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魔女は黒髪がお好き  作者: 周
6/22

5:魔女の過去

取敢えず書き溜めたものをがーっとアップさせてもらってます。

掲載した時に文字数のバランスや、文章配置がどう反映されるのか、試行錯誤中です。

学校で剣術の授業を受けるようになってから、Dの腕前は相当な事が分かった。

「どこで習ったの?」

素振りが板についてきたからか少し余裕が出てきて、手を動かしながら横のDに訊く。

「昔、な」

言葉を濁される。

昔と言ってもDは10歳、僕とさほど変わらず育ってきたはずだ。


では「昔」とは、いつ?


よほど不思議そうな顔をしていたようだ。

そっと吐息をついたDが自分から言い出す。

「共に暮らすには何かと不都合なのかもな…。あらましだけでも教えよう」

一も二も無く頷いた。


「私は250年前に生まれた。それから何度か転生し今に至る。剣術を習ったのは最初の生の時、知り合いの騎士から手解きを受けた」

 

話の年月を感じさせないあっさりとした口調が、らいしいと言えばらしいのだけれど。

「えっと…いつ魔女になったの?」

「ふむ。そう呼ばれるようになったのは130年程前だ」

「え?生まれたのが250年前だよね?呼ばれるようになったのは130年前なら、その間に何があったの?って言うか、そもそも何で転生なんかできるの?」

「意外と細かい事に口を出すな…」

ぶつぶつと文句を言われて、心外だと伝えるために右眉を上げ左目を眇める。

「そう睨むな」

苦笑一つでいなされた。

「もともとは遥か北方にある魔道師の村に生まれた。20歳の時に転生の禁呪に染まり故郷を放逐され、ここに移り住んだ。130年前にとても人に見せられない姿を村人に目撃されてな、それから魔女と呼ばれるようになった」

途中、何故か早口になり聞き取り辛かったけど、さっきよりはだいぶ詳しくなった。

不明な点を気になった逆の順番から訊いてゆく。

「禁呪って?」

「人の世の(ことわり)を乱すゆえに使うことを禁じられた魔法、だ」

「人に見せられない姿って?」

「聞こえていたのか…人に話せない姿だ」

「僕にも?」

「例え神にでも」

「魔女が神を語るの?」

「私にだって信仰する神くらい居る。自分で名乗った魔女ではないしな」

「あぁ、そっか」

そして一番気になっていた事。

「剣を教えてくれた騎士って、伝説の騎士様?」

「…いいや、名も無い騎士だ。剣の腕は立つが優し過ぎる人だった」

「そう…」

英雄奇譚を聞けることを期待していた僕は肩透かしを食らって、Dのさみしそうな瞳に気付けなかった。

「Dは何回生まれ変わったの?」

「…その後に続くのは『どうして死んだの?』か?間違っても楽しいお話にはならない。ましてや坊やには決して聞かせられない」

無表情になった顔は、それ以上訊くなと云っていた。

「最後に一つだけ…」

片眉が不機嫌そうに「何だ」と促す。

「250年生きてて、どうしてDは料理が下手なの?」

「うるさい、黙れ!アル坊のくせに生意気だぞ!!」


どうやら魔女は料理のセンスが無いらしい。


誤字・脱字・意味の通じない表現等ありましたら、そっとお知らせいただければと思う次第であります。

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