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第19話 ギルド職員の心配

 私はレシーナ、クレタンギルドで受付をしています。

 この街は、迷宮都市という事もあって、ギルドはいつも冒険者で賑わっています。

 受付の仕事は、素材の買取や、依頼を達成した人への報酬の支払い、そして、冒険者登録や新人冒険者へのアドバイスです。


 中には、全く戦闘力がなかったり、成人の十五才を待たずに冒険者になろうとする者もいるから、そんな人に冒険者としての心構えを伝えるのも私の役目です。


 今日はちょっと気になる人がいました。

 珍しい黒髪、黒い目ですが、まだ成人して一年しかたっていません。

 戦闘系のスキルも持たず、討伐の記録もありませんでした。

 だけど、なぜかレベルだけ高かったのです。


************************

名前:クロダ グレン

年齢:16

レベル:28

職業:無し

犯罪歴:無し

スキル:言語理解、言語伝達

ユニークスキル:??? 

称号:???

************************


 冒険者のレベルは魔獣やモンスターを殺すことで上がっていきます。

 冒険初心者のレベルは、普通1から5。

 ダンジョンの五階層より下へ行けるようなると、5から10。

 そして、十階層を超えられるような中堅冒険者が20から30というところなんです。 

 ところが、先ほどの少年は、ギルド章を作って間もないのにレベル28。

 中には若くしてそういうレベルに到達する天才がいることはいますが、いくらなんでも、討伐記録がないのにレベルだけ高いというのは、あり得ません。

 

 冒険者カードには、討伐したモンスターの種類、数が自動的に記録されるので、ごまかすことはできません。

 もしかすると、カードに異常があるのかもしれません。

 しかし、そうなると大変な事になります。

 冒険者カードが信頼できるからこそ、冒険者たちは安心して討伐数を競えるからです。


 結局、私はこのことを上司に報告しないことにしました。

 彼が無謀な事さえしなければ、事は丸く収まるのです。


◇ ― グレン ―


「ええっ!?

 なんで明るいの?」


 俺とミリネは、高さ二メートルちょっと、幅が六メートルくらいの通路をゆっくり進んでいた。


「だから言ったでしょ。

 ダンジョンの中は、壁がぼんやり光ってるって」


「せっかく、高いカンテラを買ったのに!」


「グレン、少しは人の話を聞いた方が良いわよ。

 そんなことだと、そのうち、取返しのつかない失敗するんだから」


「へーい。

 しかし、モンスター出ないね?」


「まだ、入ってすぐじゃない!

 あんた、初心者セットの冊子を読まなかったの?」


「ゲームの説明書は読まない主義なので」


「ゲームって何よ?

 とにかく、聞いときなさい。

 一階で出るモンスターは、スライムとスモールバット。

 どっちも鉄ランク最下位のモンスターね。

 奥に行くほどモンスターの数は多いの」


「スライムはともかく、スモールバットは魔獣じゃないの?」


「えーっ、そこからなの?

 ダンジョンの中で出る魔獣をモンスターって言うのよ」


「なるほど」


「私たちが林で襲われたフォレストボアは、銀ランクの魔獣ね」


「それがダンジョンで出たら、銀ランクのモンスター?」


「そういうこと」


「どうしよう、あんなのが出たら、ミリネを守る自信がない」


「まったく、脳みその代わりにスライムが入ってるのかしら? 

 銀ランクの魔獣なんて、出ても三十階層より下よ」


「ひどいっ!

 いくらなんでも、脳みそがスライムってないよ!」


「なら、そうじゃないところをじっくり見てあげる」


 そして、俺たちは、最初のモンスターと遭遇した。




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