第01話
*朝*
彗「朝か……」
鈴「……」
彗「……」
バフッ
鈴「痛っ!? 何!? 襲撃!? おのれ、エクソシスト!! 私は意地でも働かないぞ!!」
彗「訳分からねぇ事言ってねぇで、さっさと起きろ!!!」
*遠崎 鈴*
鈴「まだ鼻が痛いよ……」
彗「知るかよ。てか、何で此処に居るんだ。お前の部屋は隣だろう。ちゃんと鍵も掛けた筈だ」
鈴「うん。かかってたよ? でも、この部屋、居心地良くてさ。電気止められてないから、エアコン使えるし。物が少ない分、居住スペース広いしね。だから」
彗「だから?」
鈴「合鍵作っちゃいました♪」
彗「合鍵置いて、帰れ」
*遠崎 鈴2*
鈴「待って、待って! 他にもそれはそれは深ーい理由があるんだよ!」
彗「一応聞いてやる」
鈴「私、一応彗と同じ大学の生徒だけど引き籠りでしょう?」
彗「そうだな」
鈴「だからね」
彗「ああ」
鈴「仕送り無くなって、家賃払えなくて、部屋を昨日付で追い出されたの」
彗「実家に帰れ!!」
*遠崎 鈴3*
鈴「家に帰っても、追い返されるだけだよ! お願いだから此処に置いて!?」
彗「面倒見切れるか!! 何回も言っただろ!? このままだと大変な事になるって!!」
鈴「幼馴染だし、其処を何とか!!」
彗「断る!!」
鈴「何でもするから!!」
彗「炊事洗濯掃除は当たり前で、夜は(ピー)とか(ピー)とか(ピー)とかするってのか」
鈴「えっと……け、彗が望むなら///」
彗「言った俺が悪かったよ」
*荷物*
彗「そう言えば、鈴。部屋を追い出されたって言ったけど、荷物はどうしたんだ? あの、大量の漫画やらゲームやら」
鈴「部屋を追い出すという大家さんからの警告があった日から毎日パソコンにインストールしたり、画像データにして保存をするという行動を開始したの」
彗「先ず警告があった時点で大人しく学校に行くなりの行動をすべきだと思うのだが」
鈴「順調にデータ化していって、本体と外部メモリーがいっぱいになったら、データ化したゲームとか漫画を泣く泣く売ってお金にして、それでメモリーを購入。データ化したのを保存してを繰り返して」
彗「無視かよ」
鈴「でも、順調に進んでたからかな。彗の部屋、スペースあるし、幾らか持ってても大丈夫じゃないかなと思い始めたら、ゲームの本体を持っておきたいとか、この漫画は手元に置いておきたいとか思い始めるようになって」
彗「その時点で俺の世話になるつもりだったのがいただけねぇ」
鈴「追い出された部屋に置いておく訳にもいかず、それらのゲームやら本はこの部屋の前の廊下に積まれています」
彗「ちょうど今、鈴の部屋の隣に住んでいる田中さんが階段に行けずに困ってるから、とりあえずさっさとこの部屋に持ってこい」
*田中さん*
鈴「よいしょっと」
彗「すいません、田中さん。ご迷惑をおかけして」
田中「いやいや。それにしてもすごい量だね」
鈴「いやぁ、気がついたらこんな事になってまして」
彗「褒められてねぇから、照れるな」
田中「ハハハ。しかしあれだけ売れていれば、それなりの貯蓄になると思うけど、そんな事もないのかい?」
彗「……ん?」
*田中さん2*
鈴「え? ア、アハハ。色々ありますので……。それより! その話は駄目です!」
田中「そうだったのかい? てっきり知ってる物だと」
鈴「後で話そう、後で話そうと思ってるうちに気がついたら」
彗「良くは知らんが、とりあえずゆっくり話そうか。幸いまだ時間もある」
鈴「ちょっと待って!? 襟首持ってそんな猫みたいに運ばないでって違う! 助けて、田中さん!!」
田中「ああ。もう行かないと電車が。それじゃあ、二人とも」
彗「はい。行ってらっしゃい、田中さん」
鈴「ええ!? ちょっと田中さん!! カムバック!! カーム、バーック!!!!」
*秘密*
彗「あ~」
鈴「うう」
彗「一日中、部屋に閉じこもって漫画やらゲームやらネットやらをやっていた事は知ってるが……」
鈴「昔からちょくちょく書いてたけど、一年前くらいからはこればっかりかな。24時間中12時間以上はこれだったと言っても過言じゃないよ!」
彗「俺、お前のこれをやってる姿、見た事無いぞ」
鈴「それは、彗が家に来てご飯作ったりとかしてる時は、しないようにしてたから……。気味悪がられたりされたら嫌だし」
彗「……はぁ。これくらいで気味悪がったりしたら鈴の部屋になんて入れる訳ないだろうが。寧ろ秘密にされていた事の方が若干ショックだ」
鈴「同人誌書いてました!!」
彗「もう知ってる」
*同人誌*
彗「それにしても、随分と書いたんだな」
鈴「暇だったからね」
彗「田中さんがどうして知ってたのかは置いておいて、結構売れてたみたいな話をしていたが」
鈴「壁サーだからね! それに、商業誌の方でも、何度か書いた事あるよ!」
彗「すげぇのは分かったが……。ならなんで貯蓄が無い」
鈴「……」
彗「……」
鈴「お、女の子は色々と入り用なんだよ!!」
彗「化粧しないし、殆ど着たきりのお前がほざくな!!」
*ペンネーム*
彗「所で、須野和美って誰?」
鈴「私だよ? ペンネームってやつ」
彗「あー、なるほど。……須野和美、すのかずみ……。もうちょっとで何か出てきそうなんだが」
鈴「!? ストップ!! ストップだよ彗!!」
彗「なんだよ、急に」
鈴「えっと、お腹! お腹すいたから、朝ご飯が食べたいかな!!」
彗「? まあ、いいけど。っと、時間もやばいし今日は手抜きだな。トーストと簡単なサラダと目玉焼きでいいか。手伝えよ」
鈴「うん!」
*朝食*
彗「何でターンオーバーなんだ?半熟なのはいいけど」
鈴「目玉焼きと言ったら、ターンオーバーでしょ。トーストに乗せやすいし。それより、サラダにトマト入れないでよ」
彗「送られて来たからトマトが大量にあるんだ。消費手伝ってくれ」
鈴「じゃあターンオーバーでも文句言わないでよ。ずっとこればっかり作ってたから、ひっくり返すのと火の通り加減は絶妙でしょ?」
彗「……まあ、確かにな」
鈴「えへへ」
彗「でもトーストが焦げてるのはなぁ」
鈴「ごめんなさい」
*結局*
彗「んじゃ、学校行くわ。洗い物は頼む。昼は適当に、ある物食ってくれ。後、鞄取ってくれ」
鈴「はい」
彗「サンキュ。じゃあ、行くな」
鈴「彗」
彗「何?」
鈴「えっと。結局私は此処に居ていいの?」
彗「炊事洗濯と掃除と、色々手伝えよ」
鈴「(ピー)とか(ピー)とか(ピー)は?」
彗「やっぱり帰れ」