5:魔女の過去
取敢えず書き溜めたものをがーっとアップさせてもらってます。
掲載した時に文字数のバランスや、文章配置がどう反映されるのか、試行錯誤中です。
学校で剣術の授業を受けるようになってから、Dの腕前は相当な事が分かった。
「どこで習ったの?」
素振りが板についてきたからか少し余裕が出てきて、手を動かしながら横のDに訊く。
「昔、な」
言葉を濁される。
昔と言ってもDは10歳、僕とさほど変わらず育ってきたはずだ。
では「昔」とは、いつ?
よほど不思議そうな顔をしていたようだ。
そっと吐息をついたDが自分から言い出す。
「共に暮らすには何かと不都合なのかもな…。あらましだけでも教えよう」
一も二も無く頷いた。
「私は250年前に生まれた。それから何度か転生し今に至る。剣術を習ったのは最初の生の時、知り合いの騎士から手解きを受けた」
話の年月を感じさせないあっさりとした口調が、らいしいと言えばらしいのだけれど。
「えっと…いつ魔女になったの?」
「ふむ。そう呼ばれるようになったのは130年程前だ」
「え?生まれたのが250年前だよね?呼ばれるようになったのは130年前なら、その間に何があったの?って言うか、そもそも何で転生なんかできるの?」
「意外と細かい事に口を出すな…」
ぶつぶつと文句を言われて、心外だと伝えるために右眉を上げ左目を眇める。
「そう睨むな」
苦笑一つでいなされた。
「もともとは遥か北方にある魔道師の村に生まれた。20歳の時に転生の禁呪に染まり故郷を放逐され、ここに移り住んだ。130年前にとても人に見せられない姿を村人に目撃されてな、それから魔女と呼ばれるようになった」
途中、何故か早口になり聞き取り辛かったけど、さっきよりはだいぶ詳しくなった。
不明な点を気になった逆の順番から訊いてゆく。
「禁呪って?」
「人の世の理を乱すゆえに使うことを禁じられた魔法、だ」
「人に見せられない姿って?」
「聞こえていたのか…人に話せない姿だ」
「僕にも?」
「例え神にでも」
「魔女が神を語るの?」
「私にだって信仰する神くらい居る。自分で名乗った魔女ではないしな」
「あぁ、そっか」
そして一番気になっていた事。
「剣を教えてくれた騎士って、伝説の騎士様?」
「…いいや、名も無い騎士だ。剣の腕は立つが優し過ぎる人だった」
「そう…」
英雄奇譚を聞けることを期待していた僕は肩透かしを食らって、Dのさみしそうな瞳に気付けなかった。
「Dは何回生まれ変わったの?」
「…その後に続くのは『どうして死んだの?』か?間違っても楽しいお話にはならない。ましてや坊やには決して聞かせられない」
無表情になった顔は、それ以上訊くなと云っていた。
「最後に一つだけ…」
片眉が不機嫌そうに「何だ」と促す。
「250年生きてて、どうしてDは料理が下手なの?」
「うるさい、黙れ!アル坊のくせに生意気だぞ!!」
どうやら魔女は料理のセンスが無いらしい。
誤字・脱字・意味の通じない表現等ありましたら、そっとお知らせいただければと思う次第であります。




