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魔女は黒髪がお好き  作者: 周
2/22

1:魔女の生態

初めての投稿で手探り状態です。

見苦しくないよう努めたいと思いますが、暖かい目で見ていただけたら幸いです。

魔女は寝起きが悪い。


黒いフェルトのマントにすっぽりと覆われた体は折れ曲がり、白髪に縁取られた目深に被ったフードからわずかに覗く鼻と顎は三日月の両端の様だ。時折覗く瞳は赤く、眉間に揺れる涙型の石も紅い。

その姿でよろよろと部屋から出て来て、食卓の椅子に着くまでにあちこちにぶつかる。

威厳も何もあったものではない。

肩をすくめながら、伸び上って朝食を机に並べた。

魔女の前にはパンとサラダとスープ、僕の前にはそれにベーコン添えの目玉焼きと牛乳を追加したもの。

「アル坊や、今日のドレッシングは何?」

見た目の割に張りのある低い声が訊ねてくる。

「オリーブオイルとビネガーと塩と胡椒とバジルを少々」

胡椒と~の辺りでサラダの上にミルをかざし、ゴリゴリと挽きかける。

「坊やの作るご飯は美味しいな」

まだかけている横からフォークでつつく。

「D!」

名前を呼ばれて鷹揚に手を引っ込めた。


追加しよう、魔女は行儀も悪い。


そして、料理も下手だ。

と言うか大雑把過ぎて、しょっぱいか味がしないか何かに挑戦したか、極端な味の物しか出来上がらない。

その割に、美味しい物には目が無い。


必然的に幼い頃から僕が料理担当になった。

仕込まれた、と言うより拾われて養われている者として、自分にできる恩返しがしたかったから。


そう僕は魔女に拾われた。

正確には魔女の家の前に捨てられたのだ。


おくるみには身元を示すものは一切無く、ただ「アルバート」と走り書きされたメモがあっただけ、らしい。

名前を付け半年ほど育み、魔女の元に捨てる。


意味が分からない。


何故って、魔女は赤子の生き血をすする忌むべき存在と言われていたから。

そこに捨てるということは、託すのではなく供物として捧げるということ。

しかし、添えられるべき願いは無かったらしい。

魔女が隠していなければ、だけど。

幸いにも僕を拾った魔女「D」は、菜食主義だった。


「黒猫の代りにくれたのだ、きっと」


赤い瞳を細めて魔女は笑う。

確かに僕の髪と瞳は、この辺りでは珍しい黒だけど。

お陰様で奇妙な同居は今年で8年目を迎えた。



遠い眼をした僕を尻目に、スープの中の肉片を僕の器へと移す。

「D!それぐらい食べろよ」

「良いではないか、育ち盛りの君に進ぜよう!」

「良くない!僕の作った物にケチをつけるの?!」

「美味しいです!アルバートの作る物は何でも美味しいなぁ!」

嘘くさい言葉。

「ったく、僕が来るまでどうしていたのさ?」

呆れて目を細めると、とぼけたように話を逸らす。

「お、そろそろ学校へ行くお時間では?」

馬鹿にした言い回しに軽く溜息が出る。

「あー、幸せが逃げるぞ」

すかさず揶揄が飛ぶ。

「…逃げるほどの幸せなんて無いよ」

ぽつりと言うと、


「それなら、これから自分で掴み取れば良い」


返ってきたのは、珍しく真面目な口調。

僕の幸せ、口の中で転がすように呟いてみた。

「美味いビネガーのあるうち、さ」

彼女は時々良く分からない事を言う。

「D~!」

「ほらほら、早くしないと遅刻するぞ」

はっと窓を見ると、陽の高さは確かにギリギリな時間であることを告げていた。

片付けもそこそこに、僕は学校へ向かう。


追加しよう、魔女は人を煙に巻くのが好き、らしい。


誤字・脱字・意味の通じない表現等、不具合ありましたら、そっと教えていただければ嬉しいです(*^^*)

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