タイトル未定2026/09/21 19:26
「殿!謀反です!明智が謀反を起こしました!本能寺が、燃えています!」
時は1582年、本能寺の変。
明智光秀が謀反を起こし、信長のいる本能寺に火をつけた。
爛爛と燃えあがり、魔王と寺を囲んで逃がさない。
みるみる寺は炭となり、内側にまでその炎は輝きを見せる。
魔王の所業の報いと言わんばかりの無慈悲なる残酷な業火。
かの平清盛も最後は熱で死んだという。
神に手を出したのが間違いだったのか。
魔王はこの炎を見て、
この世に生を授かり今まで見てきた全てのものの中でこんなに美しいものを見たことがないと思った。
自分の命を刈り取る死神が棲む、そんな炎を見て信長公は扇子を取り出し、唯一人、舞い散る火の粉を身に纏い、流れる焔と共に舞った。
何を思うか信長公、金平糖を口に放り、ぼんやり炎を見て惚けておられる。
私と弥助は殿に粛々と逃げるよう、強く伝えた。
敬語など忘れていた。
あぁ、ほら死がもう目の前に来ておられる。
「お主ら、命令じゃ!ここから逃げろ」
「なぜ!殿は!?」
「これが儂の生きた証じゃ。これが儂の命の結果なのじゃ。これが、運命。儂はこの運命に従う」
「なぜ!?いつもの殿なら運命だって変えると…!?」
「弥助!お前は好きに生きろ!敬虔な信徒になるでもよし…
大江!お前は————————————」
信長の瞳に赤く紫に燃え盛る焔が陽炎を焚いて七色のように映り出される。
その光は生死を度外視させて人生という名の心を釘付けにした。
信長の心に眼前に沸る炎が煙も立たずに現れると、この先の未来だとか、最悪だった過去だとか全てを忘れ、ただ今だけを輝かせる。
真っ白なブランクの中に一人ぽつんと佇んで、これから孤独に、徐々に徐々に衰弱して死んでいくような、それを美しいと思えるようなそんな輝きだった。
その美しさに信長は、
「是非もなし」




