第22話 これからのこと
◇ ― ミリネ ―
今日グレンと一緒にダンジョンに行って、気づいたことがある。
彼は何か特別なスキルを持っているのではないかしら?
父さんに聞いたのだけど、私が客車の下敷きになっていた時、そして死にかけた時。
誰かの、そして何かの力が私を救ってくれた。
それだけではない、フォレストボアを焼き尽くした炎。
ダンジョンで黒いフクロウを治した光。
そして彼に魔術を教えた時、一度だけ現れた火球。
全て、彼がいる時に起こっている。
もしそうなら、ダンジョンを攻略することで、きっと彼のスキルがレベルアップするだろう。
冒険者ギルドに行って、あの方に頼めばいいのかな。
しかし、私にはそれができない。
なぜなら、父さんから、人が多い場所に行くときには、必ずフードを被るように言われているからだ。
いくらなんでも、フードをしたまま頼み事はできないだろう。
グレンがもっとしっかりしていたら、彼自身に任せればいいのだけれど。
どうしようかしら。
◇ ― グレン ―
「ねえ、ミリネ、ピュウの事で凄いこと見つけちゃった」
俺は黒フクロウを『ピュウ』と名づけた。
なぜなら、「ピュウピュウ」と鳴いていたからだ。
「あんた、また、えらく適当な名前つけたもんね」
「えーっ、可愛くない?」
「どこがよ?」
「可愛いよねー、ピュウ、ピュウ、痛っ!」
「ほら、あんたの手をつついてるじゃない。
嫌がってない、それ?」
「そんなことないよ!
それより、凄いこと見つけたんだ!」
「なに?
今、忙しいんだけど」
「俺の右手見てよ」
「それなに?
前から気になってたんだよね。
もし、奴隷紋だと可哀そうだから、訊かなかったけど」
「たぶん……奴隷紋じゃないよ?」
「なんで自信が無いのよ!」
「とにかく見て見て、ピュウのここ」
俺はピュウの足を指した。
「あれ?
足の付け根に紋章があるわね」
「そうでしょ!
しかも、色も同じ青!
すっごくよく似てるんだ!」
「確かに、あんたの紋章とほとんど同じに見えるわね」
「俺たち、巡り合う運命だったんだね、ピュウ、痛っ!」
「ピュウは、あんたと同じだってこと、嫌がってるんじゃないの?」
「そんなことあるはずないじゃん!」
「どうかしら?」
「とにかく、ピュウが元気になったら、またダンジョンに行くよ!」
「……」
「どうしたの?
もう行きたくない?」
「今すぐには返事できないわ。
とにかく、ダンジョンに行くなら、私の事は期待しないでちょうだい」
「えーっ……」
「もの欲しそうな顔をしてもだめ!
私、忙しいの!」
「なにもしてないじゃん」
「なにか言った!?」
「いいえ、言ってません」
◇ ― ???(ピュウ) ―
この少年、我を助けてくれたのはいいが、この娘の尻に敷かれておるようじゃな。
しかし、我がこやつの手にある紋章をつついたのに、まだ気づかぬとは、よっぽど抜けておるのか?
だいたい、母者はなぜこのような人族になど紋章を授けたのか?
いくら考えても分からん。
レッドマウンテンまで飛べば、母者がなんとかしてくれるのだろうが、このからだでは、街の中を飛ぶのがせいぜいだ。
下手をしたら、この前のようにレザーイーグルのエサにされかねん。
くそう、そこまで考え、ヤツは我に術を掛けたのかもしれん。
油断ならなんヤツよ。
しかし、あの獣人の娘、どこかで見たような覚えがあるのだが……。
人族にしても、獣人族にしても、それぞれがよう似ておるからのう。




