第35話 思わぬ招待
ギルド内にある部屋の扉をノックする音で目が覚める。
扉を薄く開くと、レシーナさんが立っていた。
「きゃっ、グレン君、なんて格好してるの!」
あ、そういえばパンツだけで寝てたんだ。
「す、すぐ服を着ます!」
慌てて身だしなみを整え、一度閉めた扉を開ける。
「お寝坊さんね。
もう、お昼近いわよ。
父さ、いえ、ギルマスがお話があるそうです。
この前の個室へどうぞ」
「分かりました」
なんだろう?
ギルドから出ていけってことなら困るなあ。
◇
「おっ、坊主、来たか。
冒険者は早寝早起きが鉄則だぞ。
気をつけろ」
フッカさんが、鉄の爪をこちらに向ける。
あ、危ないでしょ、それ!
「ええと、なんのお話でしょう?」
「お前はともかく、ミリネはずっとこのまま部屋にこもってるってわけにもいかんだろう。
二人で学校に行く気はないか?」
「学校?
冒険者学校ですか?」
「おっ、知ってるなら話は早い。
手続きはこっちで済ませておいた。
学校の受付にこの手紙を出すだけで入学できるようになってる」
えーっ、こっちに相談もせずに、なんでそんなことになっちゃったの?
「ええと、学校は国の機関なんですよね。
教会の影響はありませんか?」
「ああ、そこは大丈夫だ。
とにかく行ってみろ」
拒否権はないんですか?
「……ミリネと相談してから決めてもいいですか?」
「ああ、そうしろ。
返事は今日中にな。
それから、その肩に乗ってるちっこい鳥だが、従魔証明書を取っとけよ」
だから、その鉄の爪を振りまわすと危ないって。
「ピュウ!」
ほら、ピュウも、そう言ってるでしょ。
◇
ミリネが借りている部屋の前でウロウロしていると、扉が開いた。
「グレン、なんでそんなところにいるの?
入りなさいよ」
部屋にニ三歩入って立ちどまる。
ゆったりしたオレンジ色の部屋着を着たミリネは、少し見ないうちに痩せていて、猫耳の毛にも艶が無いようだ。
「何の用?」
「フッカさんが、君と俺二人して冒険者学校に入らないかって」
「……なるほど、そういうことね」
ミリネは目を閉じ頷いている。
彼女には事情が分かっているようだ。
「じゃ、学校に入る」
「えっ!?
そんなにあっさり決めていいの?」
「学校は、きっとここより安全だからね。
それに部屋にずっと閉じこもってばかりいられないし」
人がたくさんいる学校より、ギルドの方が安全だと思うんだけど……。
「そうとなったら、急ぐわよ。
すぐに準備して」
「わ、分かったよ」
こうして、俺とミリネは冒険者学校へ行くことになった。




