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魔女は黒髪がお好き  作者: 周
10/22

9:魔女の条件

あぁ、このサブタイトルはどうしても使って見たかったんです。

「アル坊、風邪をひくぞ」


肩を揺すられる。

日に温まる頭と揺すられ具合が気持ち良い。

手の中には柔らかな感触、大切な宝物。

心地よい眠りの名残を惜しみつつ顔を上げれば、朝日に輝く金の髪・澄み渡る青空の様な薄青い瞳の美しい人、僕を捕えて離さない人。

「…おはよう、D」

愛しい手のひらに頬ずりをして、軽く口付けた。

声も上げずに逃げ出そうとした手を、苦痛を与えない程度に握り締める。

上目遣いに伺うと、口を引き結び、恥じらうように頬を染める可愛い姿。

「おはよう、D」

囁きながら今度は甲に唇を寄せたら、さすがに逃げられた。

内心舌打ちしつつも微笑みを浮かべる。

「…なんだか性格が変わったようだぞ」

口付けられた手をさすりながら睨まれた。

「そう?寝起きだから、かな」

「あぁ、私も朝は弱いからな…って、寝ぼけて人の手に接吻するんかい!」


見た目が多少変わっても、DはDだった。


「ところでアル坊、宿舎に戻らなくて良いのか?」

時間を確認するまでも無く、罪状は自習放棄と馬の無断持ち出し無断外泊、午前中の無断欠席。同輩に託した言い訳が奏功することを祈るのみ、だ。

「大丈夫だよ。普段の僕は優秀で真面目な、覚えめでたき優等生だからね」

半ば自分に言い聞かせるように笑った。

「自分で言うか?」

「本当の事だから」

笑いを深くする。

「やっぱり性格変わった…あぁ、髪がほこほこしているな」

Dもつられて笑いながら頭をぽふぽふと触ってきた。

「黒いからね。あいつの髪は、栗色だったね」

挑発的に話を変えてみる。

Dの体が強張るのが分かった。


「昨日の人は、誰だったの?」


できるだけ声に感情を乗せずに切り出した。


「あやつは…私のギルバートに似た姿をした、リリー」


「…詳しく話してくれるね?」


さすがに瞳の奥に燃え上がる感情は隠せなかった。


誤字・脱字・意味の通じない表現等ありましたら、こっそりとお知らせくれたらとても嬉しいです。

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