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きの娘!  作者: 風雅
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第三話:ほのぼの

 主人公が変態すぎる......でも、嫌いになれない!

 槍ちゃんに連れられるまま、四人かけのテーブルの上にお菓子と高級そうなカップとポットの用意された部屋に来た。この独特の香り、紅茶だな。

 アマニタさんは右の席に座り、鼻歌を歌いはじめる。

 槍ちゃんの方も、座り慣れているのであろう、アマニタさんの隣の席に躊躇いなく座った。

 なら、俺はアマニタさんの顔をマジマジと見れるようにアマニタさんの正面の席で!


「も~、アップルパイが冷めてもうたやん!」

「すまへん、すまへん、秋宏とベニちゃんがお寝坊さんやったんや」


 凄い剣幕で槍ちゃんを睨む剣ちゃんの手には、少しだけ湯気の立ったパイが持たれていた。

 若干、冷めてしまったとはいえ、この香しい香りは食欲をそそる。


「はじめまして、私は狐野 剣です、えっと、秋宏さんでいいですか?」

「ああ、じゃあ、俺も剣ちゃんと呼ばせてもらうよ」


 やっぱり、槍ちゃんに瓜二つだ。この細くて愛らしい目なんて生き写しに近い。

 不意に槍ちゃんの方を見てみると中指を立てられている。妹に手を出すなとでも言っているのだろうか? まあ、心配はいらない。あと十年も経てば話は変わるが、俺はYESロリータ、NOタッチ主義者だから手を出すことはまずない、多分!


「わ~アップルパイだ~」


 切り分けられたアップルパイをモグモグと食べ進めるアマニタさん。


「ねえ、槍ちゃん、俺って、何時間くらい寝てたの?」

「大体、一時間くらいやな」

「......高エネルギークッキーを食べてあれだけの量を」


 多分、俗に言ういくら食べても太らない体質というのだろう。でも、本当に居るもんだな......男の俺でも、トレーニングをおこたったらシックスパックがぼよぼよの脂肪になってしまうのに。

 医者志望の友人に聞いたことがあるのだが、太りやすい体質の人間は、小さい頃のに飢餓状態によくなっていた人間で、その飢餓状態を耐えるために体が栄養を蓄えやすくなるとか。まあ、確かに、俺の幼少期はロクな物を食べてなかったな~......サソリの生臭さは一生忘れない。


「秋宏、どないしたんや? えろう、険しい顔しとるで......」

「ああ、すまない......前世の記憶が蘇った」

「ダウト、現世の記憶やろ」

「......まあ、そうなんだが、俺には前世に近い」


 さっきまでの馬鹿みたいに腑抜けた顔とは百八十度違う悲しそうな顔に、アップルパイを食べていたアマニタさんさえ、フォークを止めている。


「ああ、すまない。辛気臭い顔は俺らしくないよな~」

「......悩みがあるなら、話してください。うちでよければ、いくらでも相談に乗りますから」


 心配そうな瞳で俺のことを見つめる剣ちゃん。そんな目で俺を見ないでくれ、俺は、君の思っているより、薄汚れた人間なんだ......

 叫んで逃げ出したい気分だ。こんなにも、他人に思われ、他人に心配されたことは、本当に久しぶりで、頭も体も混乱している。

 早くはなしを切ろう、過去を探られるのは、どうもこそばゆい。


「――男も女も、秘密の一つや二つ有った方が魅力的だろ? 黙秘権を行使しまーす!」

「......」


 いわえる、ジト目というやつで俺のことを見つめる。


「剣ちゃん、人間には、触れられたくない弱みとか、トラウマとかが多く存在する。こんなバカみたいな俺にも、多くのトラウマが存在するんだ。それもう、ふつうの人の倍くらいにね。だからこそ、俺は人を傷つけないために、笑わせるために、バカみたいなことを言ったり、バカみたいな行動をする。でもね、不意に思い出しちゃうんだよ、思い出したくない思い出、楽しい思い出の方が多いのに、走馬灯のように走り出す記憶が......」

「剣、アタシらの負や。秋宏のトラウマはえろう、深いようやし、アタシらが話を聞いても、そのトラウマは消えへん。そのことに関しては、そっとしてようで」

「......わかった」


 槍ちゃんは人の痛みや、人の苦しみをよく理解しているようだ。

 下手に他人が他人の人生に介入したら、逆に傷つけてしまうことがある。それが一番いけないんだ。人を包むやさしさが、毒へと変わる。薬だってそうだ、病気の時に薬を飲めば、回復が早くなる。でも、健康な状態で薬を飲めば、体を傷つける。


「このアップルパイ美味しいね~剣ちゃんが作ったの?」

「はい、美味しいリンゴを譲ってもらったので、頑張って作ったんです」

「そうか~、君は良いお嫁さんになるよ」

「そ、そんな」


 顔を完熟トマトのように赤らめる剣ちゃん、俺が性犯罪者なら今すぐにでも襲ってるな!

 不意に槍ちゃんの方を見てみると、やっぱり中指を立てている。

 アマニタさんは緊迫した空気が終ったことを悟って、また、パクパクとアップルパイを食べ進めている。この人の胃袋の構造を知りたい。


「そうだ、アキヒロさん、さっき食べさせてもらったクッキーまだありますか?」

「ああ、カロ......高カロリークッキーですか、えっと、リュックサックの中に一つだけ残ってますけど」

「なんや? その高カロリークッキーてんは」

「はい、お菓子ならうちも興味あります」


 三人とも、目をキラキラと輝かせている。

 まあ、高エネルギークッキーは美味いからな、この三人が目を光らせることも頷ける。


「えっと、俺の背負ってたリュックサックはどこだ?」

「ああ、そこに立て掛けてあるで」

「サンキュー」


 立て掛けているリュックサックのファスナーを開け、隠しポケットの中に入れてある高エネルギークッキーを取り出す。この黄色い箱、昔から変わらないよな、ほんと、小学生の頃かわ変わらんよな。


「それが高カロリークッキー......黄色い箱が食欲をそそるわ~」

「このクッキー美味しいですよね~」

「作れるなら、うちも作ってみようかな」

「じゃあ、一人一つで」


 ビリビリと包装を破いて、一人ずつ手渡す。

 三人は一口、また一口と高カロリークッキーを口にし、その味を確かめる。


「美味い! 今までに食べたことのないクッキーや!?」

「中には、ピーナッツとか、オレンジピースとか、色んなのが入ってて、作るのには、すこし苦労しそうや」

「うまうま~」


 三人共がほぼ同時に高カロリークッキーを食べ終わり、俺が手にしている高カロリークッキーを物欲しそうな目で見つめてくる。

 ああ、そんな目で見るな! 興奮してもっこりしちゃうだろ!?


「お姉ちゃん、もう一個食べたら作れるで......」

「嘘言うなや、剣なら食べんでも作れる」

「アキヒロさん、そのクッキー、要らないならください!」


 三人の期待の視線をどう受け流せばいいのだろうか、俺は究極の選択を迫られている。

 槍ちゃんに食べさせれば、八対二のツンデレが九対一のデレデレ状態にクラスチェンジするかもしれないし!

 はたまた、剣ちゃんに食べさせれば、この御恩感謝永遠に状態でウハウハの可能性も!

 アマニタさんに食べさせれば、その豊満なおっぱいを......グへへ......


「ふふふふっ、これが欲しいのであろう――」

「はむっ」

「うひゃ! アッー!?」


 高エネルギークッキーを持っていた右手人差し指と親指に温かくてヌメヌメとしたいやらしい何かが!? ダメ~そんなにヌメヌメさせたらおっきくなっちゃうよ~


「なめちゃん、来とったんか?」

「ん? 今来たところだよ~」

「ビクンビクン......ああ、これがヘブン状態なのか......」


 快楽に溺れ、痙攣する体。

 痛みにはめっぽう強いが、快楽には人一倍弱いんだよな~


「あの、大丈夫ですか?」

「いや、少しだけ天国をさまよっただけだ、目に見える害はない。逆に利があるくらいだ」


 力の抜けた足を強引に使って立ち上がる。だが、腰が抜けているから、生まれたての小鹿のように今にも倒れて落ちてしまいそうだ。


「この人、キノコシスターズの新メンバーさん?」

「嫌々、どう見ても秋宏は男やろ、シスターじゃなくてブラザーやろ」

「どうも! 貴方の兄の相沢秋宏です! 素敵な近親相姦しませんか!!」


 まるで樹液のような粘液の服に、豊満なバストを包むブラジャー、ズボンは物凄く短いデニムパンツ。体はとても健康的で、脂がよくのっていて美味しそうだ。髪は、これまたヌルヌルの粘液のようになっており、小さい帽子も被っている。

 顔はとても明るそうで、三人との交友関係を見る限り、明るい性格なのだろう。


「わたしは滑木ぬめりぎ 滑子なめこ、他には、なめこなんかとも呼ばれてるよ」

「うん、予想はしてた。俺は相沢秋宏」

「秋宏か~、天国地獄......アハハハハ! 地獄確定だね!!」

「それ流行ってんの!?」


 一日二回、名前をディスられるのは初めてだ。地味にショック。

 本当に、天国地獄名前診断とか、何十年前の流行だよ......


「でも、ここら辺では見ない顔だね~、もしかして外来人なのかな?」

「外来人?」

「ああ、その反応なら外来人確定だね」

「すまないが、外来人の詳しい話を聞かせてくれないか」

「うん、いいよ」


 滑子ちゃんに外来人に付いて詳しい話を聞くことにした。

 関西弁は難しい......

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