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水色の天

作者: 猫柳美鳥

 世の中には気にしなきゃいけないことが多すぎる。

 自業自得で首を絞めて、現実逃避、液晶を見つめ、お手上げってな風に手を組み後頭部に押し当てる。

 手を組むといえば、運動会の開会式直後のプログラムナンバー1のアレ。

 目に痛いほど水色のそらに向かって、組んだ手のひらをうんと伸ばす。

 そういう時代があったのだ、きっと誰にでもあったのだ。


 年を取ると、必然的に社会に出なくちゃならない。

 廊下を走らないこと、すみずみまで綺麗に教室を掃除すること、給食を素早く配膳することが死ぬほどうっとうしくて大変で理不尽に感じていた。

 そんなかけがえの無い、二度と戻らない時があったのだ。


 宿題を忘れてもなんとかなった。明日は必ず持ってくるのよで、開放された。

 今、自分が締め切りを守れなかったら、不十分な書類を仕上げたら、自分だけでは済まされない。そういう責任を負っているのだ。悩んでいる暇も、愚痴を零す暇もないのだ。


 もちろん大人は子供より自由だ。だけど本当に? お父さんは決めてくれない、お母さんは助けてくれない。大人になるってそういうことだ、自由ってそういうものらしいのだ。

 直視しろ、情報を視界に入れろ、そして自分で決断するのだ。


 手を動かすしかない、明日はやってくるから。やれば出来る、前を向いて普通にするだけ。

 たまには子供が知らない、苦い味の飲み物を飲んで気晴らしして、元気を出そう。

 

 帰りがけに見た、我らが母校は耐震やらで新しくなっちゃって、記憶の中のそれとは似ても似つかない。それでも響く笛の音を聞いて思い出す。悩み、協力し、作り上げたことを思い出す。色あせず、笑い声に満ちた映像がなだれ込んでくる。


 そういう時代があったのだ。そして今を歩んでいくのだ。

 かけがえのない人生を、もう振り返らないで、真っ直ぐに、命尽きるまで。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読ませていただきました。遠い記憶の中のほろ苦く懐かしい感情……。そんなことを思わされました。誰にでもあって、普段は忘れている風景を切り取った作品ですね。ありがとうございました。
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