第144話 ぼっち
ルシルと俺が、カフネを伴って宿へ帰ると、やはり騒ぎになった。
まず、宿の人たちが、次に『絆』の四人がワイワイ言っていたのは、分かるのだが、ラディクたちまで、興奮が隠し切れないようだった。
「カフネ嬢ちゃん、元気にしておったかな?」
「おっす!」
「カフネ、久しぶりだね。
お仕事お疲れさま!」
カフネも仲間との再会が嬉しかったようで、少し涙ぐんでいるようにも見えた。
「マールじい、おやっさん、ラディク、会えて嬉しいよ」
マール、ゴリアテ、ラディクの順に握手したカフネは、後ろからルシルに抱きついた。
「マールじい、あれ出してー」
「うむ、あれかの?」
マールは、何も無い空中に手を伸ばすと、小型の樽に取っ手がついたものを次々に取りだした。
なぜだか、俺にも渡されてるんですけど……。
「再会を祝して、カンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
コーン!
いい音をさせ、木の樽をぶつけ合った五人は、グビグビとそれをあおる。
しょうがないから、俺もそれを飲んでみた。
「うわっ!
これ、ミルクじゃないか!」
「あははは、当たり前じゃろ。
エールは、まだお前には早いからの」
ルシルが、満面の笑顔で言う。
「グレン坊は、もうすこし、これで我慢だのう」
マールが言わなくてもいい事を言ってしまった。
「グレン坊?
やっぱり!
ほら、君って、やっぱり『グー坊』なんだね!」
くそう! こいつー!
そのすました顔に、このミルクをぶちまけてやりたいよ!
◇
その後、場所を食堂に変え、『剣と盾』の五人は酒盛りを始めた。
当然のように『絆』の四人もそれに参加した。
まだまっ昼間だというのに、よくやるよ。
俺は早々に退散した。
部屋に戻ると、ミリネとキャン、キャンの姉のセリナ、六つのケモミミがベッドの向こうに見えていた。
俺に気づくと、三人がささっと動いて応接セットのところに戻る。
「ただいまー。
ミリネ、何してたの?」
「な、何もしてないわよ!」
なぜかミリネは怒っているようだった。
「いや、今、三人がベッドの横で何かしてなかった?」
「し、してないわよ!
誰があんたのベッドなんかで――」
「えっ、俺のベッドで何かしてたの?」
「「「してない!」」」
なぜか三人が声を合わせる。
「それより、さっき、誰か騒いでなかった?」
頬をピンクに染めたミリネが、話をそらそうとしている。
絶対、なにか怪しいよね。
「なんか、カフネっていう人が来て騒いでた」
ミリネがソファーからぴょんと跳びあがる。
「えっ?!
カフネお姉ちゃんが?!
どこ?」
「食堂だけど」
「すぐ行く!
キャンとセリナも、一緒に行こうよ!」
ミリネが二人の手を取ると、三人揃って部屋から出ていった。
宴会不参加は、俺一人か。
でも、俺には、ピュウがいるからね。
だけど、さっき、三人は何してたんだろう。
俺は自分のベッドに座ると、周囲を見回してみる。
今朝、起きてすぐ宿の人が整えてくれたベッドが少し乱れている気がする。
ベッドの下に顔を突っこんでみる。
「あっ!」
そこには、口が開いた俺のカバンと、しわくちゃになった黒いロングコートがあった。
これ、ピュウ用の肩当て付けてないから、ここに置いていったんだよね。
猫よせの付与がされたコートを手に取ると、なぜか少し暖かい。
ミリネたち、こんなもので何してたんだろう?




