボスでやられるんじゃないよ!」


「わははは、こいつら『絆』がそんなところでやられる訳ねえじゃん。

 もちろん、俺たち『疾風の虎』もな!」


 リッチモンドがルークの肩に手を置く。


「しっ!

 今、何か聞こえなかった?」


 ルークが背後を向き身構える。


「いや、気のせいだろう」


 そう言ったリッチモンドだが、その顔には今までなかった緊張が見られた。

 

「急ごう!」


 彼の合図で、三つのパーティは、ダンジョン奥へ向け進みだした。


 ◇ ― ミリネ ―


 校長室で魔術の個人授業を受けていた私は、強ばった顔のポチャリー先生がやって来てルシルと二人部屋から出ていくと、閉まったばかりの扉に耳を押しあてた。


「ギルドから?」


 ルシル校長の、彼女らしくない緊張した声が聞こえてきた。


「はい、ザラート先生から、生徒たちが狙われてるかもしれないという報告が入ったそうです」


「……彼からの報告では、信じるしかないわね。

 で、その彼がどうしたか聞いてない?」


「生徒たちの後を追ってダンジョンに向かったそうです」


「そうなると、ここでじっと待ってるわけにもいかないわね。

 ポチャリー先生、あなたはここに残ってちょうだい。

 私もダンジョンに入るわ」


「こ、校長先生ご自身がですか?!」


「そうよ。

 こうしている間にも、生徒たちが危険にさらされてるかもしれない。

 急ぐわよ!」


「は、はい!」


 足音がこちらに近づいたから、私はいそいで扉から離れた。


「ミリネ、盗み聞きでもう知ってると思うけど、ちょっと出かけわよ。

 今日の個人授業は、もうお終い。

 ギルドに帰りなさい」


「いえ、帰りません!

 私もご一緒させてください!」


 聞いた話だと、今日、グレンは二回生と一緒にダンジョンで実技試験を受けているはずだ。

 それに、なにか嫌な予感のようなものがあった。


「あなた、ダンジョンが怖いって言ってなかった?」


「大丈夫です!

 連れていってください!」


「そうねえ、その様子じゃ、ここに残れと言っても、一人でダンジョンに突っこみそうね。

 いいでしょう。

 でも、ダンジョンでは私の側を離れない事、いいわね。

 守れないなら、意識を刈りとるわよ」


 ルシル校長の金色の目に、心の奥底まで見通されてる気がした。


「は、はい!」


「じゃ、すぐ用意なさい。

 ワンドは私のお古を貸してあげるから」


 校長は壁の絵を外し、その後ろにある金庫から二本のワンドを取りだした。 

 一本は古びた黒いワンド、もう一本は青みがかった新しいワンドだ。


「急ぐわよ!」


 青い方のワンドを私に渡した校長は、開け放たれていた扉を閉めもせず、あっという間に階下へ姿を消した。

 慌てた私は彼女の後を追い、部屋から駆けだした。

 

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