3:魔女に決意
長さがバラバラで読み辛いかも知れません…何分、手探り状態で、申し訳ないですが、よろしくお願いします。
「アル坊、さっさと起きろ」
揺すり起こされて、Dの部屋で床に座ったまま寝ていたことを思い出す。
目を上げれば、ベッドの上に昨夜の少女が手を掴まれて苦笑している。
「月の魔法が見せた夢ではなかったんだ…」
寝起きの頭は、まだハッキリとはしていない。
「!!しまった!そういう設定にすれば良かった!!」
心底悔しそうな美少女が、空いた手で額を打った。
「なんだそりゃ」
昨夜の言葉をそっくりそのまま返した。
「うるさい。良いからサクサク支度をして学校へ去ね!」
「Dは?行かなくて良いの?」
素朴な疑問が口をつく。
「はぁ?!どんな羞恥プレイだ!」
「だって、10歳…」
言いかけて遮られる。
「だ・ま・れ!今後一切答えないと言っただろ!」
「答えないとは言われたけれど、訊くなとは言われていない」
「かーっ!あー言えばこう言う!!朝から絡んでくるな!朝食を抜くな!遅刻をするな!!」
腑に落ちないが仕方が無い、時間も無い。
急かされながらも家を出て、なんとか学校には間に合った。
「僕、騎士になる。今日、先生に話してきた」
夕食を挟んで向かいに座るDは少女のままだった。
どうやら、魔女の姿は面倒らしい。
「そうか」
返された言葉は素っ気ないが、優しく微笑まれた。
「どうしてか訊かないの?」
「必要無い」
「どうして?」
「なぜそこで逆質問する?」
「気になるから」
鼻で笑われた。
「アル坊が独り立ちできるように学校へ通わせている。進むべき道を見付けたのならば応援するだけで、何故かには興味が無い」
スープを飲むために伏せられた瞳に、色素が薄く長い睫毛の淡い影がかかる。
思わずそれに魅入った。
「アル?」
不審そうに見上げてきた瞳とまともに合わさる。
ルビーの様な赤い澄んだ瞳。
「そ、なんだ」
裏返りかけた声、詰まる言葉、怪訝そうな相手は二の句を継がず、沈黙が流れる。
ふと、学校に上がる時にもそう言われたのを思い出した。
と同時にDと暮らしていることをきつく口止めされたことも。
魔女と暮らした事実など無いことにして、普通の人間として身を立てろ、と。
それは、卒業したらDを捨て街へ出て行けということ。
幼かった自分はそれが当たり前なのかと思っていたが、今の僕には到底受け入れられない話だった。
騎士になる、それは今朝決めた事。
理由は簡単、Dを守るため。
誤字・脱字・意味の通じない表現等ございましたら、そっと教えていただけたら嬉しいです。