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きの娘!  作者: 風雅
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第一話:キノコにご用心!

 エリンギが好きです。バター炒めが好きです。キノコの中で一番好きです!

「何処なんだ、ここは......」


 薄暗い森の中をひたすら歩き続けて一時間近くなるが、一向に道らしき道は姿を現さず、足が棒のようになってしまった。

 この排気ガスむんむんの森林伐採大好きなご時世に、虫取りに行くもんじゃないな、遭難してしまう。

 今から約二時間ほど前、無性にカブト虫を取りに行きたい気分(テレビで取ってたから)になったので、幼い頃にカブト虫を乱漁していたクヌギの木の場所に行こうとしていたのだが、幼少の記憶だったゆえ、恥ずかしながら遭難してしまった。

 で、かれこれ、一時間と少し、道を探しながら歩いているのだが、一向に道の気配も人の気配も感じられない。まあ、せめてもの救いが日が高いということと、こんなことがあろうかと非常食の高カロリークッキーをリュックサックの中に三箱も入れてきたくらいだ。


「ふぅ~......インドアな俺がよくもまあ、ここまで歩いたもんだね~」


 後ろを振り返ってみると自分が歩いた道の草が踏まれて、一種の獣道と化している。それも、結構長く続いている。なんか、達成感があるな!

 その場に立ち止って、深い深呼吸をして、山の空気を楽しんでみる。さっきまでは、虫を取ることに夢中になって、こういう自然の美しさや空気の美味さに気付かなかったからな、落ち着いて深呼吸することも悪くない。

 目に優しい緑色が優しく包む世界。なんか、感動出来るな......

 目を瞑って、自然の音によいしれてみる。すると風で葉が揺れる音や生き物が動く音が鈴の音のように可愛らしく鳴り響いている。うん、自然はいいな~

 しばらく自然の合唱を楽しんでいると自然の中では、まず聞こえる筈のない、ぐぅ~という音が聞こえはじめた。まるで、腹の音のような音だな? もしかすると俺みたいに遭難した人が!?


「なわけないよな......」

「うぴっ......だれか~......」

「......なことあるかも」


 俺の約五メートル先に腹の音を楽器のように鳴らす一人の女性が倒れていた。

 見る限り......いや、腹の音がなっている時点で、腹が空いている以外に何がある? ここで見捨てるのも、人間としてどうだと思うし、カロ......高エネルギークッキーを。


「くんくん......甘いお菓子の香りが~」

「えっと、お腹が空いているなら、食べてください。一応、麦茶もありますよ」


 女性の口元に高エネルギークッキーを近づけると小さな口をいっぱいに広げて、はむはむと美味しそうに食べる。

 それにしても、日本人離れした容姿だな? 髪の毛はアルノビのように真っ白で緑色のリボン? のような髪飾りをしている。それに、薄目ながら、血のように紅い目が見えている。顔の形も日本人というよりかは、ヨーロッパ、一番似ているのはロシアとか、ウクライナとかの寒いところの顔だ。

 でも、この服装は......。胸元が大胆に開いたドレスのような服。色は桃と赤と白のスリートーンカラー、どう見ても登山や俺のように虫取りに来た格好ではない。


「うう......まだ足りないわ~」

「え? 一箱で満腹にならない......男の俺でも、一箱半食べたらお腹いっぱいなのに......」


 渋々、リュックサックの中から二箱目の高エネルギークッキーを取り出し渡す。女性の方も、大分、元気が出てきたのか、渡された箱や包装を自分で破いて美味しそうに食べ進めている。

 年齢は俺と同じくらいの二十代前半かな? 食べ終わったら、聞いてみる......いや、女性は年齢を聞かれることを嫌うとかいうし、それはやめておこう。


「口の中がパサパサするよ~」

「ああ、お茶をどうぞ」


 ごくごくと勢いよく水筒の麦茶を飲む。ゴクゴクと本当に音まで立ててやがる......ここまで豪快だと、逆に気持ちがいいな。


「ぷは~、生き返りました~」

「ああ、それはよかったです」


 ほっと一息ついて、彼女は俺の方をホンワカとした優しい顔で見つめ、口を開いた。


「危ないところをどうもありがとうございました。わたしの名前はアマニタ・ムスカリア、他には、ベニテングダケとも呼ばれています」

「ベニテングダケ? ......あ、俺は相沢秋宏です」


 前者の名前は理解できたのだが、後者の名前はあの有名な毒キノコだ。まあ、確かに髪の毛の色や服装なんかの色はベニテングダケのそれによく似ている。

 まあ、そんなことはどうでもいい。


「えっと、アマニタさんでいいですか?」

「ええ、苗字で呼ばれるのは、慣れていないので、逆に大歓迎です。でも、それなら、わたしもアイサワさんと呼んでもいいですか?」

「いえ、日本人は苗字が先に来るので......俺の名前は秋宏です」

「あ、そうだったんですか、なら、アキヒロさんで」


 にゃははとにこやかに笑って見せた。

 うん、凄い美人さんだな、胸も大きいし、性格も優しそうで悪くない。日本語も完全にマスターしているようだ......プロポーズ? いやいや! 俺は何を考えている!? 確かに、アマニタさんは美人さんで胸もデカいが、今さっき会った状態でプロポーズするなんて、無謀にも程がある。

 そうさ、最初はシャレオツな喫茶店でコーヒー&紅茶を飲むんだ! そして、段々二人の仲は親しくなり、最終的には......もっこり!


「えっと、どうかなさりましたか?」

「いえ、少し未来のことを......けっこ――!?」

「「ベニちゃんに何しとんねん!?」」


 顔に固い何かがのめり込む。ああ、拳より硬く、重く、強い。これは......足だ......

 数センチほど宙に浮き、地面に倒れて落ちた......疲れて眠るように.......

 最後までありがとうございました。

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