表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/181

第3話 剣と盾亭

 ドラゴンママは右前足で俺をつかみ、木が生えていない赤茶けた山々の上を飛んでいく。やがて広い森林地帯を越え、緑の草原、そして街らしきものが見えてきた。

 草原の中をまっ直ぐ伸びる道の脇に、ふわりと着地する。


『ではな、我が子よ。強くなれ』


「えっ? 服は?」


 俺の質問に答えもせず、ドラゴンママは飛びたってしまった。

 全裸で草原に立つ俺。


「なんじゃこりゃーっ!」


 大声で叫んだフリ〇ンボーイを、誰も責められないだろう。


 ◇


 じっとしていてもしょうがないから、草原から道へ出る。 

 道は舗装されておらず、土がむきだしだった。それでも、草原より歩きやすい。

 ただ、小石を踏んじゃうと足の裏が痛いんだよね。


 そういえば、ドラゴンママ、名前も教えてくれなかったなあ。

 よく考えたら、俺も名乗ってないじゃん。

 こりゃ、もう二度と会えないね。

 あのセリフ、『竜の血よ』って、もう一度聞きたかったなあ。

 もしかすると、この世界なら、【中二病】の俺でも生きやすいかもしれないな。

 そんなことを考えていたら、荷馬車が通りかかった。この世界にも馬っているんだね。

 あ、でも、この馬、短い角が二本生えてる。


「どうどう! おい、あんた、どうして素っ裸なんだい? 盗賊にでも襲われたのかい?」


 御者席には、キセルのようなものをくわえ、麦わら帽子をかぶったおじさんが乗っていた。

 西洋人っぽい顔つきだね。


「えーと、はい、そうです」


 ドラゴンの卵から生まれた、なんて言っても信じてはもらえないだろう。

 

「可哀そうになあ。

 街まで連れてってやるよ。

 さあ、乗った乗った」


「ありがとう」


 干草や樽が積んである荷台の端に腰掛ける。

 おじさんは、親切にもバスタオルサイズの汚い布を手渡してくれた。なにかの袋らしいその布を腰に巻きつける。 


 だけど、おじさんの言葉、なぜか分かるんだよね。

 ドラゴンなんてモノがいるから、どう考えてもここは地球じゃないよね。当然、そこに住んでる人の言葉なんて分からないはずなんだけど。

 まあ、便利だからいいか。それより、街に着いてからどうするか、考えておかなくちゃね。


 ◇


 馬車のおじさんが門番の人に事情を話したからか、特に質問などされず、あっさり街へ入れた。

 門番の人が可哀そうなものを見る目で俺を見ていたのが印象に残った。この世界でも、やっぱりあんな目で見られるのかって少し落ちこんだ。


 おじさんは、俺を知りあいの宿屋に紹介してくれた。『剣と盾亭』という勇ましげな名前の古びた宿は、めちゃくちゃごっついハゲのオヤジがやっていて、中学生くらいの、やけにカワイイ女の子が手伝っていた。


「ゴリアテさん、皿洗い終わりました」

 

「じゃ、次は床の汚れをこれで落としな」


 主人のゴリアテさんは、休息する間もなく、俺に仕事を言いつけた。俺はただで泊めてもらう代わりに、宿を手伝っているのだ。


「グレンさん、これどうぞ」


「ミリネちゃん、ありがとう」


 汗を拭っている俺に、ミリネが陶器のコップを差しだす。一気に飲んだそれは、少し炭酸が入っていて甘酸っぱく、後味が爽やかだった。ちょっといい気分になったから、もしかしたらアルコールが入っているのかもしれない。 

 目がクリッとしたミリネは、愛嬌がある顔で、ゴリアテさんの娘なんてとても思えなかった。

 だいたい、彼女には本物のケモミミとシッポがついているのだ。




 面白かった、続きが気になるという方は、評価、感想のほどよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ