9:魔女の条件
あぁ、このサブタイトルはどうしても使って見たかったんです。
「アル坊、風邪をひくぞ」
肩を揺すられる。
日に温まる頭と揺すられ具合が気持ち良い。
手の中には柔らかな感触、大切な宝物。
心地よい眠りの名残を惜しみつつ顔を上げれば、朝日に輝く金の髪・澄み渡る青空の様な薄青い瞳の美しい人、僕を捕えて離さない人。
「…おはよう、D」
愛しい手のひらに頬ずりをして、軽く口付けた。
声も上げずに逃げ出そうとした手を、苦痛を与えない程度に握り締める。
上目遣いに伺うと、口を引き結び、恥じらうように頬を染める可愛い姿。
「おはよう、D」
囁きながら今度は甲に唇を寄せたら、さすがに逃げられた。
内心舌打ちしつつも微笑みを浮かべる。
「…なんだか性格が変わったようだぞ」
口付けられた手をさすりながら睨まれた。
「そう?寝起きだから、かな」
「あぁ、私も朝は弱いからな…って、寝ぼけて人の手に接吻するんかい!」
見た目が多少変わっても、DはDだった。
「ところでアル坊、宿舎に戻らなくて良いのか?」
時間を確認するまでも無く、罪状は自習放棄と馬の無断持ち出し無断外泊、午前中の無断欠席。同輩に託した言い訳が奏功することを祈るのみ、だ。
「大丈夫だよ。普段の僕は優秀で真面目な、覚えめでたき優等生だからね」
半ば自分に言い聞かせるように笑った。
「自分で言うか?」
「本当の事だから」
笑いを深くする。
「やっぱり性格変わった…あぁ、髪がほこほこしているな」
Dもつられて笑いながら頭をぽふぽふと触ってきた。
「黒いからね。あいつの髪は、栗色だったね」
挑発的に話を変えてみる。
Dの体が強張るのが分かった。
「昨日の人は、誰だったの?」
できるだけ声に感情を乗せずに切り出した。
「あやつは…私のギルバートに似た姿をした、リリー」
「…詳しく話してくれるね?」
さすがに瞳の奥に燃え上がる感情は隠せなかった。
誤字・脱字・意味の通じない表現等ありましたら、こっそりとお知らせくれたらとても嬉しいです。




