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第十一章:結局私の言葉なんてどうでもいいんだよね?

 私は理知的な人間で、本能的に直感的に動くようなことはないようにしているつもりである。小学生の時などは怒って自分の体が思った通りに動かないで、怒りに身をまかせるようなことはあったが、もうそれ以降は一度もなかった。でも、その理性は今日十数年ぶりに決壊した。それは唐突で自分でも自分に驚いた。

 彼と話している時に、あまりにもたまりに溜まっていた彼からへのストレス、自分で増長させてしまった彼の思いへの不安感が掛け合わさって、私は彼の愚痴に対して文章を送った。

「少し通話をしない?」

 LINEで送ったその文章は怒りの表れで、私は彼と通話をした、通話なんて初めてだったけど、私は彼にこれまで言いたかったいくつかのことを言った。ずっと言いたかった、「別れたほうがいい」も言ったし、「あなたに彼女はふさわしくない」とも言った。でも……まだ私には言えなかった、「私はあなたが好き」だということを。

ただ……彼の返事は「うん」とか「確かに」といった熱のない返事で私の言葉なんてなにも響いていない気がした。そういう返事を聞くたび、すごくイライラした。私はなんのためにあなたのためにこんなに悩んでたと思うの? どれだけ私が勇気を出して、こんな言葉を話しているのかわかってるの? 

 彼は通話の切り際に、一言「ありがとう」と言った。その言葉にももちろん熱はなく、どこか不完全燃焼感があるようだった。その思いのこもっていない感謝の言葉は私の思いを酷く逆撫でした。ただただ腹が立って、ムカついて……でも好きで、大好きで……私はあなたが好きなままだった。

 思いが募って、口から勝手に言葉が出た。

「こんなに思ってるのに……ねぇ……責任を取ってよ」

 もう通話が切れているスマートフォンを口に当てて、言った。同時に目から涙が流れ出た。ずっと涙が出た。同時に嗚咽が止まらなかった。涙は止まっても目から何か出ている感覚があった。きっともう涙が枯渇して、でも涙腺は泣こうとして開いたままだからだったと思う。

 やっと涙が終わって、ボーっとしていると妹が心配そうに部屋をのぞいているのに気が付いた。妹に心配をかけたことを謝って、しっかりしなくちゃなって思った。でも、私はまた道しるべを見失ってしまった。彼に勇気を出して、彼女と別れるように指南すれば、きっと何かが変わって、私に何をすればいいのか教えてくれると思った。でも、何も変わらない

 あなたは所詮、私をストレスの発散に使っているだけで、私の言葉なんて何にも聞いていないんだね……。

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