表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

第六話

遠くから名前を呼ぶ声にカリ・ヒは振り返った。

幼い頃から聞きなれた乳母のミヤナの声だ。

森の中を小走りにミヤナが駆けてくる。その傍らには5歳ほどの少女がついていた。

ハアハアと息を切らせながら、カリ・ヒの元に辿り着いたミヤナに

「そんなに急いでどうした?ミヤナ」

とカリ・ヒは尋ねた。

「それが、私にもさっぱりわからないのです。

いきなりナキアが私の手を引っ張り・・・・」

「ナキアが?」

カリ・ヒは傍らにいる5歳ほどの少女ナキアの視線まで腰を下ろすと

「どうした。ナキア?」

と優しく尋ねたが、ナキアが応えるはずもなかった。

ナキアは一年ほど前の嵐の翌日、マウリ島の砂浜に打ち上げられていた。

幸い命に別状はなかったがナキアは言葉が話せなかったのだ。

だが耳が聞こえないわけではなく、恐らくは波に飲まれた恐怖から

言葉を失っているだけだろうと思われた。

素性も知れず身寄りもなく、言葉も話せない少女にナキアと名付け、

カリ・ヒが手元に引き取ることにしたのは、

何かしらナキアの内側に眠る「力」の存在に薄々と感づいていたからだった。

ナキアは何か言いたげに一点の曇りもない瞳で、カリ・ヒを見つめると

小さな手でカリ・ヒの手を握りしめた。

突然、一陣の風が吹きつけカリ・ヒは全身を強く打たれたような衝撃を受ける。

ざわざわと森の木々が騒ぎ、カリ・ヒは身震いした。


・・・・ル ・・・・クル・・・・ ナ・・・・


途切れ途切れにカリ・ヒの耳に届く小さな声は、

やがて大きなうねりとなって聞こえ出す。

いくつもの入り混じった声々が溢れ

カリ・ヒは目を閉じてその言葉を聞き取る。

精霊の声がカリ・ヒに語りかけたのだ。

目を閉じたまま、ゆらゆらと大きく体を揺らし始めたカリ・ヒを

ミヤナとナキアは見守りながら静かに佇んでいた。

やがてカリ・ヒが目を開けると

「カリ・ヒ様、精霊の声が聞こえたのですね」

ミヤナが安堵の表情を浮かべた。

しかしカリ・ヒの面差しには凛とした厳しさがあった。

そして、深く息を吐くと幼いナキアに目を向け

「そうか・・・・。ナキア、あなたが・・・・」

と呟いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ