表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/181

第157話 女王との謁見(中)


 城に入ると、いきなり空間が広がっていた。

 小さな体育館くらいはあるだろう広間には、軽装のエルフ兵が弓や槍、ワンドを身体の前で立てて持ち、二列に並んでいた。

 隣では、キャロがきょろきょろ周囲を見回している。壁には色とりどりの花が咲き、足元は苔のようなものが帯状に敷かれていた。

 俺たちは、ラディクを先頭に、兵士たちの間、苔の「道」を通りぬけ、広い階段を昇り、次の間へ入った。


 教室三つを合わせたほどの縦長の部屋には、奥の檀上に玉座があり、キラキラ輝くエメラルド色のロングドレスを着た女性が座っていた。

 その前には、やはり兵士が二列にならんでいたが、彼らはみな、銀色の鎧を身に着けていた。

 

 ラディクは、なんのためらいもなく、つかつかと女王の前まで進む。

 そして、ひざまずきもせず、力を抜いた姿勢で立った。

 その後ろに、ルシル、ゴリアテ、マールが並び、慌てて追いついた、俺たちがその後ろに立った。


 これ、ホントにひざまずいたりしなくていいの?

 そんなことを考えていると、白いティアラを緑髪に載せた、玉座の女性自身がよく通る声で話しかけた。


「ラディク殿、久しぶりだな」


「はい、お久しぶりです、フォーレ様」


 ラディクは、まったく緊張してないな。ホントいい神経してるよ、この勇者。


「こたびは、我が国へなんの用かな?」


「近くまで来たので、ご無沙汰を詫びようかと」


「ホホホホ、お主がそのようなこと考えるわけはあるまい。

 本当の目的はなんだ?」


 うわ、最初っから疑われてるよ。大丈夫か、これ?


「正直に言いましょう。

 旅で知りあった仲間と、この国の都を観光をしたいと考えています。

 ただ、そういった理由では許可が降りないでしょう?」


「ふふふ、本当の目的を言うつもりはなさそうだな?」


「ま、そうですね」


 あっけらかんとしたラディクの言葉に、騎士たちが騒ぎだす。


「無礼なっ!」

「陛下を侮辱する気か!」

「けしからん!

 成敗してくれる!」


 めちゃくちゃ物騒な感じだよ、このエルフたち。

 こっちを睨んでる目からビームが出そう。


「獣人とは、この度は、変わった客人をつれておるのだな」


 女王の視線が、勇者たちの後ろに並ぶ俺たちの方へ移る。

 

「ケットシーラとは珍しいの。

 それにその者は、見たこともない部族だな?

 虎人の特徴も見えるが、それだけではないな」


 自分のことが話題になったミリネは、斜め後ろから、俺のコートをぐいっとつかんでいるが、その手を通し、彼女の震えが伝わってきた。


「関所からの報告では、虎人もいたという報告であったが、その者はどうしたのだ?」


 ガオゥンは、カフネと宿に残っている。

 さすがに、昔フッた女性が女王として君臨するお城には来られないだろう。

 

「まあよい、そのうち紹介してもらう機会もあるだろうからな」


 質問に答えないラディクに、女王フォーレはそれほど腹を立てているように見えなかったが、かえってその落ちつきが不気味だった。


 だって、目が怖いんだもん。






 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ