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僕は『片思い券』が欲しい!!

作者: 醍醐乙兎
掲載日:2026/09/24

 今日も普段と変わらない日常を過ごしていた。


 朝起きて、『片思い券』が落ちていないか自室の床を這いずり回り。

 通学路では、いつ『片思い券』が生まれてきても大丈夫なように、両手を凝視し続けた。

 授業中も、万が一生まれた『片思い券』を他の人に見られたら恥ずかしいだろうから、片手は机の中に隠して過ごした。


 そして、放課後。

 いつも通り、僕の手元に『片思い券』はない。



 僕たちは思春期の間、みんな同じ超能力を手に入れる。

『片思い券』の生成能力。

 自分が誰かに片思いされると、手元に『片思い券』が現れる、なんとも夢のある能力だと思う。


 まあ、僕は実感したことはないが。



「なんでだよぉぉ!」

「必死すぎウケる」


 放課後の教室に僕の嘆きが響く。

 教室にいるのは僕たち二人だけだ。

 僕と机を挟んで正面に座る女子は、僕に視線を向けることもなくスマホを操作している。


「僕は……一枚だけでもいいから『片思い券』が欲しい!」

「へー」

「物理的に愛された証明が欲しい!」

「ふーん」

「でも、この能力は高校を卒業するくらいで失ってしまう……」

「そーね」

「もう僕たちには……時間がない!」

「……はぁ、それで?」


 ちらりと、彼女の瞳に僕が映る。

 その視線を迎え撃つため、僕は小さく息を吸い込んだ。


「どうにかして僕に片思いをしてください!!」

「必死過ぎてキモい」


 眉間に皺を寄せた彼女は、目を据わらせたままスマホに意識を戻した。


『片思い券』をいっぱい持っている彼女には僕の気持ちがわからないのか。

 僕だって『片思い券』を手にして、大切にしたい。

 両手を机に突き、身を乗り出して彼女に懇願する。


「できる限りの協力はするから! お願い!!」

「…………はぁぁ、同じように育ったはずなのに、なんでこいつは」


 片手で頭を抑え始めた彼女。

 僕と幼馴染であることのなにが不満なのか。

 彼女はもっと表立って僕を大切にするべきだと思う。



 ため息をつく彼女と、改めて椅子に座って向かい合い、僕は頭を下げた。


「お願いします!」

「あのさ……無茶苦茶なこと言ってる自覚あんの?」

「お願いします!」

「そもそも、あんたみたいに何枚も『片思い券』を投げつけれる人のほうが少ないわけ」

「……お願いします!!」


「思春期を迎える前から両思いの相手に、『片思い券』を何十枚と送りつけてくる馬鹿と違って、ウチの愛情は奥ゆかしいの」


「…………そこは彼氏のために、多少下品になってもいいのでは?」

「あんたから貰った『片思い券』、目の前で破り捨てられたいの?」


 鞄から数枚の『片思い券』を取り出した彼女に慌ててすがりつく。


「やだ! 僕からの愛情の証明、三十五枚の『片思い券』を大事にしてよ!」

「はぁ!? 自分が送った枚数くらい覚えとけ! 三十七枚だし!!」


 今日も普段と変わらず、僕たちは仲良し幼馴染カップルだ。




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