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暴力団特攻隊長、佐藤美里

 極光たちは、早退したため各々家路についていた。


 佐野が不安そうに聞いてくる。「なぁ、極光。オマエの手段って……」

「ひとつしかないだろ。数少ねぇ友だちがやられたんだ。確かにあの姉は大嫌いだけど、すがれるならすがってやるさ」

 夏風が訪ねてくる。「姉? 佐藤、貴方姉なんていたかしら?」

「いるよ。ランクはAAA。異能力者の中でも最上位に君臨する女さ」


 ランク:トリプルエー。理論上、米軍の総軍と闘っても勝てるほどの実力者だ。そんな化け物を姉に持つ極光だが、彼はその佐藤光里(さとうみさと)を毛嫌いしている。佐野と宮崎くらいしか、その姉の存在を知らないほどだ。


 呆然と夏風は言う。「ランクAAA……」

「AAAといえば、ことごとく人格破綻者って言われている。それはおれの姉も例外じゃない。人格破綻が破綻しているが故、国に監視されるほどだしな。でも……」

「でも?」

「あの馬鹿姉は、おれを溺愛している。久々に家へ帰ってきたと思ったら、強姦未遂されたほどだからな。ランクAAAはどこまで行ってもクレイジーだけど、突破口はそれしか見つからない」

 今度は佐野が言う。「だけどさ、オマエの友だちのカエシを、あの姉ちゃんが付き合ってくれるかな? オマエ以外の男はみんなボコられてるじゃねぇか」

「だから、あの姉に能力を開発してもらう」

「「は?」」


 唖然と、ふたりは声を揃える。極光はどこまで本気なのだ?


「ともかく、使えるものはすべて使って、宮崎の鬱憤を晴らしてやろう」


 *


 そんなわけで、極光は自宅へ戻ってきた。散らかった家では、珍しく下着姿の姉がテレビを眺めていた。


「おぉ、ヒカルンじゃねぇか」

「姉ちゃん、頼みがある」

「なんだよ、いきなり。数ヶ月ぶりに会ったっていうのに」

「おれに、能力を教えてほしい」

「はぁ?」光里は訝るような表情になった。「いやいや、いざとなりゃあたしがヒカルンを守るから、能力なんていらないよ。知ってるだろ? あたしがヤクザの特攻隊長なの」

「それでも、今必要なんだ」

「一体なにがあったんだよ? 友だちがやられたのか?」

「あぁ」

「なら、あたしがカエシしてやるよ。ヒカルンの友だちも、あたしが守ってやらねぇとな」

「いや、姉ちゃん」極光は真剣な眼差しで言う。「これは、おれがやらなきゃ意味がない。いつまで経っても、女に搾取される人生はゴメンだ」


 光里はテレビを消し、極光と向き合う。彼女の目はヤクザらしく、狂気に満ちていた。


「別に能力開発くらい朝飯前だけどよぉ、そいつぁ片道燃料だぞ。高位の能力者には低位には分からねぇ悩みがあるんだ」

「そんなことくらい分かっている。それでも、もう黙っていられない事態が起きているんだよ」


 光里は極光に近づき、肩をポンと叩く。


「まぁ、ヒカルンの思いは叶えてやるのが、姉のあたしの役目だしなぁ……。でもヒカルン、本当に片道切符だからな? 後悔しても知らねぇからな?」


 暴力団関係者らしく、刺青だらけの身体を露呈させる光里は、ニヤッと不気味に笑って最後の忠告をした。


「分かっている」


 それでもなお引かない極光の覚悟に、彼女も腹積もりを決めたようだ。


「分かったよ。良いか、ヒカルン。能力は大きく分けてふたつある。ひとつ目は時間がかかる代わりに、強力な……そうだな、ランクAAからAAA程度の力を得られるもの。もうひとつは取ってつけたようなもの。こっちはランクAが限界だろうな」


 ランクAとAAでは、天と地ほどの差がある。当然、AAとAAAにも。ランクAの佐野は学校を燃やせると豪語したが、AAは街そのものを燃やせる。AAAにもなれば、都市区画ごと燃やし尽くせる。同じ〝A〟がつく者でも、それだけの差があるのだ。


 では、極光はどう答えるか。


「多少時間がかかっても良い。おれを、ランクAAかランクAAAにしてくれ」


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