第34話 派生スキル
ギルドに帰り、個室に向かおうとした俺に受付カウンターから声が掛った。
「グレン君、お買い物?
ご機嫌ね」
レシーナさんは俺が抱えた紙袋を見たんだね。
「ええ、ちょっといいものが手に入って」
「なになに、お姉さんに見せて」
「ええ、これなんですが……」
俺は袋から黒い眼帯を取り出した。
「えっ!?
グレン君、目をケガしたの?」
「いや、これ着けるとカッコイイかなーって」
「……いくらしたの?」
「銀貨一枚です」
「ぶうっ」
レシーナさんの隣でお茶を飲んでいた、鋭い目つきの女性がそれを噴きだした。
「なっ、なんでそんなに高いの!?」
「なんか、付与っていうのが着いてるみたいです」
「ああ、それなら分かるわ。
で、どんな付与が着いてるの?」
「分かりません」
「ぶうっ」
さっきの女性がまたお茶を噴いた。
「ええと、どんな付与かも調べずに、これを銀貨一枚で買ったと」
「ええ、そうです」
「「「あはははは!」」」
なぜか、冒険者たちと受付の女性たちが、一斉に笑いだした。
「グレン君、どんな付与が着いてるかも調べもせずに、こんなものを買っちゃだめだよ」
一人だけ笑っていないレシーナさんが、眉をひそめてそう言った。
「大方、『プーキーの魔道具屋』にでも行ったんだろうよ、がはははは!」
ひげ面のおじさんが、革鎧をパンパンにした大きなお腹を揺すって笑う。
レシーナさんは、眼帯を手に何かぶつぶつ言うと、紙に何かを走り書きし、それを俺に渡した。
「次からはその店に行かない方がいいわね」
「……はい」
冒険者たちの笑い声の中、俺は自分の部屋に戻った。
笑われたのが気にならないのかって?
中学、高校の四年近く、毎日みんなから無視されてたんだよ。
笑われるくらい、どうってことないさ。
◇
部屋に入り荷物をベッドの上に投げだすと、レシーナさんから渡された紙を読む。
【粗悪な眼帯】
製作者:プーキー
スキル:眼帯を通し、向こうが見える。
※おそらく目を治癒する魔法陣を書いたはずが、一部間違えてしまったためこうなったんでしょうね。もうこのお店に行っちゃダメよ。レシーナ
「えっ!?」
もしかして、レシーナさんって【鑑定】スキル持ってるの?
それより、眼帯に付与されてる、このスキルって意味あるの?
いや、やっぱり意味あるよ。
目のケガとかで眼帯を掛ける人には役立たないスキルだけど、俺みたいにファッションとして着ける人には便利じゃない。
いやあ、いい買い物したなあ。
そうだ!
これを掛けて冒険者カードをチェックしたら、やっぱり眼帯のスキルが表示されるのかな。
どれどれ……。
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名前:クロダグレン
年齢:16
レベル:36
職業:無し
犯罪歴:無し
装備:粗悪な眼帯
スキル:言語理解、言語伝達
ユニークスキル:中二病(レベル3)
派生スキル:スタイル(レベル1)
称号:竜の子
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あれっ!?
相変わらずレベルの表示はおかしいみたいだけど、なんか変なスキルが増えてる。
【派生スキル】って何だろう。
「スタイル」ってファッションとかで言うスタイルの事かな?
そして、なぜか【中二病スキル】のレベルが一つ上がってる。
ミリネにいろいろ尋ねてみたいけど、彼女、落ち込んでるようだから、また今度にしよう。




