第九章:なんでそんなことを私に相談するの?
仲良くなり始めて、2カ月が経とうとしていた。2か月に渡った顕微鏡の実習も終わりにかけていた。そんな中、私は彼と約束をしていた。まあ残念ながらというか、当然ながらデートとかではない。しっかり者の彼はそんな浮気はしない。勉強についての質問だ。本来なら、私の地味グループの女の子たちと彼のイケイケグループのみんなで、顕微鏡の部屋に行って勉強する予定だったか、地味グループの友達は私に気を利かせたかイケイケ感が嫌なのかで断られてしまった。彼の友達もバイトなり部活なりでドタキャン。結局、私と彼だけになってしまった。これも運命のせいなのかなって思いながらも、そうなっても一緒に勉強してくれる彼にやっぱり可能性を感じてしまう馬鹿な私だった。
いざ勉強は始まると、教室の予約した時間である10時から17時の7時間をフルで使うことはなく、午前中の2時間はしっかりと勉強したが、午後一緒にご飯を食べてからの1時前後くらいからは雑談ばかりで勉強はほとんどしなかった。とても楽しいのだけど、内容が少しイラつくような嬉しいような内容だった。
雑談のテーマはほとんど彼女の愚痴だった。紳士な彼が下ネタを女子に振るってことはないけど、ギリギリなテーマまで彼は愚痴を言った。「一緒にご飯を食べないといけない」「一人の時間が取れない」「彼女が家に帰っても電話しないと不機嫌になる」「勉強ができなくて教えないといけない」「女子と話すとすぐに浮気だと叫ぶ」そんなことをスラスラ尽きる様子もなく話すの彼の顔は焦燥には満ちていたが、私は少しイライラした。なぜならば、彼が私に何をしてほしくて私にこんな愚痴を話すのかがわからないからだ。
私に解決策を提示してほしいわけでもない。ただ聞いて欲しいだけ、こんなのじゃ彼の彼女への不満を消費させてあげているだけ、なんで私があの女が彼と長く続くように補佐してあげるなんて、意味が分からない。でも、なんども話を切ろうとしても切れない。きっとそれは彼と話をしていたいっていう自分の欲望があったからだと思うし、無理矢理話を切って彼に嫌われたくないからという気持ちもあったからだと思う。
きっとこれを人に相談するとみんな無責任に言うと思う。
「いいじゃん、うまく相手を別れさせて狙えるねらい目じゃん」
みたいなことを言われても私にはそんな技術はないし、うまくやれる自信はないし、やり方もわからない。さっき言った通り、むしろあの女と彼が仲続きする補佐をしてしまっているようにしか思えない。
彼の愚痴に付き合ってあげたくて、でも付き合ってあげたくないそんな自分の弱さがイライラした。私と彼が一緒にいるのは運命かもしれないのに、その内容がこんなみじめだなんて、私は耐えれない……。
だから、私は彼に意地悪をする。私は言った。
「やっぱりそういうことを改善したいのなら、ちゃんと話し合うしかないんじゃない?」
彼は「うーん」と悩んでいた。それもそうだ、彼だってわかっているはずだ。ちゃんと話せば、相手の道理がおかしいから自分は悪くなく、結論として関係がこじれるってことを。だから、これが私の精一杯の愛のある意地悪なのだ。