第145話 夜襲
目が覚めると、辺りはまっ暗だった。
俺以外のみんなは、夕方からまた宴会してたから、部屋のベッドに一人横になっていたんだけど、いつの間にか寝てしまったらしい。
お腹がキュウキュウ鳴っている。
朝食べたきり、ずっと何も食べてないもんね。
他のベッドから寝息が聞こえるから、ミリネたちも帰ってきて寝ているらしい。
なるべく音を立てないよう、ベッドからそっと降りる。
テーブルの上に置いた、鳥かごの辺りから、ピュウの声がする。
「くるっ、くるっ」
あれ、いつもの鳴き声じゃないぞ。
何か警戒しているような鳴き方だ。
それに、カゴの中でカチャカチャ動きまわってる。
最近、なぜか夜目が利くようになったから、それが見えるんだけどね。
カチリ
小さな音がして、ゆっくり部屋の扉が開いていく。
寝る時はカギを閉めるよう言われているから、それを誰かが外したらしい。
ヤバイ感じがする！
俺は、慌ててステータスを表示する。
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補助スキル：スキルゲージ
０１………………………５０……………………１００
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ちゃんと、「１」のところが点滅してるな。
よし、いつでも来い！
入ってきた黒い人影は、三人だった。
一人がさっと動くと、今の今まで俺がくるまっていた毛布に何かを突き立てた。
もう待たなくていいだろう。
「ぶっ飛べ！」
スキルが発動する。
俺のベッドを突いたヤツが、後ろにふっ飛ぶ。
その体が、入り口にいた二人を巻きこみ、扉をぶち破った。
ゴゴッ、バーン！
ガチャーン
そんな音がした。
最後の音は、ヤツらが、中庭へのガラス戸にぶつかり、それを壊した音だろう。
「ううん、なに？」
ミリネの寝ぼけた声がする。
「くるっ、くるっ」
おや！
ピュウがまだ警戒してるぞ！？
背後を向きかけた俺に、音もなく誰かが襲いかかる。
窓から入ってきたヤツがいたのか！
体を投げだしながら、空中で叫ぶ。
「ぶっ飛べ！」
襲撃者の体が、ドンと弾かれ飛んでいく。
ガチャーン！
部屋のガラス戸を撒きちらし、そいつは屋外へ飛ばされた。
まだ、他にも敵がいるかもしれないから、ゆっくり窓へ近よろうとしたその時……。
カッ
急に部屋が明かるくなったのは、ミリネが無詠唱で放った灯りの魔術だろう。
しかし、いきなりのことに、一瞬視界が白くなる。
すぐに周囲が見えきたが、部屋の外に倒れていたはずの襲撃者は、逃げていく姿がチラリと見えただけだった。
「グレン！
何があったの？！」
さすがに、ミリネの声にも緊張が聞きとれる。
「ベッドの後ろに隠れて！」
がさがさ音がするのは、キャンとセリナも動いているからだろう。
宿のあちこちで、物音や叫び声が上がっている。
どうやら、襲われたのは、この部屋だけではないらしい。
そういえば、今になって気づいたが、ルシルは部屋にいなかったんだね。
カツカツカツ
ドスドスドス
そんな足音がして、壊れた入り口から現れたのは、ラディクとガオゥンだった。
「ミリネ！……さん。
大丈夫か？！」
そう叫んだガオゥンに抱きしめられ、ミリネが当惑した顔をしている。
「グレン！
君も大丈夫かい？」
ラディクは、俺に声を掛けてくれた。
「ええ、そこから三人、外から一人、襲ってきました」
俺は壊れた入り口を指さした。
「中庭に飛ばされた三人は捕えてある。
あと一人は、どうした？」
「あっという間に姿を消しました」
「そうか……。
何か気づかなかったか？」
「外から襲ってきたヤツの方が、強かったみたいです。
ピュウが教えてくれなかったら、やられてたと思います」
「そうか。
とにかく、無事でよかった」
「あと……」
「なにか気づいたのか？」
「気づいたってほどじゃありませんが、そいつが逃げる時、一瞬だけ見えたんです」
「どんなヤツだった？」
「黒装束でしたから、どんなヤツかは分からなかったんですが、滑るような感じでスーって動いてました」
「……」
ラディクは、今まで戦いの時でさえ見せなかった厳しい表情になり、その後、一言もしゃべらなかった。
