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魔女は黒髪がお好き  作者: 周
7/22

6:魔女と約束

月日はツルツルと流れ、いつの間にそんな感じに?!が、今後の課題だと思っています。

いつまでも成長しないのではないか、という僕の不安をよそに月日はつつがなく流れ、月の妖精の様だったDは、月の女神のように美しくなった。


「アル坊お腹空いた、飯はまだか?」


 口を開かなければ。


「D、せめてご飯と言ってくれる?」

明日から騎士見習いとして寄宿舎に入る僕にかける言葉が「飯」とは…

「固いこと言うな『ハラヘッタ』と言わぬだけでもマシであろう」

悪びれることなく盛りつけ前のおかずに手を伸ばす。

「D!!」

鍋をかき混ぜながら名を呼ぶと、しぶしぶと手を引っ込めた。

「む、感づいたか…鋭い奴め」

「ほらほら、机の上を片付けて。大事な物もあるんでしょう?」

挑発には乗らず、顎で指し示す。

「本当に最近は小姑のようだ…」

まだぶつぶつ言っている。

「D、いつも通りにしてくれるのは嬉しいけど、もう少し節目の情緒があっても良いと思うよ」

僕の言葉に「ハッ」と鼻で笑い、捲くし立ててきた。

「情緒とな!永の別れでもあるまいし。ましてや私とお前はたまたま居合わせた程度の間柄、巣立つのは拾った時からの定め、何の感慨があろう。260年における15年など、ほんの一時なのだよ」

「その割には口数が多いね」

横目で笑ってやった。

「ッ―~!アル坊のくせに生意気だ」

言葉負けした悔しさから、背中をポコポコと叩いてくる。

「はいはい。暴れないの。埃が立つでしょう?」

鍋を諦めて両手を封じ込めると、涙目が見上げてきた。

「すぐ泣く…」

左手でDの両手首を一纏めにして、右手を頬に添え親指で目元を拭う。

「アル坊なんか、さっさと騎士にでも何でもなりやがれ」

力無く呟かれて、思わず抱きしめていた。

「毎週末、様子を見に帰って来るから」

銀の髪を梳きながら、腕の中に語りかける。

「来なくて良い」

押し戻すかのように少しもがかれて、抱きしめる腕に力を込めた。


「必ず、帰って来るから」

 

今までも一人だったと笑う僕の魔女は明日からどうやって過ごすのか、それだけが心残りだった。


誤字・脱字・意味の通じない表現等ありましたら、そっとお知らせいただければと思います。

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