表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

いざ人生初デートへ

 染めたのだろう銀に近い髪、セミロングヘア、かなりの巨乳、愛嬌あふれる顔立ち。


「なんでもねぇよ。桑原(くわはら)菜奈(なな)

「なんで、フルネームで呼ぶのさ!」

「なんだって良いだろ。つか、オマエに知られると面倒臭い。分かったらあっち行け」


 桑原は情報屋、基、なんでも喋ってしまうことに定評がある。口が軽すぎて、女子たちからも敬遠されるほどだ。


「えーっ、そんな扱いひどくない!?」

「自分の胸に手ぇ当てて考えてみろ。自分がまともか否か」


 桑原はわざわざ自分の胸に手を当て始めた。こういう天然なところも、女子から嫌われる理由なのだろうな、と考えてしまった。


「んーっ、分かんない!」

 極光はやや苛立つ。「分かんないなら、なおさらあっち行っていろ。こっちは大切な会話しているんだ」

「でもさー、なんか聴こえたよ。イヨウ・ファミリーがどうとかなんとか」


 極光は顔を手で覆った。なんでこの女は、妙に耳が良いのか。もはや打算でやっているのではないか。


「ほらーっ! イヨウ・ファミリーと喧嘩するつもりでしょ!?」

 佐野が怒鳴る。「声がでけぇんだよ!!」

「そ、そんな大声出さなくて良いじゃない」桑原はたじろぐ。「あたしはただ、佐藤くんとコミュニケーションを取りたいだけなのに」


 たいていの場合、佐野という〝イケメン〟が避雷針になってくれるので、極光に女がよってくることは少ない。それなのに、彼女は佐野の名前すら出さなかった。この女、いったいなにを考えているのだろう?


「コミュニケーションが取りたい?」

「うん! 佐藤くんって良く見ると格好良いし!!」

「あぁ、そう……」

「なにさ、その無反応! 女子から格好良いって言われて嬉しくないの? しかも、この巨乳が、だよ?」


 男女比率が1:10になっただけで、別に男子の性欲が消滅したわけではない。ただ、不同意で半ば強引に強姦されることがあまりにも多いので、自ずと数少ない男子たちも女子を敬遠しているだけだったりする。


 そこまで考え、極光は言う。


「……イヨウ・ファミリーの件を他に言わないのなら、なにかひとつやってやるよ」


 変なリスクは負いたくないし、揉め事の火種がデート程度で片付くのなら安いものだ。極光はそういう意味を含んで発言した。


「ならさ~、あしたの土曜日デートしようよ! 大丈夫、あたしはいきなりホテルへ連れ込もうとしないからさ~」


 愛らしい笑みを交えてそう言われてしまうと、極光の心も揺らぐというものだ。


「良いよ」


 ぶっきらぼうに返事し、極光はあしたの予定を埋める。


 佐野が心配気味に言ってくる。「良いのかよ?」

「なにが?」

「この女の口の軽さは、正直計り知れないぞ。女子は派閥を作りたがるものだけど、コイツはどこにも入ってない変人。なぜなら、精神年齢が5歳児くらいだからだよ」

「聴こえてますけど~?」

「聴こえるように喋ってるんだよ。オマエに知られたら、次の日には学年全員が知ってるだろうが」


 なにやら険悪な雰囲気。極光が仲裁に入るしかなさそうだ。


「佐野。オマエの言いてぇことも分かるけど、桑原は約束してくれた。今おれらが話していたことを他に出さないと。それに、どの派閥にもいないなら漏らしようがないだろ?」

「まぁ、一理あるわな」

「というわけで、約束はしっかり守ろう。お互いに」

「なんかひどいこと言われた気がするけど、分かったよ!!」


 こうして、人生初デートが決まったのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ