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第八話

砂にめり込む重い足を引きずりながら、ジョンはただあてどもなく歩き続けていた。

彼の心の中には最早、後悔しかない。

まだジョンが大学生だった頃、気紛れに立ち寄った南の小さな島。

文明とは程遠い日々の暮らしを営む純朴な島民たちと、

精霊たちの言葉を伝える巫女を崇め奉るマウリ島は、ジョンにとって神秘の島として

印象深く残った。

必要なものだけあればいいという、太古からの暮らしを営むマウリの人々は神々しくさえ映った。

この島の素晴らしさに触れることが出来たのなら、人間としての根本的な幸福とは何なのか

訪れたすべての人に味わってもらえるかもしれない。

単純にジョンは考えた。

今、ジョンは恐ろしくてたまらなかった。

マウリ島を荒らし、人々の心を変えてしまった原因は

自分であるかのような罪悪感に押し潰されそうになっていた。



穏やかだった海が一変して凶暴な姿に変わった。

干潮でもないのに、いきなり海面が低くなったかと思ったのもつかの間

荒れだした海の上、頼りない木の葉のように揺れる小船の上で、

モロは声の限り

「死にたくない!助けてくれ!死にたくない!!」

と泣き叫ぶ。

相棒のヤムは真っ青になりながら、背後に迫った大波を目の当たりにして

自分の命が残り少ないだろうことを覚悟した。



渚のコテージでロバートは、つくづくと海を眺めると

わずかな異変に気付いた。

先程まではあれほど穏やかだった海が

急に凶暴な色に変わったかのように見えた。

心なしか一瞬、すべての波が消滅したようにも見え

尋常ではない雰囲気を鋭く嗅ぎ取った。

「これは……、一体何が起こるというのだ」



急に大きくなった波の音に、うたた寝していた真弓は不安に駆られ

隣で眠っていた哲司を揺り起こした。

「ねえ、何かおかしい感じがしない?」

そう言う真弓に、まだ寝ぼけ眼の哲司はくちづけしながら

「悪い夢でも見たのか」

と笑った。

細い真弓の体を抱きしめながら

「大丈夫、大丈夫さ」

つぶやきながら、再びまどろみ始めた。





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