表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/181

第155話 ゴロニャンとラッキーなんとか

 エルフの球状住宅は、見かけよりはるかに居心地がよかった。

 壁や床をなすパイプのような枝は、一見すると柔らかい素材だが、手で触れてみると、固いけれどなぜか暖かい。やや暗い落ちついた茶色の部屋は、そこにいるだけで心が休まるものだった。

 ベッドは、長めの揺りかごといった形で、何かの繊維を編んで作ってあった。横になると、舟底で空を見上げているような気分になる。


 灯りは、ロウソクではなく、荒く編みこまれた筒に入れられたふわふわしたものだった。

 それが薄っすらと光を放っている。日本の灯りに慣れた俺には、とても暗く感じられたが、蛍の光を思わせるそれに、なぜか懐かしさをかき立てられた。


「グレン、その明かりが気に入ったの?」


 姉のセリナと二人、俺と同室になったキャンが、話しかけてきた。

 そういえば、キャンがこうやって普通に話かけてきたのは、初めての気がする。


「うん、ちょっと故郷を思いだしてた」


「故郷ってどこ?」


「……そうだね、とても遠いところかな」


 きっと、もう帰ることはできないだろう。


「そこで、何か悲しいことでもあったの?」


「……いや、そういうわけじゃないよ。

 気にしないで」


「あのね、あの……グレン、ごめんなさい!」


「いきなりどうしたの、キャン?」


「ずっとダマしてて……」


 スパイしていたのがバレてから、しばらくたつのに、キャンはずっと気に病んでいたのだろう。


「気にしなくていいよ。

 君はお姉さんを守ろうとして、仕方なく『夜明けの光』に協力してたんだろ?」


「それはそうだけど……」


「本当に、もう気にしてないから」


「あ、ありがとう」


「じゃあ、寝るかな?」


 俺が「ゆりかご」から降り、服を着替えようとすると、キャンがすぐ側まで寄ってきた。


「グレン、ちょっとお願いがあるんだけどいい?」


「なに?」


「もう一度、ここに横になってくれる?」


「え、それはいいけど」 


 俺は黒いコートを脱ごうとした。

 

「待って!

 それは着たままにしておいて」


「でも、寝る時は着替えないと」


「少しの間だけでいいから、お願いです」


 なぜか、キャンは三角耳がついた頭を下げている。

 うしろで尻尾しっぽがぶんぶん振られている。

 どういうことだろう?


「まあいいけど……」


 再び、「ゆりかご」に横たわる。

 お腹の辺りを何かに押さえつけられる。

 

「えっ!?」


 視線を降ろすと、キャンが俺のお腹に頭をつけて……ごろニャンしている。


「ええっ!?」


 いつの間にか、「ゆりかご」の反対側にセリナが来ていて、俺の太腿辺りに頭を擦りつけている。

 そこ、なんか近い!

 危ないですから!


 部屋のなかに、二人がごろごろと喉を鳴らす音が響く。


「グレン!

 あんた、なにしてるの!」


 叫び声の方を見ると、部屋の入り口の扉を開け、ミリネが立っていた。

 なんだか、凄く怖い顔してる!

 激怒?


「ミリネも一緒にやるにゃ」


 キャンがそんなことを言うと、ミリネがつかつか近づいてきて俺の枕元に立った。


「このスケベ!」


 パーン!


 今、すっごくいい音がしたよね。鳴ったの俺の頬っぺただけど。


「キャン、セリナ!

 あなたたち、別の部屋に移るわよ!」


 ミリネが、キャンとセリナの手を取り、彼女たちを引きずるように部屋から出ていく。


 上半身をいったん起こしていた俺は、なんだか気が抜けて、ぱたりと「ゆりかご」に倒れこんだ。

 なんだか納得できなくて、ステータスを呼び出してみる。



************************


名前:クロダグレン


年齢:17


レベル:151


職業:無し


犯罪歴:無し


装備:黒竜王のコート


スキル:言語理解、言語伝達


ユニークスキル:中二病(レベル9)

  派生スキル:スタイル(レベル4)→

  派生スキル:ポーズ(レベル5)→

  派生スキル:ラッキースケベ(レベル1)


称号:竜の子

   山を喰らいし者

   海を割りし者


************************


 ふんふん、少し上がってるなあ。

 おお! 誕生日来たのか? 俺、十七才になってるじゃん! 

 あれ? 装備名「黒竜王のコート」ってなってる! すげー! 名前つけたら表示が変わったよ。 

 ……って、そんな場合じゃない!


 なんだ、この派生スキル!

 いくらなんでも、【ラッキースケベ】はナイだろう!

 なんでこんなことに!?

 あ、さっきのごろニャンか?


 それでも、ナイわー! スキル欄に【ラッキースケベ】って、ナイわー!

 せめて称号だろう、それ!

 全中二病が泣くぞ!

 誰だ、このステータス作ったやつ!

 

 え!? 俺!? ……どうもすんません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ