僕は『片思い券』が欲しい!!
今日も普段と変わらない日常を過ごしていた。
朝起きて、『片思い券』が落ちていないか自室の床を這いずり回り。
通学路では、いつ『片思い券』が生まれてきても大丈夫なように、両手を凝視し続けた。
授業中も、万が一生まれた『片思い券』を他の人に見られたら恥ずかしいだろうから、片手は机の中に隠して過ごした。
そして、放課後。
いつも通り、僕の手元に『片思い券』はない。
僕たちは思春期の間、みんな同じ超能力を手に入れる。
『片思い券』の生成能力。
自分が誰かに片思いされると、手元に『片思い券』が現れる、なんとも夢のある能力だと思う。
まあ、僕は実感したことはないが。
「なんでだよぉぉ!」
「必死すぎウケる」
放課後の教室に僕の嘆きが響く。
教室にいるのは僕たち二人だけだ。
僕と机を挟んで正面に座る女子は、僕に視線を向けることもなくスマホを操作している。
「僕は……一枚だけでもいいから『片思い券』が欲しい!」
「へー」
「物理的に愛された証明が欲しい!」
「ふーん」
「でも、この能力は高校を卒業するくらいで失ってしまう……」
「そーね」
「もう僕たちには……時間がない!」
「……はぁ、それで?」
ちらりと、彼女の瞳に僕が映る。
その視線を迎え撃つため、僕は小さく息を吸い込んだ。
「どうにかして僕に片思いをしてください!!」
「必死過ぎてキモい」
眉間に皺を寄せた彼女は、目を据わらせたままスマホに意識を戻した。
『片思い券』をいっぱい持っている彼女には僕の気持ちがわからないのか。
僕だって『片思い券』を手にして、大切にしたい。
両手を机に突き、身を乗り出して彼女に懇願する。
「できる限りの協力はするから! お願い!!」
「…………はぁぁ、同じように育ったはずなのに、なんでこいつは」
片手で頭を抑え始めた彼女。
僕と幼馴染であることのなにが不満なのか。
彼女はもっと表立って僕を大切にするべきだと思う。
ため息をつく彼女と、改めて椅子に座って向かい合い、僕は頭を下げた。
「お願いします!」
「あのさ……無茶苦茶なこと言ってる自覚あんの?」
「お願いします!」
「そもそも、あんたみたいに何枚も『片思い券』を投げつけれる人のほうが少ないわけ」
「……お願いします!!」
「思春期を迎える前から両思いの相手に、『片思い券』を何十枚と送りつけてくる馬鹿と違って、ウチの愛情は奥ゆかしいの」
「…………そこは彼氏のために、多少下品になってもいいのでは?」
「あんたから貰った『片思い券』、目の前で破り捨てられたいの?」
鞄から数枚の『片思い券』を取り出した彼女に慌ててすがりつく。
「やだ! 僕からの愛情の証明、三十五枚の『片思い券』を大事にしてよ!」
「はぁ!? 自分が送った枚数くらい覚えとけ! 三十七枚だし!!」
今日も普段と変わらず、僕たちは仲良し幼馴染カップルだ。




