第111話 出発前のステータスチェック
プーキーが部屋から出ていくと、俺は久しぶりにステータスを開いてみた。
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名前:クロダグレン
年齢:16
レベル:131
職業:無し
犯罪歴:無し
装備:無し
スキル:言語理解、言語伝達
ユニークスキル:中二病(レベル7)
派生スキル:スタイル(レベル3)
派生スキル:ポーズ(レベル2)
称号:竜の子
山を喰らいし者
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「えっ……」
イヤイヤイヤ、いくらなんでも、これはないよね。ナイナイ。
レベル131って、なんなのよ!
これで、ギルドカードが壊れてるってハッキリしたね。
かえって、ちょっと安心かな。
【中二病スキル】が上がってるのも、それなら気にしなくていいよね。
あっ、そうだ!
さっきの黒コート羽織ってみよう!
バサッ
派生スキル:スタイル(レベル3)*2000
……うん?
俺は、慌ててステータス画面を消した。
今、一瞬、見てはいけないものが見えたような気がしたよ。
「*2000」とか、まさかね。アハハハ。
……。
派生スキル:スタイル(レベル3)*2000
やっぱり、もう一度見ても、同じでした。
例の『三つ子山事件』の時さえ、「スタイル(レベル2)*10」と「ポーズ(レベル1)*10」の組みあわせだったんだよね。
もし、ギルドカードが壊れてなかったとしたら、「*2000」とか恐ろしすぎるだろ!
◇
次の日、朝食でミリネと顔を合わせると、呆れ顔で言われた。
「今日から長旅だっていうのに、その状態はなによ、グレン……」
仕方がないじゃん!
昨日、一睡もしてないんだから!
「ふぁ~、おはよう」
あくび交じりにそう答える。
「ほっほっほ!
若いとはいいのう!」
この賢者、何か勘違いしてないか?
俺は眠いだけなの!
「じゃあ、予定通り、例の国へ向かおうか」
食事が終わると、勇者ラディクが爽やかに言った。
ちなみに、俺はどこへ行くか、まだ教えてもらっていない。
ルシルに尋ねたけど、百年早いと言われた。
百年てねえ……俺、もう死んでるじゃん!
◇
ギルドの建物前に停まった、美しい白馬二頭にひかれた、白く長い客車に側面の扉から乗りこむ。
八畳はある客車には、向かい合う形でベンチが置かれ、金色に縁どりされた豪華なテーブルや、磨きあげた木の棚があった。
それに、どうやら奥にはもう一部屋あるみたいだ。
「どうなってるの、この客車?」
「すごいじゃろう。
指名依頼の報酬でもらったのじゃよ」
小柄なルシルが、自慢げに胸を張る。
「えっ?
これが報酬?」
「あの時の報酬は、確か金貨千枚とこの馬車だったのう」
賢者マールが、白いヒゲを手で撫でつけながら、さらりと凄いことを言った。
「金貨千枚……」
「ほっほっほっ、何を驚いておる?
金貨千枚など、かなり安い方だぞ」
「……」
どうも、伝説のパーティは、その常識からして俺たちとは違うようだ。
「そうだ、マール様。
どこへ向かってるか、もう教えてもらえますよね?」
俺は正面に座るマールに尋ねてみた。
「よいぞ。
獣人国家フギャウンだよ」
「フギャウン?」
なんだ、その猫の尻尾を踏んだような名前は?
「その国である人物に会うのだ」
垂れさがった白い眉に隠れた、マールの目がキラリと光ったような気がした。
「だがのう、グレン坊。
その前に一つやらねばならんことがあるのだ」
それだけ言うと、眠ってしまったのか、マールは何も話さなくなった。