第24話 嫉妬と罠(わな)
結局、ダンジョン一階層のボスには挑戦しなかった。
恐らく俺よりレベルが上だろうフランクたちでも、四人で攻略しているのだ。
いくらなんでも、一人で攻略するのは無理だろう。
スライムとスモールバットを、合わせてニ十匹ほど倒し、ダンジョンから出た。
成果は魔石が八個。ということは銅貨八十枚か。
一泊が一人銅貨三十枚、二人で銅貨六十枚。
これに食費やいろいろ入れると、どう考えても赤字だ。
ゴリアテさんから渡されている革袋には、かなりの額が入っていたが、毎日お金が減り続けるというのは、精神上良くないよね。
街で仕事を探すか、ダンジョンの下層に降りるか。
いずれにしても、このままではどうしようもない。
ピュウを肩に、何をする当てもなく街をぶらつく。
店の柱や看板をオシャレに飾りたてた地区へ出る。
ダンジョン周辺とは違い、歩いている人の服装も華やかだった。
やっぱり中世風なんだよなー、そんな事を考えて歩いていると、思わぬものが目に飛び込んできた。
一際高級そうなレストランらしき店の窓に、見慣れた猫耳が見えたのだ。
俺はなぜか近くの柱に隠れ、そちらをうかがった。
間違いない、ミリネだ。
ミリネは冒険者風の男女と、テーブルに着いていた。
前の街を出てから一度も見たことがない彼女の笑顔は、俺の心を深く抉った。
もしかして、彼女は俺ではなく、そいつらとダンジョンに入りたいのでは?
そう思うと目の前が暗くなった。
とにかく、ミリネの気持ちを確かめよう。
そう決めて、暮れなずむ街をふらふらと宿へ帰った。
◇ ― ミリネ ―
グレンにダンジョン攻略をさせるにしても、まずは情報だ。
宿のおじさんから冒険者が良く行く食事処を教えてもらった。
お昼時、一番込み合う時を狙い、店の扉を潜る。
そこは冒険者たちの喧噪で溢れていた。
幸運にも、ベテランらしい人々と相席になる。
彼らは『赤き剣』という名前のパーティで、男二人、女二人の構成だった。
リーダーのボラスは銀級、他の三人は銅級で、ダンジョンニ十階層から三十階層で活動しているそうだ。
情報を得るにはちょうどいい相手だ。
私がミストという偽名で荷物持ちとしてパーティに参加させてもらえないか頼むと、二つ返事で引き受けてもらえた。
夕方、貴族街にある店で、パーティ参加のお祝いまでしてくれることになった。
◇ ― ボリス ―
俺はボリス。冒険者だ。
パーティ『赤き剣』のリーダーをやってる。
そして、俺には副業がある。
いや、収入だと、よっぽどこっちの方が実入りがいい。
ダンジョンで出会った初心者、つまり獲物を奴隷商に売り飛ばす仕事だ。
奴隷商が獲物に奴隷紋を刻む時、俺たちの事は口外しないよう契約に入れてくれてるから、奴隷の口から俺たちの事が洩れる心配はない。
奴隷が解放されたらその限りではないが、そんなことは、めったにあることではないのだ。
この五年ほどでずい分稼がせてもらった。
しかし、そろそろこの商売も潮時だろう。金も十分たまったし、王都にでも出て、何かの店でも始めるか。
たまたま、今日網にかかった獣人の小娘を最後に足を洗おう。
結局、ダンジョン一階層のボスには、挑戦しなかった。
恐らく俺よりレベルが上だろうフランクたちでも、四人で攻略しているのだ。
いくらなんでも、一人で攻略するのは無理だろう。
スライムとスモールバットを、合わせてニ十匹ほど倒し、ダンジョンから出た。
成果は魔石が八個。ということは銅貨八十枚か。
一泊が一人銅貨三十枚、二人で銅貨六十枚。
これに食費やいろいろ入れると、どう考えても赤字だ。
ゴリアテさんから渡されている革袋には、かなりの額が入っていたが、毎日お金が減り続けるというのは、精神上良くないよね。
街で仕事を探すか、ダンジョンの下層に降りるか。
いずれにしても、このままではどうしようもない。
ピュウを肩に、何をする当てもなく街をぶらつく。
店の柱や看板をオシャレに飾りたてた地区へ出る。
ダンジョン周辺とは違い、歩いている人の服装も華やかだった。
やっぱり中世風なんだよなー、そんな事を考えて歩いていると、思わぬものが目に飛び込んできた。
一際高級そうなレストランらしき店の窓に、見慣れた猫耳が見えたのだ。
俺はなぜか近くの柱に隠れ、そちらをうかがった。
間違いない、ミリネだ。
ミリネは冒険者風の男女と一緒にテーブルに着いていた。
前の街を出てから一度も見たことがない彼女の笑顔は、俺の心を深く抉った。
もしかして、彼女は俺ではなく、そいつらとダンジョンに入りたいのでは?
そう思うと目の前が暗くなった。
とにかく、ミリネに気持ちを聞こう。
そう決めて、暮れなずむ街をよろよろと宿へ帰った。
◇ ― ミリネ ―
グレンにダンジョン攻略をさせるにしても、まずは情報だ。
わたしは、宿のおじさんに聞き、冒険者が良く行く食事処を教えてもらった。
お昼時、一番込み合う時を狙い、店の扉を潜る。
そこは冒険者たちの喧噪で溢れていた。
幸運にも、ベテランらしい、人々と相席になる。
彼らは『赤き剣』という名前のパーティで、男二人、女二人の構成だった。
リーダーのボラスは銀級、他の三人は銅級で、ダンジョンニ十階層から三十階層で活動しているそうだ。
情報を得るにはちょうどいい相手だ。
私がミストという偽名で荷物持ちとしてパーティに参加させてもらえないか頼むと、二つ返事で引き受けてもらえた。
夕方、貴族街にある店で、パーティ参加のお祝いまでしてくれることになった。
◇ ― ボリス ―
俺はボリス。冒険者だ。
パーティ『赤き剣』のリーダーをやってる。
そして、俺には副業がある。
いや、収入だと、よっぽどこっちの方が実入りがいい。
ダンジョンで出会った初心者、つまり獲物を奴隷商に売り飛ばす仕事だ。
奴隷商が獲物に奴隷紋を刻む時、俺たちの事は口外しないよう契約に入れてくれてるから、奴隷の口から俺たちの事が洩れる心配はない。
奴隷が解放されたらその限りではないが、そんなことは、めったにあることではないのだ。
この五年ほどでずい分稼がせてもらった。
しかし、そろそろこの商売も潮時だろう。金も十分溜まったし、王都にでも出て、何かの店でも始めるか。
たまたま、今日網にかかった獣人の小娘を最後に足を洗おう。




