第02話
*新谷 黒羽*
彗「ん? おお、黒羽。おはよ」
黒「おはようございます、先輩。今から学校ですか?」
彗「ああ。まぁな。黒羽もだろ?」
黒「そうですが。私は授業ではなく、図書館に用があるので、早く出ただけです」
彗「そっか」
黒「……疲れてます?」
彗「まあ、朝から色々あってな」
黒「……いくら疲れてても、活動はいつも通りです」
彗「……そっかぁ」
*電車*
彗「流石にこの時間は混むな……。もっと早い電車にすればよかった」
黒「確かに。もっと遅い電車にすればよかったです」
彗「はぁ、授業が授業だし、辟易するなっと」
黒「? 私に覆いかぶさる様にしてどうしたんですか? 痴漢? 私、遠崎さんほどスタイル良くないですよ?」
彗「痴漢じゃなくて、純粋に壁になろうと思っただけだぞ。前に痴漢されたって言ってただろ」
黒「……今なら痴漢し放題ですね」
彗「駅員に突き出すぞ」
*プライバシー*
彗「はぁ、朝から疲れる事、ばっかりだ」
黒「それの主だった原因は私じゃなくて遠崎さんです」
彗「あながち否定は出来な……。まて。何故知ってる?」
黒「因みに」
彗「聞けよ」
黒「彼女が家に来たのは4時15分37秒です」
彗「……はい?」
*プライバシー2*
彗「えっと……黒羽?」
黒「なんですか?」
彗「何で知ってらっしゃるの?」
黒「壁が薄いので」
彗「あー、なるほど」
黒「壁が薄いから先輩が一週間くらい前に、ご学友から借りたメイド物の」
彗「あー! あー!! ああああああああああ!!!!!」
*壁*
黒「五月蝿いですよ。先輩」
彗「誰のせいだ!!」
黒「壁が薄いせいですね」
彗「九割九分九厘、黒羽のせいだからな!?」
黒「先輩がそんな物を見ているのが悪いんですよ。まあ、健全な男性ならしょうがないのかもしれませんが」
彗「本当に何で知ってるんだよ!?」
黒「ですから壁が」
彗「パッケージを含めて誰にも見られないように最善の注意を払った挙句、絶対に音ばれしないようにヘッドホンまで使ったんですけど!?」
*メイド*
彗「くそ……。もう二度と見ねぇ」
黒「時に先輩。そんなにメイドが好きなんですか?」
彗「頼むから俺の傷をこれ以上抉らないでくれ」
黒「では、私がメイド服を着て先輩にご奉仕したら先輩はどうなってしまいますか?」
彗「どうもなりはしない」
黒「……」
彗「黒羽は黒い三角帽子にマント羽織ってた方が似合うぞ?」
黒「……突然変な事を言わないで下さい」
彗「ん? ああ、すまん」
*密集*
○○駅~、○○駅~。お降りのお客様は
彗「後一駅か」
黒「暑い……」
彗「この時間帯はしょうがないだろ」
黒「先輩……」ギュッ
彗「どうかしたのか?」
黒「えっと……。あった。相変わらず午前ティーですか」
彗「ほっとけ」
黒「頂きます、先輩」
彗「車内は飲食禁止です」
*水分*
彗「やっと着いた。まだ歩くけど」
黒「暑かったです」
彗「はぁ、俺の午前ティー、返してくれ」
黒「どうぞ」
彗「ああって、半分どころか三分の二も入ってねぇ!?」
黒「ごちそうさまでした」
彗「あの短時間でこれだけ飲んだのか!? 俺の水分、どうしてくれる!?」
黒「将来的に私の」
彗「言わせるかよ!! そして、今すぐ喉の渇きを潤したいんだが!?」
*類友*
彗「はぁ、ったく。何で俺の周りには黒羽みたいなのが集まるんだ」
黒「つまり、先輩の周りには常識人が集まってるって事ですか?」
彗「少なくとも家賃払えなくて部屋追い出されて、迷わず幼馴染の家に大量の私物と共に上がり込む奴や、ストーキング一歩手前の、異文化研とは名ばかりのオカルト研の部長レベルの常識人が揃ってるな」
黒「前者はともかく、後者は一般人じゃないですか」
彗「俺と黒羽の一般人の定義のズレから直す必要がありそうだな」
黒「まあ、それでも。自分の周りには常識人とはかけ離れた人達が集まってると思うなら、貴方にこんな言葉を送りましょう。『類は友を呼ぶ』」
彗「言われると思ったよ、この女郎!!」
*学校*
彗「到着っと」
黒「相変わらず可も無く不可も無い外見ですね」
彗「大学ってそんなもんだろ?」
黒「校門から見て左右対称のような校舎」
彗「ああ」
黒「そして校門に囲まれるようにしてある噴水がある広場はそれなりの生徒の憩いの場で……」
彗「ああ……」
黒「その噴水の中で褌一丁で乾布摩擦をする、暑苦しい男が一人」
彗「あんなのと同類になりたくない」