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第六章:あなたはいつまであの女に騙されているつもりなの?

 入学した時期は春真っ盛りで桜が咲き乱れていた。つい最近までは緑と青の季節で汗だくなる毎日だった。そして今は赤と黄色の絵の具で風景画を描くようなじきになってしまった。

 彼とはやっと会釈するような仲にはなったが、ずっと彼には同じ彼女がいた。風の噂で大喧嘩したなんて話は割と聞くのに、見る姿はいつだって仲良く、喧嘩していた様子はない。噂で話を聞く度に、彼に勇気をもって話しかけようと思うが、そんな時に限ってあの女がやってくる。ただ少しの確信はあった。昔よりも彼のあの女に対する態度が冷たくなっている。私が思うに、やっぱり人同士で長く付き合うのなら、外見や成績ではなくきっと人間性が大事なのだと思う。彼女は確かに外見はいい。おっぱい大きいし、顔だって目がぱっちり。私も医学部の中では……というよりも大学生の中ではかなり可愛い方だと思うけど、彼女の方が魅力的な外見をしている。そんな彼女が彼に愛想つかれ始めているところを見ると、そんな風に思う。

 とか言いながら、結局彼は彼女のそばに居続けている……なんかとても悲しい気分になってくる。人間が行動するためにはなにかしら爆発が必要であることはわかる。私みたいな理系的な人間に伝えるために、比喩するなら「行動決断のための活性化エネルギー」が必要であるということである。きっと彼は彼女と惰性で付き合っている。

 決断するのが、面倒だからエネルギーが必要だから、そんなことを理由に結論出せないのは当たり前のことである。だけど、それが原因でストレスがたまったり、自分の行動に支障が出てしまうことも当たり前であり、それをわかっていながら続けることは非常に愚かなことだと思う、あくまで客観的にはね……。だって、損しているんだもん。彼女は実家暮らしだから、しょっちゅう家に彼女を泊めないといけないし、彼とその友達の聞こえてきてしまった会話から察するに毎日のように体を求められるらしいし、彼の疲れた顔や授業中に見せる寝顔を見ると、それが弊害になっているのは間違いないと思う。

 私は彼のそんな様子を見ながら思ってしまう、別れればいいのに、って。彼の友達だって、そんな愚痴を聞きたくないだろうし、彼だって精神的にも肉体的にも限界が来ている。それをサッカーサークルやこの学部の詰め込み教育という全く関係ないもののせいにして、自分の精神をすり減らしていくのは大好きな私から見たって彼をフォローできない。

 それにもっと言えば、もしもあの女が彼のことをしっかりと大事に思っていれば、彼の思いをしっかりと読んだり聞いたりして無理はさせないはずだ。それをしてくれないということは、あの女は間違いなく「彼を愛してあげている自分が好き」とか「彼氏がいない自分に存在感を見いだせない」とか「自分の性処理係が必要」みたいなことをつまりは自分本位の理由でしかないのだろう。だから、私はあの女を好きになれないし、大嫌いだ。

 ねぇ……君は私以上に君を見て、思っている人がいると思う? 私以上に私の様に尽くしてくれる人なんていないよ? だからさ、お願い。私を見てくれたっていいじゃん。ね? ……ね?

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